史上最多14人の育成選手

 プロ野球のペナントレースで最も意外な結果に終わった球団と言えば、ソフトバンクではないだろうか。4年連続日本一に輝き、今年も優勝候補の筆頭に挙げられていながらも、得意の交流戦で躓くと、夏場以降も巻き返すことができずに、まさかの4位でシーズンを終えた。2005年に親会社がソフトバンクとなってから、Bクラスに沈んだのは、これが3回目である。シーズン終了を待たずに工藤公康監督の退任が発表され、来季に向けての補強が噂されているが、今年の戦いぶりを見ていると、パ・リーグの覇権を奪還することは決して簡単なことではないだろう。

 特に気になるのが、“育成のソフトバンク”と言われながら、新戦力の台頭に陰りが見られるという点だ。千賀滉大や牧原大成、甲斐拓也と育成ドラフトから3人の主力選手を輩出したのは、2010年と既に10年以上が経過している。それ以降の育成ドラフトで入団した選手をみると、完全にチームの主力となったのは、石川柊太(2013年育成1位)、周東佑京(2017年育成2位)の2人しか見当たらない。今年は、ようやくリチャード(2013年育成3位)が、一軍で7本塁打を放って開花の兆しを見せているのは好材料だとはいえ、大半の選手は支配下登録されることなく、ユニフォームを脱いでいる。

 今年のドラフトでは史上最多となる14人もの育成選手を指名し、二軍や三軍の実戦経験を増やそうという試みは非常に面白いものではあるが、70人という支配下登録枠のある現状のルールで、これがどこまで機能するか、未知数だといえそうだ。

気になる“不可解な指名”

 それ以上に深刻なのが、支配下の上位指名で獲得した選手たちの“低迷”である。2011年以降の10年間に獲得した選手を振り返ってみると、チームの柱と呼べる存在になっているのは、森唯斗(2013年2位)と栗原陵矢(2014年2位)くらいしか見当たらない。

 アマチュア時代に非常に評価が高く、複数球団の競合の末に引き当てた東浜巨(2012年1位)、高橋純平(2015年1位)、田中正義(2016年1位)なども、入団前の期待を考えると、物足りない数字と言わざるを得ないだろう。千賀や甲斐といった育成ドラフト出身の選手が大化けする一方で、アマチュア時代は大器と言われていた選手が開花し切れていない……。こうした現状について、今一度チーム内で原因を探る必要がありそうだ。

 もうひとつ気になるのが、支配下ドラフトでの“不可解な指名”だ。2017年のドラフト会議では、3度抽選を外したとはいえ、本人も育成での指名だと考えていたという吉住晴斗を1位で指名。吉住は結局、一度も一軍のマウンドに上がることなく、今季限りでの引退を表明している。

実力以外の判断材料?

 また、昨年のドラフトでは、高校時代に外野手としてプレーしており、一度も公式戦に登板していない田上奏大を支配下の5位で指名した。さらに、今年も怪我で大学4年間のリーグ戦わずか2試合、2イニングしか登板していない大竹風雅(東北福祉大)を同じく支配下の5位で指名している。田上の1年目は二軍で1試合、1回を投げただけで三軍でも目立った成績を残していない。また、大竹は最終学年の4年春、秋ともリーグ戦登板なしに終わっており、来季はリハビリがメインとなる可能性が高い。

 本来であれば、こういった選手こそ育成ドラフトで指名するべきではないだろうか。多くの育成選手を抱えているソフトバンクにとって、早期に一軍戦力とならない選手を支配下として指名することは、選手の輩出スピードの鈍化に直結する問題である。

 田上の叔父はソフトバンクでプレーした経験のある田上秀則で、大竹の父は、担当の作山和英スカウトと高校時代から旧知の間柄だという。“縁故入団”とまでは言わないまでも、単純な実力やポテンシャル以外の判断材料が加味されていると、勘繰りたくなるような指名と言われても仕方がないだろう。

 三軍選手の実戦機会を増やすために、今年の育成ドラフトでは史上最多となる14人もの選手を指名。これに加えて、メキシコとドミニカから若手の外国人選手を育成選手として獲得するなど、次々と新たな施策を打ち出している。その一方で、肝心の支配下選手に関するスカウティングと育成が正常に機能しているかは疑問が残る。こうした点を見直して、チームの立て直しを図らなければ、来季以降も苦しい戦いが続くことも十分に考えられる。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月28日 掲載