プロ野球中日の来季2軍監督の候補に、福留孝介氏(46)の名前が挙がっていることが10月3日までに複数の球界関係者の話で明らかになった。中日の“来季組閣”を巡っては、立浪和義監督(54)が2軍監督にOBで盟友の井上一樹氏(52)を招聘し、PL学園高時代の同級生、片岡篤史2軍監督(54)を1軍ヘッドコーチとする方向で調整していたはずなのだが……。

 ここに来て混迷の様相を呈している上、立浪監督のPLの後輩に当たる福留氏は入閣に難色を示しているのだという。受諾か固辞か、予断を許さない状況で、中日のオフは今年も激動の予感がする。

福留氏は「山崎派」、現役時代から微妙な立浪監督との関係

 井上氏には1軍打撃コーチ就任案が浮上し、代わりに同じ左打者だった森野将彦打撃コーチ(45)を2軍へ配置転換。立浪監督と指導方針の相違から昨季途中に2軍降格した中村紀洋打撃コーチ(50)は退団する運びで、首脳陣は大幅に刷新されそうだ。立浪監督が目指していたPLの先輩、清原和博氏(56)のスタッフ入りは、親会社の中日新聞社サイドがゴーサインを出さなかったことで立ち消えになり、福留氏が加入すればコーチ人事の目玉となる。

 福留氏は昨季限りで現役引退した。PLの大先輩である監督が就任した年に引導を渡されたことに、さる中日OBは「2人の微妙な関係がよく表れていた」と述懐する。

 福留氏にとって立浪監督は憧れの存在だった。小学校の頃、故郷の鹿児島から家族総出で宮崎の中日の串間キャンプまで見学に出かけ、当時PLからプロ入りした立浪監督の練習をかじりつくようにして見ていたのは有名な逸話だ。

 福留氏はその背中を追い、PLに進学し、同じように遊撃手として中日に入団した。プロ入り後はしかし、その関係は蜜月とは言いがたいものだった。プロの世界では少なからず“派閥”が存在する。福留氏は「立浪派」ではなく、立浪監督の1学年上で主砲として活躍していた山崎武司氏(54)の「山崎派」だった。

ハワイの合同自主トレは山崎氏の楽天移籍後も継続

 同OBが回顧する。

「孝介はタツ(立浪)を目標にプロに入ってきたが、武司の方になついて、自主トレは(2年目から)ハワイで一緒にやるようになっていた。武司が楽天に移籍しても合同自主トレは続いた。武司とタツは関係がいいとは言えず、タツと孝介と関係はつかず離れずになっていた」

 昨年の福留氏の現役引退時も、立浪監督がPLの先輩として手心を加えた形跡はない。強いて挙げるなら打率1割にも満たない極度の打撃不振に陥りながらも、実に交流戦まで1軍に置いてチャンスを与えたことか。しかし、それさえ名球会入りした大打者に対する、どの監督でもするような配慮の範疇と言えた。

 福留氏も立浪監督に相談することなく、引退を報告した。

「(昨オフは)タツは孝介をコーチとして誘っていない。孝介も(プロ入り後)ユニホームを着続けていたので一度、外部から野球を見たいとの気持ちが強かった。誘われていたとしても、(今季も)見通しが暗かったチームに入りたくはなかっただろう」(同OB)

福留氏はポスト立浪に“虎視眈々”

 引退からわずか1年後、福留氏は立浪監督に2軍監督の就任要請を受けた。上下関係が絶対のPLの後輩に半ば、強制的にそのポストを引き受けさせようとしているという。

「孝介にとっては片岡というPLの先輩もいる。2人からは相当、圧力がかかっている」(古参のチーム関係者)

 しかし、そこはPL時代に、ドラフト会議で複数球団の指名が競合した末、交渉権を獲得した近鉄への入団を拒否した“鋼のメンタル”の持ち主、福留氏である。

「孝介の考えは(昨オフと)今も変わっていない。むしろチームとしては1年たっても立て直しの兆しが見えず、タツは(来季限りで)辞めることがちらついているとあって、より考えが固くなったのではないか。タツの依頼を受けてチームに入ったとなれば、孝介にタツの色が付く。辞めるときに連帯責任を問う声が出てきかねない。たとえ先輩の要請でも譲らないつもりかもしれない」(同前)

 福留氏が頑なになるのは理由がある。前出の中日OBがこう明かす。

「頭の中に次の監督があるからですよ」

 立浪監督は来季で3年契約が切れる。低迷から抜け出せなければ進退問題は避けられない。まずポスト立浪の有力候補に挙げるのは日本代表監督に就任する井端弘和氏(48)だ。

井端氏と福留氏のマッチレースの様相

 中日OBでもある井端氏は2026年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)までは指揮を執らず、つなぎの代表監督にとどまる。来オフの中日監督就任に支障はない。

「井端も(21年オフに)タツのヘッドコーチの依頼を断っている。U12日本代表監督を引き受けた後だったことは口実で、タツの次は自分と見立てていたから、ミソが付く可能性があるヘッドは受けられなかった。孝介が2監督をやりたくない理由も同じだろう」(同OB)

 同様にポスト立浪候補とされる福留氏はMLBでもプレーしており、日米通算2450安打を放つなど、選手実績は井端氏を凌駕する。巨人で現役を終えた井端氏に対し、中日で引退した。

「孝介には井端より上だったという自負があるだろう。(東京五輪代表でコーチを務めた)井端は指導経験では上回っているとはいえ、NPB球団で指導経験がないのは同じ。井端より先に監督になるイメージはあるようだ」(同)

 中日は3日の巨人戦(東京ドーム)で今季が終了。福留氏の動向は、立浪監督が背水の陣で臨む来季へ最初の試金石となりそうだ。

デイリー新潮編集部