WBC騒ぎの真っ只中、日本プロ野球界に大ニュースが舞い込んでいた。
その年に最も活躍した投手に贈られるサイ・ヤング賞を2020年に受賞したバリバリのメジャーリーガー、元ロサンゼルス・ドジャースのトレバー・バウアー(32)が横浜DeNAベイスターズに入団することが決まったのだ。
「昨季年俸は3200万ドル(約42億円)。少なくとも額面上は“日本プロ野球史上最強の助っ人”です」
とスポーツ紙デスク。
しかし、それほどの大選手がなぜわざわざ日本でプレーするのか。
「現状、彼はアメリカでプレーできないんですよ」
複数の現地報道をまとめるとこうなる。21年、バウアーはネットで知り合った女性を自宅に招き、女性の首を絞めて気絶させた。再び会った際も、顔を平手打ちするなどの暴力をふるった。女性は裁判所に接近禁止命令を出してもらうべく提訴。それが公衆の知るところとなり、大リーグ機構はバウアーに対し長期にわたる出場停止処分を科した。
「その後、事件は不起訴に。処分も短縮され、バウアーは制度上では出場可能になりました。だが、事態を重く見たド軍は彼を解雇。年俸は支払われるため、彼をほぼタダで使える状態でしたが、他球団も食指を動かさなかった。そこで、かねて彼と縁があったDeNAが拾ったのです」
「コーチやチームメートを見下す」
年俸は4億円プラス出来高。傷モノゆえか、実に9割引の特価品だった。
「バウアーは名門UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で機械工学を修めた秀才です」
とメジャー研究家の友成那智氏が語るには、
「運動力学が得意で、筋肉の動きをも研究しながら、自身を実験台にして、独自の練習方法を考案。ただ、コーチやチームメートを見下すので、皆から嫌われる。ゆえに、ドラフト1巡目指名でアリゾナ・ダイヤモンドバックスに入団したのに、翌年トレードに出されてしまいましたし、事件が不起訴になっても、彼を擁護する人はいませんでした」
本来なら物議を醸しそうな、いわくつきの外国人選手――さては、WBCの盛り上がりに乗じてこっそりと獲得したかった?
「週刊新潮」2023年3月30日号 掲載