実の娘とともに視察

 北朝鮮が強行した、アメリカ本土まで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験。全世界を破滅に導きかねない危険な代物だが、今回で10回目と聞けば、恐怖感がまひして「またか」としか思わない人もいるだろう。

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 そういう時、独裁者は予想を上回る“演出”を仕掛けてくる。発射翌日の11月19日、国営の朝鮮中央通信が配信した写真に、金正恩氏の隣で実験を見つめる、彼の娘が写っていたことは大きく注目された。

 ふくよかな感じの少女が、どこか似た顔立ちの父親と手をつないで歩いたり、見晴らしのいいところに座ったりしている姿は、一般家庭の記念写真ともそう違わない。

 ただし、背景にミサイルさえなければ、の話だが。

「正恩氏と妻・李雪主(リソルジュ)氏の間には子供が3人いるとの説が有力です。発射に立ち会ったのは2013年に生まれた第2子、『金主愛(キムジュエ)』と見られます」(外信部記者)

 これまで正恩氏の子供が公の場に姿を現すことはなかったが、国営メディアも「愛する子とともに視察した」と伝えており、実の娘であることは間違いない。西側各国では「後継者か」との報道も見られるが……。

極端な男尊女卑社会

「むしろ逆でしょう。後継者ではないからこそ、隠す必要がないのです」

 そう分析するのは、コリア国際研究所の朴斗鎮(パクトゥジン)所長。

「極端な男尊女卑社会の北朝鮮で、女性のトップなど考えられない。兄の正男(ジョンナム)さえ葬った正恩が、自分より優秀と評される妹の与正(ヨジョン)は重用しています。女性だから寝首を掻かれる心配をしないで済むというわけです」

 残る2人の子は性別も公表されていないが、後継者は男子のはずというのが朴所長の見立てだ。ではなぜ、娘をお披露目したのか。

「大量破壊兵器をあえて子連れで視察することで、“自分には胆力がある”“アメリカなど恐くない”という余裕を見せたかったのでは。でもそれは、斬首作戦に対する恐怖の裏返しに過ぎません」(同)

 核には核で対抗する、と嘯(うそぶ)く北朝鮮。恐怖を恐怖で覆い隠す愚行は、まだまだ続きそうだ。

「週刊新潮」2022年12月1日号 掲載