貴重な右の強打者

 開幕から約半月が過ぎたプロ野球。まだまだシーズンは始まったばかりだが、既に苦しい試合が多くなっている球団も少なくない。その一方で選手個人に目を向けてみると、潜在能力はありながら、なかなか出場機会に恵まれておらず、環境を変えれば才能が開花する可能性を秘めた選手もいる。今回はそんなベンチや二軍でくすぶっているものの、トレードでチャンスを与えてほしい選手をピックアップしてみたい。なお、巨人の小林誠司については、各メディアでトレードの可能性がたびたび報じられていることから、あえて対象から除外した。

 まずは開幕から好調な阪神から。大物ルーキーの佐藤輝明の陰に隠れてすっかり存在感が薄くなっているのが高山俊と中谷将大だ。

 高山は1年目にいきなり136安打を放ち新人王に輝いたが、2年目以降は低迷。昨年はわずか7安打に終わり、今年も開幕から二軍暮らしが続いている。東京六大学野球では、通算最多安打記録を樹立するなど、もともと高い打撃技術と運動能力がある選手だけに、他球団に移籍すれば、再び輝きを取り戻す可能性は捨てきれないだろう。

 一方の中谷は2017年に20本塁打を放ち中軸候補として期待されたが、その後は成績が下降の一途を辿り、今年は開幕一軍メンバーから外れている。三振が多い選手ではあったが、年々持ち味であった思い切りの良さがなくなっているように見えるが、貴重な右の強打者タイプであることは間違いない。

 チーム編成を考えると、2人を一気にトレードするというわけにはいかないが、高山は左打ちの外野手が少ないヤクルト、中谷は右打ちの外野手が少なく、長打力不足に悩む中日にとって面白い選手ではないだろうか。

あっという間に中堅

 また、ルーキーの加入で立場が苦しくなった選手という意味では、DeNAの伊藤裕季也もその1人といえる。立正大時代は強打の二塁手として活躍し、4年秋にはチームを大学日本一に導く活躍を見せ、19年にドラフト2位で入団した。

 1年目には一軍で4本塁打を放つ活躍を見せたが、今年はルーキーの牧秀悟との一塁のポジション争いに敗れ、その存在感は薄くなっている。ここから先日、来日が発表されたソトが復帰すれば、さらに伊藤の出番が限られてしまいそうだ。

 ドラフト2位での入団で、今年3年目という点を考慮すると、即トレードという可能性は低そうだが、大学卒の選手は旬を逃すと、あっという間に中堅と呼ばれる年齢になってしまう。伊藤と同じ年齢層で、右打ちの内野手が少ないソフトバンクや広島であれば、活躍の場は広がる可能性も十分あるだろう。DeNAは投手陣が苦しいだけに、思い切ったトレードを模索してみるのも良いのではないだろうか。

ポテンシャルの高さは折り紙付き

 続いて、楽天。昨年のドラフトでは、1位から4位まで大学生、社会人の投手を指名したほか、田中将大がメジャーから復帰した影響で、押し出された投手がいる。開幕前に池田隆英を日本ハムにトレードしたが、他球団からすれば、まだ狙いたい楽天の投手はいる。

 ある程度実績があり、年齢的に中堅に差し掛かっている選手の中では、釜田佳直が面白い存在だ。度重なる故障でなかなか成績は安定しないながらも、高校卒1年目にいきなり7勝をマークするなど、ポテンシャルの高さは折り紙付きだ。今年も開幕一軍入りは逃したとはいえども、二軍でまずまずの投球を続けている。チームの先発投手陣を考えると、なかなか一軍で出番がなさそうなだけに、他の球団でチャンスを与えてもらいたい投手である。

 ここに挙げたのはほんの一例であり、他にもチーム事情からなかなか出場機会に恵まれない選手は少なくない。日本のプロ野球は、どうしても生え抜きを重視する傾向があり、トレードに対して、いまだにネガティブなイメージがある。しかしながら、選手にとってはチャンスがあるチームでプレーする方が幸せなケースは多いはずだ。

 数年前から出場機会に恵まれない選手にトレードの機会を増やす「現役ドラフト」の導入も検討されているが、いまだに時期は不透明なままだ。コロナ禍で新外国人をシーズン途中に補強することも難しくなっているだけに、国内の選手をどんどん活用する意味でも、トレードが活発になっていくことを望みたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年4月12日 掲載