円安が追い風となって爆増中の外国人旅行者。メディアでは「彼らによる事件」が目を引きがちだが、実は「外国人旅行者が巻き込まれる事件」も発生している。先日は台湾から来日した美人「里長」が無作法な痴漢事件に巻き込まれ、その様子をSNSで公開。日本と台湾で大きく注目されることとなったが、そもそも「里長」とはどんな役職なのだろうか。

ついに立腹して「痛い一撃」

 6月15日、台湾から東京へ旅行に来た何志寧(ハー・ジーニン)さんが、Instagramで4本の動画を公開した。1本目はJR山手線「大塚」駅北口の駅前広場で、ロング缶の酒らしきものを手にした男から執拗に絡まれている様子だ。明らかに泥酔している男は、日本語と英語で行為を迫る言葉を吐き続けたという。

 危険を感じた何さんは駅前の書店に避難したが、男に追跡された。店内で付きまとい行為を受けている様子が2本目の動画である。すると3本目はなぜか、書店から離れた場所で痛みにのたうち回っている男の姿に。メディアに対して何さんは、臀部を触られたため立腹し、反撃として局部を蹴ったとコメントしている。

 最後の4本目は、やや引いた位置から撮影された南口。例の男はまたふらふらと歩いてくるが、近付いた制服姿の警官に声をかけられたのか全速力で北口方向へ逃走。呆れたことに缶を手にしたままである。何さんは3本目と4本目の動画の間で警察に助けを求めており、男が現行犯逮捕された後は事情聴取に応じたという。

「最も美しい里長候補者10人」の1人

 日本人を何とも申し訳ない気分にするこれらの動画は、台湾に続いて日本でも注目された。“海外旅行者のトラブル映像”は世界に多数あるものの、メディアがこぞって報じた理由は、何さんが新竹市東区埔頂里の「里長」を務める政治家だったからだ。

 台湾の行政区分は現在、台北市や高雄市などの直轄市6つと基隆市などの3市、花蓮県や金門県などの13県。その下に「区」や「鎮」などが、そのさらに下に「村」と「里」がある。里の世帯数は100〜数千と地域差があるため、里長は日本で町長や村長、町内会長などにたとえられるが、里長は住民との距離がより近く、「困ったことがあれば」という相談役のニュアンスも強い。

 2022年、この里長の選挙に20代の「美女軍団」が参戦した。有名YouTuberが「最も美しい里長候補者10人」の投票結果を発表するなどアイドル的人気を博した一方、政治のショー化を批判する声が上がるなど賛否両論に。結果は10人のうち6人が当選を果たし、痴漢撃退の動画を公開した何さんはそのうちの1人である。また別の当選者は個人写真集を出版したことでも話題を呼んだ。

日本を憎むことはありません

 里長の任期は4年。22年の当選者たちは任期中盤に入り、それぞれの活動をSNSで発信している。政治分野でのSNS活用が盛んという台湾の風潮も、ネットネイティブ世代の美人里長たちにとっては追い風のようだ。何さんも今回の痴漢事件を発信しているが、日台でニュースになったことから、一部では反日感情を煽るようなコメントも散見されるようになった。

 そこで何さんは新たな投稿で「一部の政治的な言論に発展し、台日関係を悪化させようとする動きも見られました」と報告。「私に嫌がらせをしてきたのは日本人ではなく、外籍人士(どこの国かは分かりません)」「一人の外国人による行為で、日本の治安を全面的に否定することは避けたい」と早くから出ていた「犯人は外国人説」を肯定し、「たとえ日本で嫌がらせを受けても、それで日本を憎むことはありません」と変わらぬ“日本愛“を綴った。

 さらに、事情聴取の際に通訳の手配も行った日本の警察に感謝を示しつつ、女性たちには「何か問題が起きたときには、まず自分を守ることが大切」と訴えた。また「調書の最後に『今後も日本に来ますか?』という質問がありましたが、私は迷わず『来ます!』と答えました」と再来日の意思を示し、台湾と日本の友好を呼び掛けた。

 この投稿のコメント欄には、中国語で「里長お疲れ様」「とても勇敢」、日本語では「日本人としてお詫びします」「嫌な思いをさせてごめんなさい」といった声が寄せられている。

デイリー新潮編集部