初戦が天王山!?

 東京五輪に臨むU-24日本代表とジャマイカ代表の試合はU-24日本が4−0で圧勝した。U-24日本はこれで活動を一時停止し、東京五輪のエントリーメンバー18名を決定後(発表は6月22日の予定)、7月12日にホンジュラス、17日にスペインと親善試合を行い、22日の南アフリカ戦で五輪の初戦を迎える。

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 そして6月12日のジャマイカ戦のスタメンは、東京五輪のベストメンバーに近いと言っていいだろう。

 GKは谷晃生(20)。DF4人は右から酒井宏樹(31)、吉田麻也(32)、町田浩樹(23)、旗手怜央(23)。ダブルボランチは遠藤航(28)と田中碧(22)。攻撃陣の2列目は右から堂安律(22)、久保建英(20)、三笘薫(24)。そして1トップが前田大然(23)というスタメンだった。

 負傷でチームを離脱したCB冨安健洋(22)の代わりに町田、1トップの上田綺世(22)の代わりに前田が出場したが、恐らく彼ら2人がバックアッパーとして横内昭展監督(53)はスタメンに起用したのではないだろうか。

 そして試合には2つの顔があった。

 久保の偶然とはいえ恐らくサッカー史に残る4選手の股間を抜く先制点。三笘のドリブルによる攻め上がりから、最後は交代出場の上田が技ありのループで決めた3点目。そして同じく交代出場の相馬勇紀(24)がドリブルでGKをかわしてからアシストした堂安の4点目。いずれも鮮やかなゴールだった。

後半は試合が停止

 五輪のメンバーに生き残るために前線の選手はゴールという結果が求められるが、三笘と相馬はシュートではなくアシストという最善(森保一監督[52]がよく使うフレーズでもある)の結果を選択したことは高く評価したい。加えて、そうした決定機を確実に決めた上田と堂安の落ち着きも頼もしく感じた。

 久保、堂安、三笘の2列目の選手による攻撃のハーモニーは、A代表の2列目、南野拓実(26)、鎌田大地(24)、伊東純也(28)と遜色なく、改めて彼らの直接対決を見たいと思ったほどだ。カタールW杯に向け、日本のストロングポイントであることは間違いないし、五輪後の競争激化が楽しみでもある。

 ところが4−0とリードした後半20分以降、横内監督が攻撃陣のメンバーを入れ替えると、試合は途端に停滞した。

 チームとしての攻撃は影を潜め、個人技頼りの散発攻撃となる。正直、「もう試合は終わった」と思った。

 試合後の横内監督は、18名の選手選考に関して問われると、「う〜ん、あの、骨格はある程度、見えてきたかな」と考えながら話しつつ、「スタッフの意見を含めてもう一度見直したいかな」と慎重な姿勢を崩さなかった。

「個の強さ」

 裏を返せば、骨格は見えていたので、メンバー入りが当確の久保や堂安と交代で起用された三好康児(24)と食野亮太郎(22)らは、「選考外」を通告されたようなものだろう。横内監督としては、アピールの機会を与えたと思っているかもしれないが、その起用法は酷だと感じずにはいられなかった。

 そして3試合を取材して痛感したのは――A代表にも当てはまるが――現代サッカーのトレンドを実践していることだった。簡単に言うと、ボールをロストした瞬間から守備が始まること。攻撃では個人が仕掛けることの2点である。

 ジャマイカ戦後に横内監督はノーゴールに終わった前田に対し、前線からのチェイスやプレスバックを評価していた。FWも守備をするのは当たり前で、特にスピードのある選手の相手DFに与えるプレッシャーは効果的だ。

 個人で仕掛けることの重要性は改めて説明する必要はないだろう。よく「守備は組織で」と言われるが、“フィジカル・モンスター”とも言える酒井のプレーを見れば守備も原則的に個人であることが分かる。「個の強さ」で酒井も吉田もヨーロッパで生き残ってきた。

 同じように攻撃でもボールを持ったら個人で相手を剥がせるか。五輪代表もA代表も海外組が主力のため個の力で勝負して局面を打開しているし、国内組では三笘と相馬がドリブル突破により「個の力」をJリーグで発揮している。

メダルの可能性

 日本代表のW杯予選は相手が格下だった。そしてU-24日本代表の国際親善試合も3月のアルゼンチンのような強豪ではないため、正直物足りなさは残った。それでもチームの熟成と進歩を感じた。

 サッカー界のご意見番として名高いセルジオ越後氏は、相手が弱いため守備陣のテストになっていないと指摘した。それはそれで正論である。だからこそ、守備陣にOA枠として経験豊富な3選手、計算できる選手を森保監督は選択したのではないだろうか。

 去年1月のU-23アジア選手権をタイで取材した時は、グループリーグで敗退したチームに「メダルなんてとても無理」と思ったものだ。しかし新型コロナの影響で東京五輪が1年延期されたことで、上田や三笘ら当時の大学勢がプロになり長足の進歩を遂げた。OA枠の3人も加わった今回の連戦を取材し、どんな色になるかは別にして、メダルの可能性を感じたのは私だけではないだろう。

 ただし、そのためにも初戦の南アフリカ戦は勝利が義務づけられることに変わりはない。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月15日 掲載