小売業IT&DXアンケート結果を発表!「情報セキュリティ強化」と「業務効率化」が加速する

DCSオンライン6/11(水)5:00

※本記事はダイヤモンド・チェーンストア3月1日号別冊「流通テクノロジー」の一部記事を再編集したものです。文中の所属・肩書等は発行時点のものです。

ダイヤモンド・リテイルメディアでは、小売業の経営・情報システム・デジタルトランスフォーメーション(DX)などの担当者に対し、情報システムおよびIT整備の重点分野、リテールメディアの導入、DXの基本政策と進捗状況、組織構成などに関するアンケート調査を実施し、25社より回答を得た。

アンケート結果からはデジタル戦略の事例やその実態、成果が明らかになっている。

回答企業一覧(25社)万代、pHmedia、ワークマン、神戸物産、アクシアル リテイリング、セブン&アイ・ホールディングス、サンデー、いちやまマート、フレスタホールディングス、生活協同組合コープこうべ、コメリ、エイチ・ツー・オー リテイリング、平和堂、ハローデイ、北雄ラッキー、ミスターマックス・ホールディングス、イオン北海道、ローソン、フジ、東武ストア、近商ストア、フレッセイ、マックスバリュ東海、ジャパンミート、サニーマート(順不同)

デジタル戦略 イメージ
情報システムの現在の課題については、前年3位の「情報セキュリティ・内部統制への対応」(80%)が1位となった(i-stock/metamorworks)

I.情報システムの現状とIT導入・活用の課題

セキュリティシステムの強化が課題に

 情報システムの現在の課題(図表❶)については、前年3位だった「情報セキュリティ・内部統制への対応」(80%)が1位となった。年々増加するランサムウェアやフィッシング攻撃といった外部からのサイバー攻撃は個人情報の漏洩やサービスの停止などを引き起こすため、企業の信頼性維持にとって大きな脅威となっている。

 内部からの情報漏洩や不正アクセスなども同様だ。こうしたリスクに対応するためのセキュリティ強化や社内教育の徹底がさらに重要視されていることがわかる。

図表❶現在の自社における情報システムの課題

 続いて「情報システム部門スタッフの育成」(52%)、「老朽化したシステムのリプレース」(52%)が同率2位となった。小売各社では利便性の向上や業務効率化を目的としたリテールメディアやAIによる値引きシステムなど、さまざまなデジタルツールやシステムの導入が進んでいる。

 これらを適切に運用し、データの利活用を行える人材を育成することは今後さらに重要視されていくだろう。

 情報システム整備によって実現したいこと(図表❷)については前年から引き続き「店舗の業務の省力化・効率化」(96%)が1位となり、前回同率1位であった「本部の業務の省力化・効率化」(92%)が2位となった。次いで、前回4位の「業務プロセス改革」(64%)が3位となった。

 人手不足が深刻化するなかで、業務の効率化、省力化の重要性が増していることがわかる。

図表❷情報システム整備によって実現したいこと

II.今後1〜2年で導入を検討しているシステム

フルセルフレジと、防止システムの導入進む

 今後1〜2年のITの新規導入、あるいはアップグレード・リプレースなどの関心事について質問したところ、店舗関連(図表❸-1)では3年連続で「フルセルフレジ」(60%)が1位となった。続いて「電子棚札」(56%)が2位、「POSシステム」(48%)、「万引き防止システム」(48%)が同率3位となった。

図表❸-1 今後1〜2年のITの新規導入あるいはアップグレード・リプレースなどで関心のあるもの[店舗関連]

 すでに定着していると言っても過言ではないフルセルフレジ・セミセルフレジだが、各社はさらにレジ業務の無人化を視野に入れた運用の最適化を模索していることが読み取れる。

 また、万引き防止システムの導入の検討が15位から4位に浮上している点にも注目したい。フルセルフレジやセミセルフレジ周りには通常、従業員が配置されているが、顧客対応などを理由に目を離したすきに万引きが起きやすい。本設問を通じて、効率化や省人化の進展に伴うリスクに対応する必要性がより明確になった。

 マーチャンダイジング・販促関連(図表❸-2)では「顧客情報/販売情報分析・活用システム」(62.5%)がほかの項目を引き離し、4年連続の1位となった。

 2位には前回3位であった「品揃え計画・商品計画システム」(45.8%)、続いて「スペース(棚割)最適化システム」(37.5%)と「価格(マークダウン)最適化システム」(37.5%)が3位となった。

図表❸-2 [マーチャンダイジング/販促関連]

 このように、情報の分析と活用が引き続きトップになっていることから自社の顧客データをいかに活用していくかが今後の課題となっていることが窺える。

 基幹システムやサプライチェーン関連(図表❸-3)では「自動補充発注システム」(60%)が3年連続の1位となった。続いて「商品マスタデータ管理システム」(56%)が2位となり、「リアルタイム在庫管理システム」(48%)が3位となった。

図表❸-3 [基幹/サプライチェーン関連]

 近年、大手小売企業を中心に、商品の品質管理を維持しながら運用コストの削減を図るため、AIを活用した自動補充発注システムの導入が進んでいる。今後、こうした取り組みはさらに加速すると考えられる。

 その他(図表❸-4)については、2年連続で「情報セキュリティ対応」(72%)が1位となった。続いて「店舗・本部間の情報共有システム」(44%)が2位、前回6位だった「人事システム/eラーニングシステム」(36%)が3位となった。

 店舗内外においてDXを推進しているからこそ、情報セキュリティの保護を重要視していることがわかる。

図表❸-4 [その他]

III.システムへの投資、クラウドサービスの活用実態

業務効率化の動きがますます加速

 24年度の情報システム関連の年間支出額(図表❹)については、全体の約38.9%が「1.0%〜1.5%未満」と回答した。

図表❹今期の情報システム関連の年間支出額(経費支出、投資的支出を含む)の売上高比率

 また、今期の情報システム関連予算の前期比の伸び率(図表❺)は、前回より6.4ポイント(pt)増加の「横ばい」(36.4%)が引き続き1位となり、次いで「5.0%以上の増加」(22.7%)、「10.0%以上の増加」(13.6%)、「2.5%未満の増加」(9.1%)となり、前回とほぼ同様の結果となった。

図表❺今期の情報システム関連予算の伸び率(前期比)

 来期の情報システム関連予算の伸び率の見込み(図表❻)は、前回3位であった「横ばい」(36.4%)が15pt以上増加し、1位となった。続いて「10.0%以上の増加」(31.8%)が2位、「2.5%未満の増加」(13.6%)が3位となった。

図表❻来期の情報システム関連予算伸び率(今期との比較)

 為替の変動や原材料費の高騰など、先行きが不透明な状況が続くなか、小売業を取り巻く環境は依然として厳しい。こうしたなかで、適切な情報の収集および活用を行うシステムへの投資は、顧客満足度の向上と業務の効率化を図る上で不可欠となっている。

 実際、多くの企業が来期の情報関連システムの予算を増やしていることからも、今後も情報システムへの投資が拡大し、デジタルシフトの流れはさらに加速すると考えられる。

 直近1年以内に導入したシステムのうち、成果を挙げたものはどのようなシステムで、具体的な成果はどのようなものだったのか(図表❼)について、自由記述での回答を求めた。とくに多く見られたのはセルフレジおよびフルセルフレジやPOSシステムの刷新により、決済業務やレジ部門の労働時間が削減できたという意見だ。

図表❼この1年の間に導入した情報システムのうち成果を挙げたものとその導入成果

 次いで、自動発注システムや電子棚札の導入によって店舗の業務効率改善、人時の削減成果があったという意見も見受けられた。そのほか、社員のAI利活用の浸透推進、店舗間情報共有システムの導入による情報の一元化、不正監視システム導入による不正の未然防止などが挙げられた。

 クラウドサービスの利用状況について(図表❽)は前回に引き続き「基幹システムをクラウド上で運営」(33.3%)が1位となった。次いで「そのほかのシステムのみクラウド上で運営」(29.2%)が2位、「ECサイトをクラウド上で運営」(16.7%)が3位となった。

図表❽クラウドサービスの利用状況

 他方、「クラウドサービスは使っていない(利用予定なし)」(8.3%)という企業は前回に比べ約8pt以上増加している。

 運用管理の負担軽減やセキュリティ対策として基幹システムをすべてクラウドで運営するという企業も増加する一方で、利用を見送る企業も前回に比べ増えている。ここから企業のクラウド活用に対する姿勢が二極化していることが明らかになった。

IV.リテールメディアの取り組み内容、事例と成果

リテールメディアは28%の企業が導入

 現在リテールメディアに取り組んでいるか(図表❾)について聞いたところ、「いいえ」(52%)が約半数を占めた。続いて「はい」(28%)が2位で、「実証段階中」と合わせると32%となった。残りが「開始予定」(8%)と「検討中」(8%)が同率で3位に並んだ。

 データの利活用による効果的な販促施策の実施や顧客体験の向上など多くのメリットが明示される反面、初期コストなどが導入のハードルになっていると推測できる。

図表❾リテールメディアに取り組んでいるか

 上記設問に「取り組んでいる」と回答した企業を対象に、リテールメディアの具体的な取組事例と、成果について自由記述形式で回答を求めたところ、メーカーの販促企画を売場と連動するかたちで実施したことによって、売上が150%伸長したという報告が見られた。

 また自社アプリでの広告掲載や、購買データを活用した外部メディアへの広告配信によって収益を得たという回答もあった。

 リテールメディアで成果を出すためにはメーカーとの連携が不可欠である。両者が密接に連携を取れば購買促進効果が期待できることを示している。

V.DXの取り組み内容、成果、人員体制

企業や社員、顧客の価値創造をめざす

 現在DXに取り組んでいるか(図表10)について質問したところ、「取り組んでいる」(75%)という回答が7割以上を占めた。「検討中」(16%)が2位となり、9割以上の小売業においてDXの取り組みや検討が行われていることが明らかになった。

図表10デジタル・トランスフォーメーション(DX)に取り組んでいるか ※

 その目的や主眼についての設問(図表11)には、「業務や作業の効率化」「店舗運営の最適化」「生産性向上」といった回答が多く寄せられた。加えて、「従業員と顧客のエンゲージメント強化」「顧客体験・従業員体験の向上」「顧客接点の強化」「顧客満足度の向上」といった要素も重視されている。

 これらの結果から、DXは業務の効率化と付加価値の向上という2つの側面で、企業の取り組みを支えていることがわかる。

図表11自社のDXの目的・主眼

 DXに取り組んでいる分野(図表12)については3年連続で「業務効率化による生産性向上」(100%)が1位となり、前回より4.8pt増加した。続いて「既存店舗・サービスの価値向上」(52.4%)が2位、「顧客接点の改革」(47.6%)が3位となった。

図表12自社のDXの取り組み分野

 また、DXの取り組みでとくに成果を挙げている事例(図表13)について自由記述で回答を求めたところ、AI 活用による業務効率化が進んでいることが判明した。具体的には、手書き書類のデータ化を可能にする「AI-OCR」、品切れ削減や発注時間短縮を実現する「AI需要予測型自動発注システム」、業務支援を強化する「AIアシスタント」の導入が成果を挙げている。

 これらの事例から、AIがより身近な存在となり、日常業務でだれもが活用できるレベルまで普及し始めていることが窺える。

図表13DXの取り組みでとくに成果を挙げているものと成果

 DXを主に推進する部署(図表14)は22年から引き続き「情報システム部門」(77.3%)が1位となっている。次いで「経営企画部門」(27.3%)、「DX専門部署」(27.3%)が同率2位、「マーケティング部門」(22.7%)が4位となった。

図表14DXを主に推進する部署

 DXを推進する組織の人材の考え方(図表15-1)については「自社の社員による内製化で推進する」(72.7%)が引き続き7割以上を占めている。

図表15-1 DXを推進する組織の人材の考え方図表15-2 「内製化」および外部委託をする理由

 DX推進組織の人員数(図表16)は「6〜10人」(35%)が1位、「1人〜5人」(20%)と「21〜50人」(20%)が同率2位となった。また、21〜50人という回答は前回よりも伸長しており、専門組織の設置や専門人材が着実に増え、当該部署の規模が今後も拡大していくことが予想される。

図表16DX推進組織の人員数

 今後3年以内のDX推進組織の人員数(図表17)については、「6〜10人」(25%)が1位、「11〜20人」(20%)が2位、「1〜5人」(15%)、「21〜50人」(15%)、「51〜100人」(15%)が同率3位となった。100人規模を目標とする回答は前回に比べ10pt以上増加していることから、人材育成が急速に進められていることがわかる。

図表17今後3年以内のDX推進組織の人員数

 

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著者:ダイヤモンド・リテイルメディア

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