11月10日、永田町の自民党本部に、トヨタが誇る最高級車「センチュリー」が横付けされ、とある人物が後部座席から降り立った。その1週間ほど前に“最高級車”を巡り裁判所から注目の判決が出たばかり。にもかかわらず、この光景を有権者が見れば、もはやあきれるほかないだろう。

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 この日、山口県議として当選8回を誇る柳居俊学(しゅんがく)・県議会議長は、陳情のため自民党本部を訪れた。齢72の彼の肩を持つわけではないけれど、はるばる山口から上京し、慌ただしい一日だったことは事実である。

 安倍晋三元総理の銃撃死事件と「10増10減」による小選挙区の減区が重なり、混迷を極める山口県内の選挙事情。安倍家最大のライバルだった林芳正外相の“地元家老”を自任する柳居議長は、早朝から党本部で行われた山口県選出の国会議員会に参加後、霞が関の各省庁を回って大臣と面会し、夕方は市ヶ谷の防衛省にも足を運んだ。そんな多忙なスケジュールの味方となったのが、件の「センチュリー」だったわけだが、目下、柳居議長といえば公用車を巡る裁判で渦中の人となっていた。

 地元記者が解説する。

「今月2日、山口地裁は山口県が『センチュリー』を公用車として購入したのは違法で、2千万円あまりの購入費は県知事が全額賠償すべしとの判決を下しました。地元では購入に首をかしげる声が大勢です。この車を県知事が使うことはなく、ほとんどが県庁から120キロほど離れた周防大島に自宅がある柳居議長の送迎に使われていました」

スピーカー20個にマッサージ機能

 問題となった公用車は2年前に購入されたが、車内にはリアルなサウンドを体感できるスピーカーが20個取り付けられ、後部座席にはマッサージ機能まで付いているのだ。

 地元県議はこう憤る。

「判決前、県は“皇族が来県した際にセンチュリーが必要”と説明していましたが、裁判の最中に宮内庁に“出迎えをお願いする自治体に車種の指定はしていない”と言われてしまいました。議長が乗る車として不相応なのは明らか。県知事の公用車は隣県の広島に本社があるマツダのCX−8というSUVタイプの車で、370万円で購入されたものですから、議長の車がいかにムダ遣いか分かる。県知事はドンの柳居さんに頭が上がらないのです」

利用料は1日7万円

 判決前、公用車の購入は“自分が所望したのではない”“マッサージ機能は使っていない”などと強弁した柳居議長だが、上京に際してもセンチュリーに乗ったところをみると、“最高級車”への“異常な愛情”がうかがえる。

 先の記者に言わせれば、

「さすがに上京した折はタクシー会社のハイヤーを使っていましたが、これも山口県の出先機関である東京事務所が手配。つまりは税金が費やされたわけです。一般的にハイヤーはクラウンなどの車種が主流ですが、センチュリーなら1日当たりの利用料は7万円近くにもなります」

 先の判決を不服として控訴した山口県に問うと、

「現在も係争中であり回答を差し控えさせていただきます」

 地元では寺の住職を務めてもいる議長センセイ。門前の小僧習わぬ経を読む、ではないが、40年余りの政治家生活は、かくも人を増長させてしまうものなのか。

「週刊新潮」2022年11月24日号 掲載