ミズノ(大阪府/水野明人社長)がワークアパレル市場の攻略に奮戦している。5000億円ともいわれる同市場。上位には古くからの企業が君臨する一方で、カジュアルウエアやスポーツ系のアパレル企業らが参入するなど、群雄割拠の様相を呈す。そうした中で、2018年から同市場に本格参入した同社は着々と売上を伸ばしている。その動向や戦略に迫る。

群雄割拠の様相呈すワークアパレル5000億円市場

 アパレル業界の棲み分けはとくにこの10年であいまいになり、事実上ボーダレス化状態。カジュアルウエアを軸にしていた企業が、ワークウエアに進出したかと思えば、その逆のケースも増えつつある。

 ユニクロがライフウエアを企業用に提案したり、ワークマンがカジュアルウエアに進出したりと、異なるテリトリーへの進出が、企業戦略に盛り込まれることも珍しくなくなっている。こうした潮流を表現するには「多様性」と「機能性」の2つがキーワードがキーとなるだろう。

 アパレルでは、ジャンルによっては機能性が強く求められたり、デザイン性が重要視されたりする。そうした中で、とくに昨今は、機能性への需要が高まり、消費者への訴求力が高まっている。カジュアルウエアの中で機能性を押し出したユニクロが支持を集め、機能性を打ち出したワークマンが新規のカジュアルウエア部門で多くのファンをつかんだのはその象徴といえる。

 加えて、企業イメージの向上や働き方改革など、職場変革が進む中で、ワークスタイルやワークウエアにも多様性の波が押し寄せ、より機能的で個性的なワークウエアのニーズが増大。これまでと異なるメーカーの参入余地が広がっている。

2018年の本格参入以降、順調に伸長

ミズノカスタムスタジオサイトトップ
ミズノカスタムスタジオサイトトップ

 ミズノのワークアパレルへの本格参入は、まさにこうした流れに乗ったものといえるだろう。スポーツウエアで培った機能性は、ハードな動きや過酷な環境での作業に耐えうるアパレル製造にそのまま活かせる。加えて、ファッション性、デザイン性も磨かれており、そこにブランド力も相まって、障壁が低い。

 2018年に同市場に本格参入を果たした同社は、毎年130%前後の成長を続け(コロナの影響を受けた2021年度は前年比105%)2018年度に40億円弱だった売上が、2023年度は97億円となり、100億円も目前だ。「右肩上がりが続いてはいるが、まだまだ。2025年度には170億円を目指しており、そのための施策も強化していく必要がある」と同社ワークビジネス事業部  アパレル企画担当の外処一記氏は明かす。

 控えめに話すのには理由がある。ワークウエア市場には、大手企業を中心とした完全オーダータイプで、1988年から参入しているのだ。当然、完全オーダータイプは大口になるので売上に占める割合も大きい。つまり、ミズノのワークアパレル売上は、まだまだ大口の完全オーダータイプに頼った数字なのだ。2018年からスタートしたカタログ販売による一般向けの展開で、さらに拡大しようというわけなのである。

カタログ販売とオーダー型のいいとこどりで勝負

MCSシミュレーション画面
デザインや色をシュミレーションできる

 通常のカタログ販売の場合、在庫を抱える必要があり、決して効率がいい販売スタイルとは言えない。そこで同社がいま、戦略的に展開を推進しているのが、カタログオーダー形式の販路拡大だ。

 同形式はいわばカタログ販売とオーダー販売のいいとこどり。カタログで気に入ったウエアを選んでもらい、デザインの希望を反映し、納品する。カタログ起点といっても、パターンは800種類以上にカスタマイズ可能で、例えばジャケットなら生地の種類、襟の形、前立てなどを好みで選べる。

 サイズ展開も125パターンあり、本体はパーツごとにカラーを選べるほど自由度がある。もちろん、企業名や団体名の刺繍にも対応する。この多彩なバリエーションは、もはや実質的にオリジナル品といっていいレベルだろう。

 これを20着からの小ロット短納期で実現するのが、同社の強みだ。「完全オリジナル品になると約6か月はかかる。それがカタログオーダーでは2か月での納品に対応。サービスの立ち上げ当初は4か月で進めていたが、体制、仕組みを改善することで半分の納期を実現した」と外処氏。

 登録すれば利用できる「ミズノカスタムスタジオ」で、こうした豊富なバリエーションをPCやスマホ上でシミュレーションしながら選ぶことができるのも、カタログオーダー型のセールスポイントだ。

 金額は、ベーシックなデザイン、春夏用素材で作成した場合、本体7,400円(税別)〜といったところで、市販のカタログ品と比べ約130%アップの価格設定になる。

ワークウエアの多様化も後押し

ワークビジネス事業部 アパレル企画担当
ワークビジネス事業部 アパレル企画担当の外処一記氏

 「最近は多様性の流れの中で、ひとつの会社でも、部ごと、課ごとにユニフォームを変えるというところも出てきている。こうしたニーズにもしっかりと応えながら、ミズノブランドを生かして拡販していきたい」と外処氏は力を込める。

 スポーツウエアで培った機能性を押し出しながら、機動力を高めることで、個性的なワークウエアをスピーディーに納品する。これらと並行し、「より過酷な環境でのワークウエアに対応できる製品が少ないのが課題。そうしたところに対応できるウエアを増やしていくことでシェアを伸ばしていきたい」(外処氏)。2024年にまず、防寒ウエアをラインナップに加えることが決定している。

 ワークウエアに対する、企業側のニーズそのものも多様化しているといい、例えばSDGsの観点からエコ素材を活用したウエアへのニーズも高いという。そうした需要への対応力もワークウエア市場に食い込む要素となる。そうなると、ジャンルを問わず、各メーカーが得意領域をそのままワークウエア市場でも強みとして横展開して訴求できることになり、今後、さらに新参組が流入してくる可能性も高そうだ。

 実際、スポーツアパレルでは、ニューバランス、アシックス、プーマなどが参戦しており、それぞれが独自の強みを訴求し、せめぎ合っている。5000億円の市場を巡る攻防は、今後さらに激化の様相だが、本来の得意領域の再発見につながる要素もあり、利益以外に得るものも多いのかもしれない。

著者:油浅健一