《就任したばっかでもう疑惑発覚かぁ》、《追求されてる国会で居眠りしてるんだからさらにどうしようもない》──Twitterで有権者は、怒るというより呆れているようだ。もちろん、どちらのツイートも就任早々、2つの“不祥事”が発覚した松本剛明・総務相(63)に対するものだ。

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 まずはパーティー券問題から振り返っておこう。11月22日、日本共産党の機関紙・しんぶん赤旗(電子版)は「松本新総務相 規正法違反疑い 複数の政治資金パーティー 販売券数が収容人数超過」の記事を配信した。

 政治資金収支報告書を巡る問題で寺田稔・前総務相(64)が20日に辞表を提出。翌21日、後任に松本氏の起用が発表された。

 ところが、皇居で認証式を終えた翌日、赤旗がスクープ記事を1面に掲載。これに同日、共同通信も「新総務相に政治資金疑惑 パー券過大販売と報道」の記事を配信し、YAHOO!ニュースのトピックスに転載された。担当記者が言う。

「松本氏の政治資金パーティーが何度も開かれた兵庫県姫路市の2つのホテルの宴会場は、収容人数が立席で600人と400人だったそうです。ところが、後援会の政治資金収支報告書を見ると、約1000人分のパーティー券が複数回にわたって購入されていたというのです」

 政治資金規正法によると、会場の収容人数を超えて券を売った場合、「寄付」として収支報告書に記載しなければならないという。

「ところが、松本さんの収支報告書に『寄付』の記載はありません。そのため政治資金規正法に抵触する疑いが浮上しています。ここで重要なのは、総務省が政治資金規正法を所管する役所だということです。そのトップである総務相が法に抵触している可能性があるという点は、前任者である寺田さんの時と全く同じです」(同・記者)

居眠り疑惑

 松本氏に対する逆風は、これだけにとどまらない。間の悪いことに、赤旗や共同通信の報道が注目を集めた22日、民放で松本氏の“居眠り疑惑”が放送されたのだ。

「『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ放送制作・日本テレビ系列・平日・13:55)で、カメラが参院本会議の様子を映したのです。すると、松本さんが大臣席で寝ているような姿がクローズアップされました。そのためTwitterでは、松本さんに対する批判が相次いで投稿されました」(同・記者)

 国会で野党が松本氏を問いただすと、何と「あまり目が大きいほうではない。考えるときに目を細める癖がある」と耳を疑うような釈明を行ったのだ。

 TBS DIG NEWSは24日、「【速報】松本総務大臣、本会議での“居眠り”に『目が大きくない。目を細める癖がある』と釈明も一転、陳謝」との記事を配信。こちらもYAHOO!ニュースのトピックスに転載された。

 それにしても、「松本剛明」という名前は初耳、という有権者も少なくないだろう。一体、どんな政治家なのか。

ご先祖は伊藤博文

 読売新聞オンラインは22日、「松本剛明・新総務相は元銀行員、伊藤博文の子孫…『プライドの高さ』に懸念も」の記事を配信した。

「松本さんといえば、高祖父が初代首相の伊藤博文(1841〜1909)ということで有名です。父親の松本十郎氏(1918〜2011)も旧大蔵省の官僚から衆議院議員に転じ、防衛庁長官などを歴任しました。松本さんも東大法学部を卒業後、日本興業銀行に就職、父親の秘書を経て2000年の衆院選で兵庫11区から出馬し初当選しました。こうした経歴を踏まえ、読売は《党内には「プライドの高さ」への懸念もある》と報じています」(同・記者)

 松本氏は1996年の衆院選に無所属で立候補するも、自民党の現職に敗れてしまう。

 2000年の衆院選では、捲土重来を期して旧民主党の公認を得て出馬。自民党現職を破って初当選を果たした。

「父親が自民党の国会議員だったことからも分かりますが、労組を応援母体に持つような筋金入りの旧民主党系議員ではありませんでした。結局、『政権への道と民主党の進む道が重なることがなくなった』などの理由から、2015年10月に離党届を提出し、翌月に受理されました。そして17年9月に自民党に入党したのです」(同・記者)

家宅捜索

 エリートの二世議員となれば、「叩けば埃の出る政治家」と思う方も多いだろう。ところが松本氏の場合、既に何度も「埃は出た」と報道されている。にもかかわらず、それを有権者のほとんどが覚えていないのは、あまり彼に知名度がないからだ。

「2004年4月に発覚した『国会議員の年金未納問題』に関連し、初めて松本さんの不祥事が報道されました。当時の小泉内閣の閣僚に、相次いで年金未納が発覚。野党は攻勢を強めようとしましたが、早い段階で松本さんの年金未納も発覚してしまったのです。新聞社の取材に松本さんの事務所は、『転職に伴う手続き漏れで一時期、未納だった』と釈明しました」(同・記者)

 結局、当時は民主党の代表だった菅直人氏(76)も年金未納が発覚。責任を取って代表を辞任し、04年7月にお遍路に旅立ったことは大きく報道された。

「菅さんの陰に隠れた格好になり、松本さんに注目が集まることはありませんでした。そして翌05年10月、兵庫県警が松本さんの事務所を公職選挙法違反の容疑で家宅捜索を行います。新聞各紙は詳細を《違法文書の頒布》と報じました。公示前に私設秘書が、松本さんの自筆で『勝たせてください』などと書かれたビラを支援者に配布したという容疑でした」(同・記者)

事務所費問題

 2007年5月、当時、現役の農水相だった松岡利勝氏(1945〜2007)が自殺した事件をご記憶の方も多いだろう。「事務所費などの不透明な支出問題」が自殺の背景の一つとして解説されたが、実は松本氏も多額の事務所費を計上していたと報じられている。

「本来は家賃が0円である都内の議員会館に『主たる事務所』を置いているにもかかわらず、1000万円単位の事務所費を計上していた国会議員の存在が明らかになったのです。他の事務所で発生した家賃や光熱費、会合費などを付け替えるためでした。ちなみに自殺した松岡さんは、約3300万円の家賃を計上し、一部のメディアには『詳細は報告の必要がない』と取材拒否の姿勢を示しました」(同・記者)

 松本氏が計上した家賃は約1800万円。付け替えについては毎日新聞に「地元事務所の家賃、通信費など」と弁明している(註)。

 やはり野党が自民党を追及しようとしたが、松本氏も多額の家賃を計上していたため、気勢を削がれてしまったのは年金未納問題と一緒だ。

 おまけに当時の民主党代表だった小沢一郎氏(80)は、何と4億1500万円を家賃に計上していた。代表の“同罪”で松本氏が難を逃れたのも、年金未納問題と酷似している。

総務相抜擢の理由

「2009年9月、毎日新聞が民主党議員の政治資金を調査しました。すると複数の議員がキャバクラやニューハーフのショークラブにおける飲食代を『政治活動費』に計上していたことが判明したのです。この中の1人が松本さんで、クラブでの飲食代を2店2件、約34万円を計上していました」(同・記者)

 こうして時系列で整理してみると、年金未納、事務所費、政治活動費と、いわゆる「政治とカネ」のトピックスに分類される不祥事を連発しているのは看過できない。率直に言って“クリーン”な政治家とはほど遠い印象なのだ。ベテランの政治記者が言う。

「岸田さんは別に松本さんが総務相として適任者だから指名したわけではありません。官邸は『統一教会と関係があるか』だけを熱心にチェックしており、『旧民主党の議員なら関係は浅いだろう』と判断したことが大きいのです。彼が『政治とカネ』の問題でこれほど何度も報道されていたことさえ、官邸は把握していない可能性があります」

註:クローズアップ2007:事務所費の不透明処理 安倍政権にまた打撃、危機感薄い官邸(毎日新聞:2007年1月11日)

デイリー新潮編集部