まさに危機的状況である。元横綱・白鵬(39)が率いていた「旧宮城野部屋」力士の半数以上がこの5月場所を休場中。しかもその大半は引退を検討しているという。ファミリーが崩壊状態となった、白鵬の受難。

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 元幕内・北青鵬の暴力問題に関連し、旧宮城野部屋が閉鎖されたのはこの3月末のこと。一国一城の主だった宮城野親方(元白鵬)は伊勢ケ浜部屋の部屋付き親方となり、所属力士も全員、同部屋に転籍した。12日に始まったこの5月場所は、彼らの“裸一貫”出直しの一番として注目されたわけである。

 ところが、だ。

 現在のここまでの星取表を眺めた好角家は、ある“異常事態”に気が付くはず――。

「休場力士の多くは引退を検討している」

 宮城野部屋から転籍した力士は計19名いるが、うち10名が初日から休場している。他に途中休場した力士もおり、すなわち半数以上が土俵に姿を見せていないわけだ。

「前代未聞ですよね」

 と眉をひそめるのは、さる角界関係者である。

 しかも深刻なのは、

「そのほとんどの原因が明らかになっていないこと。コロナにかかった伯桜鵬やけがが悪化した炎鵬は別にして、他はなぜ休場しているのか、傍からは見えないままなのです」

 として、種明かしをする。

「実は休場力士のうちの多くは引退を検討しているそうです。もちろん理由はそれぞれですが、やはり彼らは大横綱・白鵬に憧れて入門した。それが師匠ではなくなり、モチベーションが失われたのかもしれない」

 理由は他にも。

「伊勢ケ浜は、横綱・照ノ富士を筆頭に幕内力士が6人所属する現角界一の強豪部屋。対する旧宮城野は最高位が十両の伯桜鵬で、しかも不祥事の後ですから、居心地が悪く、やる気が損なわれていった」

「すでに引退している子も」

 いずれにせよ、宮城野親方の手塩にかけて育ててきた弟子の半分が、近いうちに角界を去る可能性が出てきたのだ。これはもう、ファミリーの実質的な崩壊といえる。

「休場扱いの力士の中には、すでに引退している子もいるんです」

 と明かすのは、旧宮城野部屋のさる後援者だ。

「それが反映されていないのは、部屋の異変に気付かれたくないという、協会の保身のためではないか――。そう勘繰りたくもなります。ある力士からは“他に10人ほどが引退したか引退を考えている”と聞きました」

 また、

「宮城野親方はあの不祥事以来、完全に牙を抜かれて協会の言いなりになってしまいましたよ」

 と嘆息するのは、別の後援者だ。

「ある力士は引退届を出した後、すぐに親方から“今日中に荷物をまとめて出て行け”と言われたそうです。当初は断髪式が終わるまでいてもいいとのことでしたが、“上司”の伊勢ケ浜さんの命で前言を翻してしまったよう。結局、その力士は断髪式も行ってもらえないそうです。4月以降、親方は弟子の親御さんのところを謝罪行脚に回っているそうですが、これも伊勢ケ浜さんからの指示だと聞きました」

「大の里の件は」

 史上最多の優勝回数と勝利数を誇る大横綱にとっては、屈辱極まりないことだろう。

 一方で、

「これまで角界で功績を残してきた宮城野親方に対して、この扱いはひどすぎます」

 と不満を口にするのは、さる弟子の母親である。

「確かにあの不祥事については親方の責任は免れられませんが、ではこの間の大の里の件は一体何なのでしょうか」

 現小結・大の里が20歳未満の同門の力士に飲酒を強要して処分された一件だが、

「師匠の二所ノ関親方は厳重注意で済んだ。協会がどういう基準で処分を決めているのかさっぱり分かりません。現役力士のためにも、早く部屋を元に戻してほしいのですが……」(同)

「週刊新潮」2024年5月30日号 掲載