「阪神8−1中日」(27日、甲子園球場)

 ゲームセットまでマウンドに立つことはできなかったが、勝利への尽力はみじんも色あせない。阪神・村上が九回途中まで自己最多133球の力投で自己最多11個の三振を奪い、4月30日・広島戦(マツダ)以来の今季3勝目。完封目前で1点を失い、安藤投手コーチにお尻をポンポンとたたかれ、雨にぬれながらベンチへ。2カ月ぶりの勝ち星にも「ヒーローに呼ばれているのがちょっと恥ずかしいです」とお立ち台で本音をこぼした。

 25日に誕生日を迎えて26歳初登板。開幕から任されていた週頭の火曜から、木曜に登板日が変更となった。心機一転の一戦、立ち上がりのピンチを切り抜けるとリズムに乗って「低めにしっかり投げられましたし、良かったのかな」とフォークで三振の山を築いた。

 同門対決も制した。東洋大の2学年先輩・梅津と、プロ2度目のマッチアップ。昨年9月25日に投げ合って黒星を喫した。リベンジをかけて、六回まで両軍無得点の投手戦。「先にマウンドを降りないようにとは意識してたので良かったです」と後輩の意地を見せた。

 東洋大時代、梅津らチームメートと近所の町中華に度々足を運んだ。店員ともざっくばらんに言葉を交わす中、梅津らの直球が最速150キロを超えるのに対し、自分が届かないことに不安を漏らすこともあった。それでも「僕には僕の持ち味がある」と不断の努力を重ね、先輩にプロで初めて投げ勝った。

 学生の頃からの思いもつながる価値ある1勝。「勝てたので、またこれから貢献できるようにやっていきたいと思います」。なかなか援護に恵まれず、白星を重ねられなかったMVP右腕の逆襲がここから始まる。