文在寅大統領は、3月1日、三一節(独立運動記念日)の記念演説を行った。韓国3大紙の1つ、中央日報は過去4年間の文大統領の対日スタンスについて、「強硬→衝突→宥和→混沌」と表現し、ブレまくる文大統領を揶揄したのだが、就任して4回目となる今回の演説でも、その変節ぶりを改めて印象付けた。演説の概要と韓国国民の反応についてレポートする。

「立場を変えて考えること」を訴えたが

 演説では、《日本とわれわれの間には不幸な歴史があり、加害者は忘れることができても被害者は忘れることができないもの》と述べる一方で、《過去に足を引っ張られてはならない》《過去は過去として解決していき、未来志向的な発展にさらに力を注ぐべきだ》と発言。

 続いて、《韓国政府はいつでも日本政府と向き合って対話を交わす準備ができている》《「易地思之」(立場を変えて考えること)の姿勢でひざをつき合わせるなら、過去の問題もいくらでも賢明に解決できる》とも述べた。

 これまでを振り返れば、大統領が今回示した「易地思之」は、ある種の変節だと捉えられても仕方ないだろう。

 文大統領はかつて慰安婦問題を「反倫理的な犯罪行為」と断罪し、「加害者である日本政府が『終わった』と言うべきではない」と訴えた。

 その後、韓国最高裁が日本企業による徴用被害者への賠償を命じた判決に対し、日本は輸出管理で優待される「ホワイトリスト」から韓国を排除。これに対して文大統領は「2度と日本に負けない」と日本を挑発した過去がある。

 とはいえ今回も、日本をチクリと刺激することは忘れなかった。

 三・一独立運動の前年の1918年、スペイン風邪に襲われた結果、朝鮮半島では致死率が65%に達したことを引き合いに出し、《日帝は植民地の民衆を伝染病から守ることができなかった》と主張している。

下心も見え隠れ

 そして、文大統領が対話姿勢を継続する北朝鮮問題に対しても、日本の役割を期待するような発言が目立った。

《昨年12月、米国、中国、ロシア、モンゴルとともに「北東アジア防疫、保健協力体」を発足させた》
《日本も参加を検討しており、ひいては北朝鮮も一緒に参加することを期待している》《「北東アジア防疫、保健協力体」への参加を皮切りに北朝鮮が域内国家と協力・交流することを希望する》とし、域内のすべての国家が参加する防疫協力体を、南北関係進展の糸口にするという構想を示している。

 さらに、福島原発事故により放射能漏れを危惧して与党議員らがボイコットを煽っていた東京オリンピック・パラリンピックに関しても、《今年開かれる東京オリンピック・パラリンピックは韓日間、南北間、朝日間、そして朝米間対話の機会になる可能性もある》《韓国は東京オリンピック・パラリンピック成功のために協力する》と胸をはった。

 東京オリンピックのタイミングで、米朝韓の3者会談を実現することが文大統領の悲願であることはすでに報じられる通りだから、「開催成功のために協力する」という言葉も下心のように映る。

 さて、この演説に対する韓国国民の反応はどうだったかと言えば、否定的なものがほとんどだったようだ。大統領府や大統領のFacebookへの書き込みの中から、主だったものをピックアップしてみよう。

 大統領擁護のコメントは、

《あなたは死ぬまで反日すべきだ》

《誇らしい文在寅大統領です。任期中のご労苦に感謝します》

《最貧国から成長した大韓民国です。政権に批判的なワクチン関連などのニュースをけん制しながら日常を回復し、跳躍しましょう。本当にありがとうございます、文大統領》

《私の大韓民国が世界最高の先進国だ》

 などといったもので、中身が何であるかにかかわらず、文大統領を支持する狂信的な支援者といった趣だ。

 他方、否定的な意見については、口を極めてののしる内容も目立ち、一部カットしても手厳しい印象だ。

この国に何の成果を?

 特に、2015年、当時の安倍晋三首相と朴槿恵大統領との間で結ばれた慰安婦合意をひっくり返したことに対する批判は根強い。

《韓日関係を破綻させた主犯は文大統領ではなかったか。慰安婦合意を奇怪な口実で破綻させておいて、破綻させた時にその後どうなるかわからなかったのか? わざと破綻させていまさら仲良くしようと言うのでは呆れるじゃないか》

《これまで慰安婦たちのためにどんな努力をしたのか? 慰安婦合意を破綻させておいて、それで何もしていない。(元慰安婦が慰安婦支援団体の不正行為を告発して)正義連の闇が暴露され、政界との繋がりを国民が知った。何の能力も対策もなく、無条件に合意を破棄させ、それが経済制裁へと繋がり、その被害を国民に与えている。こんなに無能で、国民の分断に明け暮れる詐欺師な大統領がいるとは》

《幽体離脱でもしたのか? 朴槿恵大統領も反日のスタンスだったが、慰安婦合意を取り付けた。それが嫌なんだな》

 そしてやはり、文大統領の変節ぶりや北朝鮮へのおもねりには辟易している空気があり、

《あなたの話を誰が信じるだろうか。口うるさい“左翼的暴力団”は絶対信じない》

《あなたは、ああだこうだと駄々をこねるいたずらっ子? …この国に何の成果をもたらしたのか?》

《あれだけ日本を憎めと言っておいて、今度は日本と仲良くなろうと? 我が国の歴代大統領の中で一番、恥という言葉を知らない人物だ》

《反日を扇動するキャッチコピーについて、「2度と日本に負けません」なんて言っておいて、いまさらなんだ。そういえば側近を日本に派遣し、新たに「菅・文在寅宣言」を出すことを提案させたこともあったし、日本が再び賠償してくれるなら後で韓国がその金を返すと水面下で交渉しているという話もあった》

《むごたらしい北朝鮮にさえペコペコして……なんでこんなに甘いんだ》

《対策もなく公務員の数を増やしたのはなぜ? 就任する時、「不動産だけは自信がある」と言ったのはなぜ? 韓国がお金を出して作った南北の連絡事務所を北に爆破されても怒鳴れなかったのは?》

 などなど辛辣な言葉が続く。

昨年末から支持率低下が報じられ、レームダックと言われてきたが、それをリアルに映し出すようなコメントが多数見られた。

デイリー新潮取材班

2021年3月2日 掲載