高木大成といえば、高校時代、それまでのキャッチャー像とはひと味違う「1番・捕手」として活躍したことが思い出される。センスが光る打撃、キャッチャーとしてのインテリジェンスを感じさせるスマートなプレースタイルは、慶應義塾大に進んでからも東京六大学野球リーグの舞台でもいかんなく発揮された。

 だから、西武ライオンズでプロ野球選手人生を全うした後、コーチなど現場の仕事ではなく、バックオフィスでの業務に就いたことも違和感なく受け入れられた。そんな彼がプロ野球というビジネスを、自身の業務経験を通して伝えるのが本書『プロ野球チームの社員』(ワニブックス)の主旨だ。

 2000年代以降、プロ野球(NPB)を巡るビジネスは激変した。国民的人気コンテンツとしての求心力は落ち、地上波でのテレビ中継も減少。ただ、その危機感は、球団のスタンスを「親会社の広告宣伝」という立場から「自ら動き、稼ぎ、球団単体で黒字を目指す」方向に舵を切る一因にもなった。現在のプロ野球では、ホームタウン密着をはじめとするさまざまな収益力アップのアイデアが考案、実行されている。特にパ・リーグ球団は前例なき改革、意欲的な球団経営を推し進め、大きな成果を挙げた。

 2005年シーズン限りで引退した高木が球団ビジネスの業務にあたっていたのは、まさにこの変革の時代。引退後、彼はほぼゼロから新たな球団ビジネスを文字通り手探りで模索してきたのだ。本書の特長はそのリアルさ。新旧の球団ビジネスの違い、進化を肌で感じた彼の経験を通し、プロ野球の球団が、新たな経営スタイルを模索してきた経緯とその実態、時代の移り変わりがよく伝わってくる。

 特に、まさに今、高木が担当している試合の中継映像を巡るビジネスが面白い。一ファンとしては豊富なデータの使用などの違いはあるが、根本的には昔と変わらぬ試合の中継映像だが、その裏側は大きく変化している。詳しくは本書を読んでほしいが、簡単にいえば現在の西武ライオンズの試合中継の映像は、放送するテレビ局は原則として制作していない。制作しているのは球団であり、それを放送するテレビ局や各局ニュース番組に売っている形になっている。独自のカメラを加えるといった中継局固有の映像もあるが、中継のメイン映像はあくまで球団制作である。なぜこの形が生まれたのか、そのメリットは何か。ぜひ、担当者である高木自身の言葉で知ってほしい。

 そのほかにも彼が引退後に歩んできた現代プロ野球ビジネスのエピソードが満載。さらには彼のアマチュアからプロまでの野球人生の内幕もよくわかる。彼は一時、異動で球団を離れ、ホテルビジネスに就いていた時期もあるが、その話もきっちり収録。当時、近況など彼の情報があまり伝わってこなかったので、ファンとしてはうれしいだろう。そういった点で、ビジネスとしてのプロ野球に興味ある人も、西武ライオンズや高木大成のファンだったという人も、いずれも楽しめる1冊といえよう。

文=田澤健一郎

※高木大成氏の高は正しくははしごだか