『週刊ダイヤモンド』9月30日号の第1特集は「10月から本番!大混乱必至! インボイス&改正電帳法 最新対策マニュアル」です。2023年10月1日から本格的にインボイス制度が始まり、請求書や領収書、経費精算などに新ルールが課されます。経理や財務の担当者、フリーランスなどの免税事業者だけの問題ではなく、企業で働く誰もがその影響を受けるようになります。今やインボイスを理解することは、サラリーパーソンの新常識。本特集では、インボイスが会社員にどのような影響を与えるのか、何に気を付ければいいのかについてまとめました。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
インボイス&改正電帳法【最新・決定版】対策マニュアル、全社会人が絶対に知っておくべき知識を完全網羅!
サラリーパーソンの新常識!
覚えておきたいインボイスの新ルール
2023年10月1日から本格的に始まるインボイス制度で、会社員の日常業務が大きく変わる。だが、そのことに多くの会社員は気付いていない。影響を受けるのはフリーランスなどの小規模事業者か、自社の経理部門だろうというのが一般的な認識だからだ。
だが、あなたが営業部門の社員ならば、日々取引先に対して請求書を送ったり、時には飲食店で接待して領収書をもらったりするだろう。購買・仕入部門なら、請求書や領収書のやりとりは日常的な業務に違いない。他にも、出張旅費や備品の購入の際に、自分のお金で立て替えて後に経費精算することは、どの部門であっても当然のように行っているはずだ。
実は、こうしたビジネス上の通常業務にインボイスは密接に絡み合ってくる。
インボイスの正式名称は、適格請求書等保存方式という。要は、国が決めたルールに則した請求書や領収書などを適切に保存せよ、ということだ。つまり、多くの会社員が日常的に扱う請求書や領収書、レシートなどがインボイスに該当し、これまでよりも厳格に運用されることになる。
ここで問題なのは、インボイスを受け取った場合だ。サイズや様式もバラバラでかつ膨大な量の請求書や領収書がインボイスの記載要件を満たしているか、受け取るたびに毎回チェックしなければならないからだ。
クラウド型経費精算システムのTOKIUM(トキウム)の調査によれば、「受け取る請求書を正しく処理できるか」「経理以外の社員が正しく理解・対応できるか」という不安の声が多く上がったという。
では、請求書や領収書がインボイスの要件を満たしていないとどうなるか。売上時に預かった消費税から、仕入れや経費で支払った消費税を差し引く「仕入税額控除」ができなくなるのだ。すでに仕入先に支払った消費税分も合わせて納税することになり、消費税の“二重払い”となるわけだ。
ここでややこしいのが、インボイスを発行できない免税事業者の存在だ。インボイス登録は任意のため、10月以降も免税事業者は残り、その数は約68万事業者に上る。
無論、免税事業者から受け取った請求書や領収書はインボイスではないため仕入税額控除ができず、会社の税負担が増えてしまう。
だからといって免税事業者に対して、課税事業者となってインボイスへの登録を強引に促したり、一方的に消費税分を値引きしたりすると、独占禁止法や下請法に抵触するため、公正取引委員会から大目玉を食らいかねない。
これは、会社員が立て替えた経費も同様で、きちんとしたインボイスでなければ経費処理できず、場合によっては自腹を切る羽目に陥ることもあり得るのだ。