第2次岸田内閣の顔ぶれが出揃った。加藤勝信厚労相、河野太郎デジタル相など、再入閣組が5人、そして、待望の初入閣組が9人誕生した。初入閣のうち、少子化担当相に抜擢された小倉将信氏は41歳で最年少と話題になった一方、78歳で最高齢初入閣となった人物がいる。野村哲郎農水大臣だ。

遅れてきた議員

 政治部デスクが言う。

「野村さんは、鹿児島県の農協中央会の理事を経て、2004年の参院選で、当時60歳という年齢で初当選を果たした、遅咲きの議員です。当選後は、これまでの職歴を活かして、農林水産政務官など、農林水産系の要職を歴任してきました。本人もゆくゆくは農水大臣を、と願っていたのですが、内閣の中で参院議員に割り振られているのは、わずか2枠。なかなかチャンスは巡ってきませんでした」

 そうした中、野村氏の入閣の気運が高まったのが、20年の菅内閣誕生のタイミングだった。野村氏はこの時すでに3選目で、さらには党の農林部会長も務めており、入閣する資格は十分にあった。参院からの枠候補の中にも野村氏の名前が入っていたのだが――。

「ここで運命の歯車が狂ったのです。蓋を開けてみると、参院枠で農水相に就任したのは、野上浩太郎氏だったのです」

 野上浩太郎氏は、富山県富山市生まれの55歳。三井不動産勤務を経て、1999年に富山県議会議員選挙に出馬し、当選。01年に参院選に自民党から出馬し、国政進出を果たした。05年には、第3次小泉内閣で財務政務官を務め、その後、国土交通副大臣や、内閣官房副長官を歴任する。つまり、農林水産系とはほとんど無縁の政治家人生を歩んできた人物である。

「野」の字

 自民党関係者が続ける。

「“なんで野上氏が……”、と、党内でも話題になりました。“どこで伝言ゲームに失敗したのか”とか、“野村も野上も野の字がついているから、「野の字」つながりで、菅さんが勘違いしたんじゃないか”と勘繰る人もいましたね。2枠しかない参院のポストで、しかも農水大臣。“ここは野村さんの間違いでしょ”と。何より野上さんも、農水は全然専門じゃないから、入閣を喜びつつ、戸惑っていましたよ」

 いずれにせよ、願い虚しく、この時、農水大臣の椅子に座ることは叶わなかった。野村氏、この時すでに75歳――。

訪れた転機

 先の政治部デスクが引き受ける。

「意気消沈した野村氏は、周囲に、次の選挙、つまり、今年の7月の参院選への出馬を取りやめ、引退を仄めかしていました。実際、それを見越して、次の候補を探す動きもあったのですが、そんな中、昨年11月、茂木敏充衆院議員が自民党幹事長に就任、そして平成研の会長に上り詰めた。無論野村氏はその平成研の所属です。所属する派閥が、幹事長閥となれば、当然、入閣のチャンスは高まるわけです」

 一転、現役続行を決めた野村氏、見事選挙を勝ち抜き、78歳にして4選を果たした。

「そして今回こそ間違いなく、野村氏が農水相の座をゲットできたというわけ。今回も参院からの推薦ですが、茂木さんの力添えがあったからこその入閣と言えるでしょう。もちろん、岸田さんの、幹事長の話を“聞く力”も、ここでも存分に発揮された形ですね」

 紆余曲折を経て、ついに掴んだ大臣の座。就任の喜びで燃え尽きなければいいが――。

デイリー新潮編集部