「あの二人が元の鞘に収まることなんて未来永劫ありません。同じ釜の飯を食った仲ではありますが、前原さんは“盟友”だった福山さんを崖っぷちから突き落とそうとしましたからね」。こう語るのは京都の政界関係者だ。来月に控える京都府議選・市議選を前に和解したという国民民主党の前原誠司代表代行と立憲民主党の福山哲郎元幹事長。だが、二人の関係を周囲は冷めた目で見ている。

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ポスターで維新の猛追を交わした福山氏

 両者が完全に決裂したのは昨夏の参院選だった。改選を迎える福山氏が苦戦を強いられているなか、前原氏は「国民京都府連としては福山さんに一本化する義理や借りは全くない」と公言。選挙戦が始まるや連日のように京都入りした吉村洋文・大阪府知事と肩を並べて日本維新の会の新人候補を応援した。

 吉村・前原連合の攻勢に落選一歩手前まで追い込まれた福山氏だったが、終盤で“奇策”を講じて挽回を図る。それが「京都のことは京都で決めよう」というポスターだった。

「通常は党首の写真などが載る政党ポスターに、《まっとうな政治 京都のことは京都で決めよう。立憲民主党》というフレーズだけを印字し、京都中の街角に数千枚を貼り付けたのです。大阪人に対して京都人が抱いているプライドをくすぐる戦法が功を奏し、福山氏は終盤で盛り返してギリギリ議席を守りました」(京都政界関係者)

 そんな経緯で亀裂を深めた両者であったが、参院選後、双方が抱えた悩みが統一地方選であった。前回の市議選では5選挙区が競合し、3選挙区で共倒れしていたからである。

労組の仲介で“手打ち”

 先に動いたのは前原氏だった。

「昨年11月、国民民主党京都府連の定期大会で、『国政と地方選は事情が違う。統一選挙では立民に候補者調整を持ちかけたい』と語り、福山さんに秋波を送った。それを聞いた福山さんは、地元紙のインタビューに『協力や調整は否定しないけれど、これまでの態度を説明する必要がある』などと発言。福山さんは、ついこの間まで躍起になって自分を落選させようとしていたくせに、『国政と地方選は事情が違う』なんて都合のいい一言で片付けるなと、前原さんを牽制したのです」(同)

 だが、福山氏にしても背に腹はかえられぬ状況だった。もともと京都は共産党が強く、隣県からは維新旋風が押し寄せている。意地を張ったところで国民と協力しなければ、一層の苦戦を強いられることは間違いないからだ。

  結局、2月中旬、労働組合の仲介で食事会が催され、“手打ち”になった。だが、前原氏のお膝元である左京区だけは市議選の候補者調整が困難で、いまもバチバチにやりあっているという。

「定数8に14人が立候補する大混戦のなか、立民からは元府議で新人の島内研氏、国民からは元職の隠塚功氏が出馬しています。前原氏は隠塚氏に自分の選挙事務所を使わせているほどの入れ込みようで、かつて自分の秘書を務めていた島内氏を潰しにかかっています」(立民関係者)

筋を通しているようには見えない

 そんな前原氏のことを福山氏は「器が小さいし、筋が通っていない」と周囲に語っているという。

「表では旧民主党同士で頑張ろうと握手をしながら、ウラではちゃっかり維新と選挙協力していますしね。今回も国民の現職がいる選挙区では、維新の候補者は立っていません。福山さんからすると、前原さんは御都合主義で動いているようにしか見えないんです」(同)

 一方の国民関係者は「前々回の参院選で、京都に限らず全国で現職がいるところに対抗馬を立ててきたのは福山氏だ」と反論する。

 板挟みになっている旧民主党系の支持者や地方議員は、両雄の確執をうんざりした思いで見ているという。

デイリー新潮編集部