夕刊フジ(電子版)は7月12日、「安倍元首相が死去前日に語った『日本愛』 経済・安全保障・改憲、岡山選挙区の小野田氏応援演説で『国を守るのは私たち自身なんです』」の記事を配信した。

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 7月8日、安倍晋三元首相(享年67)は奈良市内で凶弾に倒れた。その前日、7日の夜は、岡山市内で小野田紀美・参議院議員(39)の応援演説を行っていた。

 演説が終了すると、安倍元首相はTwitterに、以下のような投稿を行った。

《自民党公認のみで戦い抜く小野田紀美候補。厳しい闘い、彼女の鋼の信念に会場は燃えました。/日本を守り抜く小野田紀美候補に力を!/宜しくお願いします》

 安倍元首相の熱意が伝わってくるが、だからこそ、どのような応援演説だったのか興味が湧く。夕刊フジの報道から引用させていただく。

《「今日は七夕、晴れましたよね。やっと織姫に会いに来ることができました。彦星は私1人かと思ったんですが、昼間には岸田(文雄)総理が応援に駆け付けました」》

《「思い切りが良くて、そして潔い。『度胸がありすぎる』という人がいるくらいです。でもみなさん、そういう政治家が、日本には必要じゃないですか」》

《「私はよく言うんですが、闘う政治家と闘わない政治家。『安倍さんの言っていることはよくわかるけど、今回は我慢したらどうか』というのが闘わない政治家でありますが、まさに小野田さんは正真正銘の闘う政治家であります」》

改憲問題

 更に安倍元首相は、安全保障の問題にも時間を割いた。夕刊フジによると、日米同盟の重要性を強調し、憲法9条の改正で自衛隊の違憲論争に終止符を打つべきだと呼びかけると、会場には《割れんばかりの拍手》が響いたという。

 今回の岡山選挙区は、全国ニュースの対象としてマスコミから注目されていた。担当記者が言う。

「小野田さんは1月、Twitterで自民党と公明党の選挙協力に否定的な見解を投稿しました。これが公明党と、その支持母体である創価学会の逆鱗に触れたのです。岡山選挙区だけは選挙協力が行われなかったほか、選挙戦の後半には野党候補へ投票するよう指示が出たことも明らかになりました」

 公明党の協力を得ずに、果たして自民党候補は選挙で勝てるのか──マスコミの関心はこの1点に尽きた。

 そもそもなぜ小野田議員は、自公の選挙協力に疑問を呈したのか、デイリー新潮は地元県議の“解説”を伝えている。

 6月21日に配信された記事「公明党の推薦はいらないという岡山『自民党参院議員』 地元の県議は『えらい迷惑な話だ』」からコメント部分を再掲しよう。

《「公明党が嫌いなんでしょう。公明党は中国寄りですし、憲法9条改正には反対で、自民党が憲法改正をしようとすると、手枷足枷をかけてきますからね」》

文字通りの圧勝

 夕刊フジが伝えた応援演説からも、自民党支持者には改憲論者が多いことが分かる。彼らが公明=学会の“ハト派路線”を苦々しく思っていたことは想像に難くない。小野田議員の“決断”に快哉を叫んだ支持者は少なくなかったようだ。

 自公の“票目当ての選挙協力”に異議を唱えた“岡山のジャンヌダルク”──こんなイメージがネット上に流布し、SNSでは小野田議員を応援する投稿が相次いだ。

 結果、小野田議員は39万2553票を獲得。次点の立候補者に18万票を超える大差を付け、得票率は54・7%に達した。

 地元紙の山陽新聞は7月11日、「参院選岡山選挙区 自民 強固な組織力 衆参全7議席維持 県内出口調査分析 小野田氏、全年代トップ 10代76・6%と高い支持」の記事を朝刊に掲載した。

「山陽新聞の出口調査によると、小野田さんは自民党支持者の8割以上をまとめただけでなく、維新や国民の支持層にも4割台と食い込んだそうです。特筆すべきは10代有権者の支持が高いことで、何と76・6%に達しました。『支持母体の創価学会が小野田議員に投票しないよう呼びかけた』と報じられたものの、それでも公明党の支持層は3割が彼女に投票しました」(同・記者)

ネットの配信力

 中国地方のブロック紙・中国新聞は翌12日、「2022参院選を終えて <上> 首相への期待 追い風 自公連携 隙間風も」の記事を朝刊に掲載した。

「中国新聞は、小野田さんが当初から憲法改正を一貫して主張していたことに注目しました。初当選の時から憲法改正を訴え、今回の選挙戦でも毎日新聞のアンケート調査に『憲法9条を改正し、自衛隊の存在を明記すべき』と回答しました。中国新聞は小野田さんが公明党への配慮を拒否し、“タカ派”的な主張を全面に出したことで、支持拡大につながった可能性に触れました」(同・記者)

 小野田議員の特徴として、ネット上での人気が挙げられる。Twitterの投稿が注目されることも珍しくない。

「小野田さんは拓殖大学を卒業し、ゲームやCDの制作会社を経て、2011年に東京都北区の区議会議員に初当選を果たしました。2016年の参院選で岡山選挙区に転じて国政へ進出しましたが、早くも翌17年にはTwitterの投稿が話題を集め、東京新聞が記事にしています」

《臭くて煙くてしんどいですが吸っちゃいけない決まりじゃないからなんとも言えない…》

 これが話題になったツイートだ。衆議院の両院議員総会に出席した際、控え室の後方に灰皿が用意され、複数の議員が喫煙していたという。

YouTubeでも人気

「要するに小野田さんは“煙害”を訴えたわけです。ツイートには賛同の声が相次ぎ、東京新聞は17年11月、『煙たい国会 自民女性議員 煙害を告白 控室に間仕切りなく灰皿』の記事で小野田さんの投稿を紹介しました」(同・記者)

 先に触れたが、今回の参院選で小野田議員が公明党=創価学会の選挙協力を得なかったのも、Twitterの投稿がきっかけだった。小野田議員は「ネット上での発信力が高い」と言えるだろう。

「小野田さんのネット人気を裏付ける現象として、国会での質問動画が多数、YouTubeにアップされ、かなりの再生回数を記録していることが挙げられます。しかも興味深いことに、小野田さんが自身の政治活動を紹介するためにアップした動画より、第三者のチャンネルが配信した動画のほうが、桁違いの再生回数を記録しているのです」(同・記者)

 小野田議員の政治的主張のうち、どのようなものが注目を集めているのか、具体的に見てみよう。

 だが、それらを紹介する前に、YouTubeにアップされている第三者の動画は、かなり編集が施されていることに注意が必要だ。

 まさに“バズる”──ネット上で拡散しやすい──ことを目的に、動画の再生時間が極端に短いものや、質疑の順番を入れ替えているものが少なくない。

再生回数512万回

 そこでこの記事では、あくまでも再生回数の多い動画を紹介するが、質疑の引用は国立国会図書館の「国会会議録検索システム」から行う。動画で紹介されるやり取りとは異なる場合もあることを附記しておく。

 また「国会会議録検索システム」ではアルファベットは大文字、数字は漢数字が使われているが、これらはいずれもデイリー新潮の表記に合わせた。

 それでは本題に戻るが、YouTubeに「小野田紀美」の名前を入れて検索してみると、「小野田紀美が国会でNHKをフルボッコにしたシーンがこちら#Shorts」という動画の再生回数は518万回を超えていることが分かる(以下、再生回数は8月8日現在)。

 取り上げられているのは2020年3月5日、参議院予算委員会での質問だ。当時の社会情勢を振り返れば、新型コロナが“日本上陸”を果たし、文字通りのパニック状態に陥っていた。

 1月に初めての感染者が日本で確認され、2月には豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」が横浜港で長期検疫体制に入った。また同じ2月には「3月2日から春休みまで、小中高校の一斉時臨時休校」も要請された。

 小野田議員もコロナ問題に関して質問を行ったのだが、ネット上で関心を集めたのは以下の部分だ。

NHK批判

《私、昨日、本当に憤っているのが、日本国内感染者が1000人を超えたという報道があるんです。これ、事実と違いまして、クルーズ船の感染者を含むというような報道の仕方を日本のマスコミがしているんです、NHKを筆頭にですよ》

《それも、でもWHOですらクルーズ船の感染者と日本国内の感染者の数値は分けてカウントしています。これが当たり前なんです。中国もアメリカも日本に対してそういうカウントの仕方をしてくれているのに、なぜ日本のマスコミだけ事実と違うような報道をして国民の不安をあおるようなことをするのかと、私、これ憤っております》

 小野田議員は総務省に《事実と違う報道に対して指導をきちんとしていただけませんか》と質問する。

 総務省の担当者は《正確な報道が放送されるということは、御指摘のとおり重要なこと》としながらも、表現の自由を確保する観点から、《自主自律を基本的な枠組みとする規律を設けて》いると回答した。要するに政府がマスコミを指導するわけにはいかないということだろう。

受信料徴収への憤り

 小野田議員は総務省の答弁に理解を示しながらも、再度、自説を述べる。ちなみに上記の動画では大半がカットされている。

《NHKは、この1000人を含んでいるというものを何と海外に英語でも出している。この事実と違うことをしっかりと海外に広められてしまうと、日本国内の不安をあおるだけでなく日本への風評被害にもなってしまうので、やはりここはある程度、デマを流した人に罰則がある台湾みたいなのもありますし、いろいろちょっと考えていただきたいなと要望をいたします》

 小野田議員はNHKに批判的な質問が多い。これが逐一、YouTubeに動画がアップされ、いずれも視聴回数が伸びるという現象が確認できる。

「【国会】痛烈!NHK批判『日本の印象を悪くするようなことばかりしている』 小野田紀美議員」の動画は、再生回数が116万回を超えている。これは2021年12月17日の参議院予算委員会での発言だ。

 まず小野田議員は《NHKが受信料の徴収に関して、ちょっと私いろいろ憤りがあるんです》と切り出す。

《今若者を中心にテレビを見なくなっています。私も20年テレビ持っていません。今、10代、20代なんて半数以下です、テレビを持っているのは。そんな状態の中で、これから受信料をキープできないんじゃないかと、だったらネットから取っちゃえばいいじゃんみたいな風潮がちょっとあるというように耳に聞こえてきておりまして、NHKがネットから受信料を取ろうとするって、これ私はけしからぬと思いますけど、総務省、どうでしょうか》

NHKのスクランブル化

 金子恭之総務大臣(61)は、《御指摘のようなテレビを設置していない方を新たに受信料の対象とすることは現時点で考えておりません》と否定する。

 小野田議員は《現時点ではというところがすごい引っかかった》と指摘しながら、質問を続ける。

《今でも皆さんの払った受信料で、例えば中国人向けの50チャンネルネット無料放送とかというのをNHKはやっているんですよ、700コンテンツみたいなやつとか。それもやっぱり日本人の方から、何で俺たちの受信料で払っていない人に無料で見られるんだというようなクレームが来たりしている》

《やっぱり公平性ということを考えると、同時放送、ネットと同時放送するときに今はどうしているかというと、本契約をしていない人がネットでNHKを見ると邪魔が入るんですよ。要は契約している登録をちゃんと入力しないと見れないというか、スクランブル化ができています。こういうスクランブル化こそ私は目指していく、すべきだと思うので、安易な、取れるところから取ろうというような拡大はもう絶対阻止していただきたいというふうに強くお願いを申し上げます》

NHKと中国

 更に小野田議員はNHKの国際放送における報道内容にも異議を唱える。

《NHKに関しては、不法行為を行っている人をかばって国が悪いかのような番組を作ったりですとか、どうも日本の印象を悪くするようなことばっかりしている印象が私の中にはあるので、是非これちゃんとチェックしていただきたいし、テレビを見ている方たちもテレビが言っているから本当だと思い込まない方がいいですよ》

《自分でちゃんといただいた情報はネットとかでも調べて、本当かなという疑いの眼を持ってテレビを見ていくということもこれからの情報リテラシーのところで大事だと思いますので、この放送に係る問題に関しても引き続きやっていきたいと思います》

 ネット上では特に、「NHKに関しては、不法行為を行っている人をかばって国が悪いかのような番組を作ったり」の部分が拡散しているようだ。

 NHKの問題でも中国に対する言及があったが、小野田議員は国費留学の問題に強い関心を持ち、国会で何度も質問している。

国費留学生の問題

 今年6月13日に参議院決算委員会で行われた質疑を、複数のチャンネルが配信している。その中でも「【国会】中国人留学生は免税!? #国会 #shorts #short #小野田紀美」の動画は再生回数が246万回を超えている。

《元々この国費留学制度というのは、我が国と諸外国の友好と親善を促進するために、東アジア、東南アジア及び中東諸国からの留学生を受け入れて、それを、それらの諸国の社会的及び経済的発展に寄与する人材育成に積極的に協力云々という目標でやっているのに、一番受入れの多い中国や韓国と全然親日関係築けていないじゃないか、効果は出ているのかとか、経済の、経済支援なんですよ、これ経済協力費に入っているんです、決算の、予算の中で。なのに、うちより何かGDPが高い国のところをどんどん受け入れていたりとか》

 中国も韓国も、GDPは高い。おまけに両国は親日的ではない──なのに留学生を国費で受け入れていいのか、というのが小野田議員の問題意識だ。

 そして日本人の学生に使われる予算より、国費留学生に使われる予算のほうが金額は多いと指摘する。

「日本の宝は日本の学生」

《当時、平成29年度の決算は、日本人への奨学金の給付型、これの予算が70億で、国費留学関係の予算が180億円だったんですよ。何で日本人への給付型よりも国費留学の方が多いのというところを問い合わせたんですけど、これ今は変わっていますでしょうか》

 政府側は、留学生の予算はそれほど変わっていないが、《高等教育の修学支援新制度》の実施により、令和4(2022)年度は2125億円に予算が増額されたことを回答する。

 小野田議員は《大変うれしく思います。やっぱり、日本で頑張る、将来この国に還元して頑張って働こうという日本の子供たちが、自分たちの方が恵まれていない、愛を向けられていないと思わないような予算をしっかり組んでいただきたい》と述べる。

 そして岸田文雄首相(65)に《総理、日本の宝は日本の学生さんですよね、日本の子供たちが日本の宝物ですよね》と質問。岸田首相も《若者、これは我が国にとって宝であると認識をいたします》と認めた──この部分はネット上で非常に拡散している。

レジ袋問題と中国

 更に小野田議員は《中国人留学生と日本人留学生の間にひどい乖離》があると指摘する。

《中国人留学生は日本で学費とか稼ぐためにアルバイトしても所得税が掛かりません。日本人学生は掛かります。そして、上限なく掛からないのは中国だけなんですけれども、ほかの国もその上限があって所得税が掛からない国があります。これ、租税条約上なんですけど、これについてやっぱり私、見直すべきだと思いますが、いかがでしょうか》

 この問題に関しては、産経新聞(電子版)が6月25日、「<独自>中国人留学生のバイト給与の免税撤廃へ」の記事を配信した。

 産経新聞は記事で《13日の参院決算委員会では、自民党が「アンバランスが生じている」と指摘した》とあり、これは小野田議員のことを指している。

「自民 小野田紀美 プラスチックは本当に悪? 『割ばしの時みたいに…』」の動画は再生回数が405万回に達している。

 これは今年4月6日、参議院決算委員会で行われた質疑を元にした動画だ。小野田議員はレジ袋の有料化が本当に効果を上げているのか疑問を呈したのだが、動画は中国に批判的なところだけを切り取っている。

東京五輪と韓国

《私が心配しているのが、国内で規制した結果輸入プラは増えたみたいなことはないのかなと心配していまして、例えば割り箸が悪者になったときも、あれ、割り箸って、間伐材を使って、山を守っていくために出た間伐材をうまくリサイクルしてという非常にエコな試みだったんですけど、割り箸は悪だと言われ、一回その割り箸の中小企業業者も使われなくなりました、それでやっぱり必要だから中国からごっそり割り箸が輸入されるようになりましたという、何だこれはという状況をもたらしてしまった》

 韓国に対する質問を行った動画も再生回数が多い。「【国会】韓国はけしからん#国会 #shorts #short #小野田紀美#韓国」の再生回数は129万回を超えている。

 これは今年5月13日、参議院の東日本大震災復興特別委員会で行われた質疑を紹介したものだ。さっそく議事録を見てみよう。

《例えば、ありましたね、東京オリンピックでも。うちのおいしい農林水産品に文句付けてきて、何かこれ放射能に汚染されているから、うちの国は自分のところで食事を用意しますとかというけしからぬことをやってきた国があったんですけれども、そういうときに対するその地上戦、空中戦での戦い方、どういう対応をされたのか、教えてください》

韓国と“反日キャンペーン”

 韓国のことを指しているのは明白だが、政府側は《農林水産省、外務省あるいはオリパラ室、こういったところと協力して取組を進めました》と答弁する。

《外務省だと外交ルートを通じて抗議しましたとか、経産省だったら正しい情報を出しましたとかって言うんですけれども、もうすごい地上戦なんですよね。メディアが報道するかといったら、しない人たちだっているので、正しく報道してくれるとも限らないので、やはり今自分たちで空中戦を戦っていく、打ち返していくという仕組みが必要だと思うんですよ》

《韓国だと、政府がVANKという反日キャンペーンとかよくやるところに資金を提供して、イメージ戦略とかをやらせている。それをしろとは言いませんよ、それは。でも、そういった、何かあったときに見付けてきて対応してということのリーダーシップを取って実際に動くのは結構ばらばらで、なかなかお互い、じゃ、農林水産省がどうやっていたのかという情報連携が、私、レク受けたときに、じゃ、そのとき農林水産省さん何やっていたんですかというのを経産省さんに聞いても、ええとという感じになったり、やっぱり情報連携できているのかなというのが非常に不安だったんです》

集まる期待の声

 Twitterに「小野田紀美 期待」と入力して検索してみると、「期待しています」のツイートがずらりと表示される。少なくともネット上では相当な支持を獲得しているのは間違いないようだ。

 なお、デイリー新潮は小野田議員に「参院選の総括」などの質問内容を説明し、インタビュー取材を申し込んだ。しかしながら事務所側から「基本的には取材を受けておりません」と断られた。

デイリー新潮編集部