中国の上海市は、新型コロナの感染拡大のため3月28日から一部地域でロックダウン(都市封鎖)を始めた。4月1日から封鎖エリアを市全域に広げ、以来、2500万人の市民は自宅から出られないという異常な事態が続いている。多くの国は“ウィズコロナ”に移行しているのに、何故中国はそこまで“ゼロコロナ”に拘るのか。中国出身の評論家・石平氏に話を聞いた。

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 これまで中国のコロナ対策を擁護し続けてきたWHO(世界保健機構)のテドロス事務局長も、流石にゼロコロナ政策を批判し始めた。5月10日、スイスのジュネーブで行われたメディアブリーフィングでこう発言している。

《ウイルスの様態と将来予想を考慮すると、中国のゼロコロナ政策は持続可能だとは思わない。他の戦略へ転換することが非常に重要だと考える。》

 ゼロコロナを無理に続ければ、社会や経済、人々の生活に大きな支障が出ることは言うまでもない。

食料調達に問題

 実際、ロックダウンが続く上海市では、日常生活の食料調達に問題が生じている。市民は外出禁止で買い物に行けないため、政府による食料配給やネットスーパーなどを利用しているが、ネットスーパーはアクセスが殺到し、サイトにほとんど繋がらない状態で、運よく繋がっても商品は完売状態だという。

 ロックダウンを行っているのは上海だけではない。3月以降、吉林省長春市、福建省泉州市、江蘇省昆山市、河北省邯鄲市など27都市で部分的ないし全市的ロックダウンが実施され、1億6000万人が影響を受けているのだ。

 北京市の朝陽区でもロックダウンが行われ、5月4日から40以上の地下鉄駅、158あるバス路線がすべて閉鎖された。ここまでくると異様というほかない。

「新型コロナは、中国の武漢から感染が拡大しました。ご存じのように、習近平(総書記)は武漢全域をロックダウンし、厳しい封じ込めを行いました」

 と、石氏が解説する。

「2020年から2021年にかけて、欧米でも新型コロナの感染が拡大する中、中国は世界に先駆けて、コロナの封じ込めに成功しました。習近平は、民主主義より社会主義の方が緊急時にはうまく対応できる。これが社会主義の優越性の証左であると考えたのです。自ら主導したゼロコロナは、彼の看板政策のようになりましたから、今さらやめるわけにいかないのです」

 もっとも昨年11月、新たな変異株であるオミクロンが発見され、世界中で爆発的に感染拡大した。

「感染力が極めて高いオミクロンは中国でも猛威をふるい、感染者が急増した上海をロックダウンしました。世界はウィズコロナへ舵を切りましたが、中国はそれができません。これまでゼロコロナを進めてきて、コロナを封じ込めたので、今さら欧米のようにウィズコロナに変更はできない。それをやると社会主義の優越性を否定することにつながるからです」

集団的免疫力ができてない

 ウィズコロナを受け入れない理由は、他にもある。

「中国は早い段階で新型コロナを封じ込めてしまったので、国民の間に集団的免疫力ができていません。そのため、ウィズコロナを実施すると、さらに爆発的に感染が広がる恐れがあります」

 中国のシノバック製ワクチンにも問題がある。

「中国は、自国のワクチンに自信がありません。有効なワクチンならウィズコロナも可能ですが、そうではないのでとにかくゼロコロナ政策を進めるしかないのです」

 米ファイザー製や米モデルナ製のワクチンは有効率が90%以上であるのに対して、中国のシノバック製ワクチンは有効率が50%程度(WHOが定めたワクチン承認の最低水準)とされている。

「今年の秋には5年に1度の中国共産党大会があり、習近平は3期目の総書記続投を目指しています。そのため党大会前にコロナが感染爆発するのは何としても避けたい。だからゼロコロナを続けるしかないのです」

 5月5日、中国共産党の最高意思決定機関である中央政治局常務委員会の会議があった。

「常務委員会は7人で構成されていますが、そこで習近平は『ゼロコロナ政策は常に揺るがず堅持する。疑問や否定意見には断固として戦う』と宣言しています」

デイリー新潮編集部