9月29日、DeNAが阪神に5対3で勝利し、セ・リーグ3位が確定。クライマックスシリーズの出場を決めた。一方、巨人は2年連続4位でシーズンが終わることになった。「同一監督による2年連続Bクラス」は球団史上初。“常勝巨人”は今や昔になってしまった。

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 巨人・山口寿一オーナー(66)は29日、「ファンの皆様に大変申し訳ないシーズンになってしまった」と、原辰徳監督(65)も翌30日に「ファンの方には大変申し訳ない」と、そろって謝罪した。

 巨人が最後にセ・リーグを制したのは2020年だが、日本一となると2012年まで遡らなければならない。ファンにとっては長い屈辱の年月が続いているわけだ。

 今シーズンもBクラスで終わった原因はどこにあったのか。巨人OBの広澤克実氏に「戦犯3人」を挙げてもらうよう依頼すると、返ってきたのは意外な顔ぶれだった。

 原監督、阿部慎之助ヘッド兼バッテリーコーチ(44)、そして桑田真澄ファーム総監督(55)──。原監督は当然として、選手は1人もいない。

「首脳陣の責任が重いと考えています。しかし原監督の具体的な采配を批判するつもりはありません。原監督と阿部ヘッドの2人に問いたいのは、首脳陣としてのガバナンス(統治)です。私の知人に上場企業の社長がいます。その人は常々、『私に異論を唱えない役員はいらない。役員の仕事は社長に諫言することだ』と公言しています。果たして原監督は、コーチ陣に自由に発言できる環境を整えていたのでしょうか? 阿部ヘッドは原監督の右腕として、『それは違うと思います』と進言することがあったのでしょうか?」

コーチ陣の忖度

 チーム成績が悪いことから、巨人戦の中継では原監督の厳しい表情がアップで映されることも多かった。ベンチが“お通夜”のようだと感じたファンもいただろう。

「ベンチの雰囲気が、まさしく今、首脳陣が抱える問題を浮き彫りにしています。実際、日々の巨人戦を応援しながら、『今の原ジャイアンツは、監督とコーチ陣が綿密なコミュニケーションを取っているな』と感じるファンは皆無だったのではないでしょうか。どう見ても『コーチ陣は原監督に忖度し、会議でも監督の気にいることしか言っていない』という雰囲気が伝わってきました」(同・広澤氏)

 クビ覚悟で原監督に直言するコーチはいなかった。その責任が原監督と阿部ヘッドにあるという。

「そもそも原監督は“敗軍の将”です。Bクラスの責任を一身に負うべき立場です。その上で、阿部ヘッドの責任も問う必要があるでしょう。もちろん20歳以上も年齢が離れていれば、直言や諫言は難しいとは思います。とはいえ、阿部ヘッドの重要な仕事は、コーチ陣を統制し、彼らの意見を監督に伝えることです。監督との衝突を恐れてはいけません。阿部ヘッドは原監督と対立することから逃げ、首脳陣の調和を優先し過ぎたのではないでしょうか」(同・広澤氏)

セもパも捕手を“併用”

 選手の采配に目を転じると、広澤氏が今シーズンの巨人で気になったのは、小林誠司捕手(34)の“冷遇”だという。9月28日現在(以下、同)、大城卓三捕手(30)は131試合に出場。一方、小林は21試合にとどまった。

「捕手としての小林くんに様々な意見があることは知っています。ただ、大城くんも安心して1年を任せることができる捕手ではありません。打撃成績は立派ですが、リードもキャッチングも巨人の正捕手に相応しい実力ではないでしょう。大城くんと小林くんを使い分けたほうが、巨人は波に乗れたのではないかと思う場面がありました。それに比べてセ・リーグを制した阪神は、以前から梅野隆太郎くん(32)と坂本誠志郎くん(29)の2人捕手制を採用していました。これが功を奏し、8月中旬、梅野くんが骨折で離脱しても、阪神の屋台骨が揺らぐことはなかったのです。興味深いことにパ・リーグを制したオリックスも、今シーズンは森友哉くん(28)と若月健矢くん(27)の2人の捕手を併用してシーズンを乗り切りました」(同・広澤氏)

「秋広が」と「秋広も」の問題

 3人目の戦犯として桑田ファーム総監督の名前を挙げた理由は、「巨人の生え抜き選手が全く育っていないから」だという。

「一体、巨人は何年前から『深刻な投手陣のコマ不足』と指摘されているのでしょうか。セカンドと外野の問題も常に議論されています。私は日テレジータスで二軍の試合もチェックしていますが、巨人の育成力は深刻な状況だと言わざるを得ません。先日、大学野球の関係者と話したのですが、『巨人の三軍と試合をしても何も学ぶところがない。できれば止めたい』と本音を漏らしていました。プロを目指す大学生のほうが成長に貪欲でモチベーションが高いのに対し、巨人の三軍選手はハングリーさに欠けるとのことでした」(同・広澤氏)

 昨シーズンは1試合しか出場がなかった外野手の秋広優人(21)が、今シーズンは118試合に出場を果たしている。

「秋広くんは才能がある選手だと思います。ただ、巨人は“常勝軍団”を目指しているはずでしょう。それなのに『有望な新人は秋広選手』では寂しすぎます。『秋広選手“も”有望な新人です』と言えなければ駄目です。秋広くんクラスの新人が何人も二軍から上がってこないと、巨人再建は厳しいはずです。桑田ファーム総監督の奮起が求められるのは言うまでもありません」(同・広澤氏)

女房役の獲得が急務

 再び阪神と比較すれば、チームの若返りが優勝に大きく寄与したのは言うまでもない。とある阪神のファンサイトによると、今シーズンの開幕スタメンは、阪神の平均年齢は2番目に若い26・4歳。巨人は29・6歳でワーストの12位だったという。

 広澤氏は、ヤクルト時代は野村克也氏(1935〜2020)、阪神時代は星野仙一氏(1947〜2018)という名将2人の下でプレーした。2人のコーチに対する“人心掌握術”を振り返ると、原監督が成すべきことが見えてくるという。

「野村監督はコーチ陣も平気で叱り飛ばしていました。説教は徹底して論理的で、コーチも対応に必死です。余計な忖度をする暇などありません。結果、コーチの本音を引き出しました。星野監督は全権をコーチに与えました。数カ月待って結果が出ないとコーチにカミナリが落ちますが(笑)ご自身が投手でしたから、投手育成はこだわりがあったと思います。それでも投手コーチに全てを任せていました。あれはなかなかできないでしょう。そして原監督には、頼れる“女房役”がいないと思います。もし来シーズンも続投だとしたら、原監督と同世代か年上で、何でもズケズケと言い、なおかつ明るい性格のヘッドコーチを招聘できたら理想的でしょう」(同・広澤氏)

デイリー新潮編集部