ダルビッシュ 6年134億円の“大型契約”も絶不調…「復活」はあるのか?

ダルビッシュ 6年134億円の“大型契約”も絶不調…「復活」はあるのか?

 ここまでのところ、ダルビッシュ有の働きは契約に見合っていない。

 昨年2月、シカゴ・カブスは6年1億2600万ドル(約134億円)を提示し、ロサンゼルス・ドジャースからFAになっていたダルビッシュを迎え入れた。この総額は、2017年のオフにFAが得た契約のなかで、エリック・ホズマー(サンディエゴ・パドレス)の8年1億4400万ドル(約153億円)に次ぐ。投手では最高総額だ。

 だが、契約1年目は故障に見舞われ、開幕から8試合に投げただけでシーズンを終えた。今シーズンは健康を保ってローテーションを守っているものの、4勝6敗、防御率4.21と今一つだ(8月16日現在)。防御率は一度も4.20を下回っていない。先発投手がその役割を果たしたかどうかの目安となる、6イニング以上かつ自責点3以下の「クオリティ・スタート」は25先発中8試合、32.0%にとどまる。昨シーズンまでの通算クオリティ・スタートは139先発中86試合、61.9%だった。

 しかも、ダルビッシュは地元ファンの前でなかなか勝てなかった。7月17日に勝利投手となるまで、本拠地のリグリー・フィールドでは、13試合に登板して0勝5敗、防御率5.50(テキサス・レンジャーズ時代の1試合は除く)。ヤフー・スポーツは7月18日に「ユウ・ダルビッシュがリグリー・フィールド初白星を挙げる。カブスから1億2600万ドルをゲットした523日後に」と題した、マーク・タウンゼントの記事を掲載した。大型契約で入団したダルビッシュが、球団やファンの期待を裏切ってきたことを仄めかす、いかにもシニカルなタイトルだ。

 もっとも、この日に限らず、最近のダルビッシュは復調傾向にある。オールスター・ブレイク明けから6回無失点を2登板続け(ホーム初勝利はその2試合目)、後半戦は7登板で4度のクオリティ・スタートと防御率2.36を記録している。

 大きく変わったのは、与四球の数だ。前半戦は97.0イニングで49四球を与えたのに対し、後半戦は42.0イニングで2人しか歩かせていない。与四球率は4.55と0.43。驚くほど違う。MLB.comのアンドルー・サイモンは8月12日に「コンテンダー(ポストシーズン進出を狙う球団)が復調を必要とする10選手」という記事で、その一人にダルビッシュを挙げ、「すでに調子を取り戻しているかもしれない」と書いた。

大きな推進力に

 8月16日に33歳の誕生日を迎えたが、年齢による衰えの兆候は出ていない。従来と変わらず、4シームの平均球速は90マイル台半ば。防御率5.01の前半戦も、奪三振率は10.00を超えていた。ただ、今シーズンから、ダルビッシュはメインの球種を変更した。スタットキャストによると、それまで全投球の15%未満に過ぎなかったカッターを30%以上に増やし、4シームよりも多く投げている。前半戦の不調は、産みの苦しみではないが、モデルチェンジに伴う一時的なものだった可能性がある。

 だとすれば、カブスがめざす5年連続ポストシーズン進出と3年ぶりのワールドチャンピオンに向けて、ダルビッシュは大きな推進力となり得る。

 2年前のワールドシリーズでは、2登板とも2回途中にKOされ、ドジャースが敗れる一因となった。だが、これはダルビッシュの球そのものが通用しなかったわけではなく、対戦相手のヒューストン・アストロズにいたカルロス・ベルトランに癖を見抜かれ、球種を読まれていたようだ。シリーズ直後にスラッガー誌とやりとりしたツイートのなかで、ダルビッシュは「ベルトランは癖を見る天才です」と書いている。ダルビッシュとベルトランは、元チームメイトだ。2016年の後半戦に、レンジャーズでともにプレーした。

 ベルトランは、この年のワールドシリーズ優勝を有終の美として、選手生活に別れを告げた。現在はニューヨーク・ヤンキースに在籍しているが、スペシャル・アドバイザーなので、ベンチには入らない。ダルビッシュにしても、同じ過ちを繰り返すことはないだろう。すでに癖は修正しているはずだ。

 ここからの好投で、カブスをワールドチャンピオンに導けば……。今までの評価は一転し、ダルビッシュはヒーローとして喝采を浴びる。

宇根夏樹(うね・なつき)
1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライターとして、『スラッガー』などに執筆している。著書『MLB人類学−名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年8月18日 掲載


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