世界で新たな脅威となっている新型コロナウイルスのオミクロン株。日本での感染者はまだ3人だが、お隣の韓国では7日現在36人に拡大する騒ぎになっている。元凶とされるのは、防疫当局に虚偽申告をしたキリスト教牧師夫妻。国民は、昨年春先に集団感染を起こした大邱(テグ)市の新興宗教を思い出し、「また教会か!」と怒り狂っているという。その矛先は、在韓外国人たちにも向かいつつある。

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たった一つのウソから……

「なんで牧師のくせにウソをついたんだと、国民は非難轟々です。せっかくウィズコロナ政策が始まったばかりだというのに、彼らのせいでまた逆戻りしてしまったのですから」

 こう語るのは、ソウル市在住の韓国人ジャーナリストである。

 韓国でのオミクロン株の感染拡大は、キリスト教牧師夫妻がついた、たった一つの“ウソ”から始まった。夫妻は11月24日、ナイジェリアから仁川(インチョン)国際空港に帰国。迎えに来た信者の車に乗って帰宅した。だが、帰国翌日に夫妻そろってオミクロン株に感染していることが発覚。すぐさま防疫当局が聞き取り調査に入ったのだが、妻は「防疫対策を施してある専用タクシーを使って帰宅した」と当局にウソをついた。信者にまで迷惑をかけてはいけないという配慮が働いたのだ。

 その後、夫妻の子供も感染が発覚し、すぐさま一家は隔離された。この間、夫妻は、車を運転してくれた信者にも密かに連絡を取り、感染していないか確認していた。信者は念のためPCR検査を受けたが、結果は陰性だったので、黙っていつも通りの生活を続けてしまった。だが、6日後に再検査すると陽性が発覚。この間、周囲にウイルスを撒き散らしてしまったのである。

ソウル市にも飛び火

「信者は感染させた妻とともに、教会で行われた数百人が出席する礼拝にも参加。近所のショッピングモールなどにも普通に出歩いていました。感染者は日に日に拡大し、12人、22人、7日には36人にまで膨れ上がった。当初、感染は教会がある仁川市に限られていましたが、7日にはソウル市内にあるソウル大や韓国外国語大の外国人留学生3人の感染も確認された。学生らは教会を訪れていた信者でした」(同前)

 両大学は、すぐさま全授業をオンラインに切り替えた。韓国では、大学に限らず全ての学校で、一人でも陽性者が出ると休校になるか授業がオンラインに切り替えられ、全生徒・学生のPCR検査を実施するなど徹底した封じ込めが行われる。牧師夫妻のたった一つのウソが、何千人単位の生活を一変させてしまう大騒動に発展してしまったのである。

 この騒動を聞いて思い出すのは、昨年春先、まだコロナ禍が始まったころ、大邱市の新興宗教「新天地イエス教会」が起こした集団クラスターであろう。あの時、怒り狂った国民は教祖を糾弾。教祖は土下座させられ、その後、感染症予防法違反などの疑いで逮捕・起訴された。まさに、あの“フルボッコ”が再来したのである。

「ネット上では、すぐさまこの夫妻の氏名、顔写真、年齢などがさらされ、”なんでこんな時期に海外に行ったのか”“コロナを布教するのがお前たちの仕事か”などと激しく罵倒され続けています」(同前)

外国人の布教を専門

 怒りの矛先は、在韓外国人にも向かいつつある。牧師夫妻は、妻は韓国人だが、夫は外国人だった。車で迎えに来た信者もウズベキスタン人。教会を訪れ感染したソウル大の学生らもロシア系外国人だった。

「牧師たちは外国人の布教を専門としていました。韓国のワクチン摂取率は80%に達していますが、外国人のワクチン接種が進んでおらず、それが感染拡大の要因の一つとされていた。ネット上では“外国人は出ていけ”なんて過激な言葉も出始めています」(同前)

 来年3月に大統領選を迎える文在寅(ムン・ジェイン)政権にとってピンチとも言えるこの騒動だが、いまのところ大きな痛手にはなっていないという。通常、こんな騒ぎが発生したら、コロナ対策が悪いと政権批判が強まるだが、「今回は国民の怒りが牧師夫妻や外国人に集中しているからです。政権は、ほっとしているところでしょう」(同前)。

日本はウソをついている

 韓国ではこれまで新規感染者が増加傾向にあり、4日には過去最高の一日5352人を記録した。ただし、先月、ウィズコロナ政策に舵を切った際に想定した範囲内であったため、国民の受け止め方は冷静だったという。ところが、今回のオミクロン株感染拡大を受けて、話が変わってきた。6日から飲食店での会合が6人までと制限されるなど、ウィズコロナ政策が見直されることになってしまった。

 7日の日本での感染者数は全国で115人。海を隔てているとはいえ、雲泥の差である。だが、韓国人の中には、「日本はウソの発表をしている」と信じて疑わない人も多いという。

「文在寅シンパに多いですね。韓国では街の至るところに無料のPCR検査場がありますが、日本では有料でしょう。だから、実態を表していないというのです。でも、それだと死者数が少ないことの説明がつかない。一度、そう言って諭したことがあるんですが、『日本人は歴史でもウソばかりついているだろう!』と取りつく島がありませんでした。彼らの多くは、東京オリンピック中に日本の感染者数が増えていた時、ざまあみろと喜んでいた人たちです」(同前)

 激しやすい国民性なのである。

デイリー新潮編集部