韓国の大統領はブレていないと

 岸田文雄首相は、新型コロナの感染症法上の位置づけについて、5月8日をメドに「5類」に移行することを表明した。さらに、韓国政府との間で懸案として横たわってきた元徴用工の問題にもケリをつけようとしている。実は、その振る舞いの原点になっているのが、「安倍・菅両政権でもできなかったこと」を実現しようというものなのだという。

「岸田首相はいつもながら、いろんなことを同時にやろうとぶち上げています。今国会では防衛力強化のための増税をお願いしつつ、異次元と言わなくなりましたが、次元の異なる少子化対策を訴えている。これに加えて進めているのがコロナの5類移行と元徴用工問題の解決になります」

 と、政治部デスク。

「韓国の尹錫悦大統領は過去のリーダーと違って珍しくブレていないと岸田官邸は見ているようで、話ができると見たようですが、本当にそうなのかはなかなかわからないですね。韓国ではとりわけ対日政策について、政権末期になるとちゃぶ台返しをするのが常ですから」(同)

ライバル意識を燃やす岸田首相

 直近の支持率調査では「コロナ5類移行」について、好意的な受け止めがなされているようだが、

「コロナはやって当たり前で遅きに失した感があります。元徴用工に至っては誤解を承知で言えば、国民のリアルな生活にほぼ関係ない。“今やることなの?”と首を傾げる向きは少なくありません」(同)

 この2つに加えて、防衛力強化や次元の異なる少子化対策に手をつけた理由は、「喫緊の課題だから」ということなのだが、その動機について聞くと、

「“安倍・菅両政権でもできなかったことを達成する”のを岸田首相は意識しているようです。実際、そういった発言をしていると聞いています」(同)

 岸田政権は両政権とは主義主張・政治的スタンスを異にするので、やるべきことの優先順位が違うのは当然であるし、前任の方針を後任が覆すことはどの世界でもままあることだが、

「安倍・菅の両氏にライバル意識を燃やしていることは明らかですね。政策を打ち出す際に“将来に禍根を残さないため”と言い出したのも、2人が放置してきた懸案を片付けるという意気込みあってのことでしょう」(同)

レベルが低い

 もちろん、岸田首相がやろうとしていることについては懸念もつきまとう。

「韓国と仲良くするというのは久々のことで、それ自体は悪くないのですが、いわゆる保守派と呼ばれる面々から批判の声が上がり始めています。コロナも含めてやってみなければわからないというテーマではありますね。政治家として、一国の宰相としてチャレンジする精神は大事だと思いますが」(同)

 今春の統一地方選での遊説などで、「私は将来に禍根を残さない政治をする」と訴えたいとの狙いもあるようだ。
しかし、自民党のある閣僚経験者に聞くと、反応は冷ややかだ。

「政治家が国民の将来を考えるのは当たり前。岸田さんが言っていることは議論の出発点でしかなく、レベルが低い。前任首相のやれなかったことをやるという視点も、事実としたらナンセンス。まるで両首相が政策実行のカベになっていると言いたげですよね。2人とも色んな批判はあるものの、先行きの見えないコロナとの闘いに忙殺されていたこともまた事実ですからね」(同)

 政策実行に伴う唐突さ、準備不足という問題以外に、岸田首相は長男・翔太郎氏を秘書官にするなど、身内には特に甘い点が指摘されてきた。身内とそれ以外との温度差も修正しない限り、さらにツッコみどころの多い2023年となりそうだ。

デイリー新潮編集部