国内外で出店拡大へ! ヘアカット専門店「QB HOUSE」の”基本戦略”とは?
DCSオンライン6/10(火)20:00
10分カット専門店「QB HOUSE」を展開するキュービーネットホールディングス(東京都/北野泰男社長 以下、キュービーネットHD)。1996年に東京・神田で第1号店をオープンしたが、現在では国内外に700店舗以上を展開し、店舗数では国内最大のヘアカット専門店となった。今期(25年6月期)は、人材採用や店舗のDX(デジタルトランスフォーメーション)や出店のための先行投資の影響により、2期連続の減益となる見通しだが、今後は国内外でさらに事業を拡大する計画だ。その戦略の全貌とは。

25年2月に値上げを実施も失客なし
キュービーネットHDの24年6月期の売上収益(売上高に相当)は247億円。25年3月末時点で、ヘアカット専門店「QB HOUSE」554店をはじめ、カットに加えてスタイリングのサービスも提供する「QB PREMIUM」7店、女性や若い男性を主力客層に据えたヘアカットサロンの「FaSS(ファス)」11店を展開している。国内店舗数は計572店と、国内首位の店舗数を誇るヘアカット専門店チェーンだ。店舗のほか、介護施設や病院にサロンカーで訪問する「QBハウス訪問理美容」サービスも提供する。
24年度(23年7月〜24年6月)の来店者数は1680万人に上った。「ヘアカット専門店利用者の32%が当社店舗に来店している計算」と広報担当者は話す。
QB HOUSE業態では、2月1日からカット料金を1350円(以下税込)から1400円に値上げした。それに伴い、これまで65歳以上に限定していた「ツキイチ割引」(前回の利用日から翌月末までに来店すると100円割引)の対象を全年齢に拡大した。この施策により、価格改定を行った25年2月〜3月の既存店来客数は前年同月比2.4%増で推移し、値上げによる影響は限定的だった。
首都圏を中心に駅ナカや商業施設に出店
国内は首都圏を中心に出店しており、関東エリアだけで店舗数の約6割を占める。QB HOUSEは料金1400円、カット時間は10分とコストパフォーマンス・タイムパフォーマンスを意識したビジネスであるため、人口減少エリアを避け、人口が多い主要都市を中心に展開することを基本戦略とする。この戦略に基づき、実際に東北では山形県や秋田県、関東では栃木県には出店していない。今では熊本市を除くすべての政令都市に出店している。

立地は人流が多い駅構内や商業施設。現状は店舗の約63%がショッピングセンター(SC)をはじめとする商業施設に出店、約25%の店舗が駅ナカに出店している。とりわけ最近は食品スーパーを中核とした地域密着型の商業施設に多く出店している。
キュービーネットHDでは、ドミナント(地域集中)展開を基本方針としている。「3km圏内に1店が目安。自社競合する可能性はあるが、地域で知名度が高まり広告宣伝費をかけずに済む」と広報担当者は話す。大都市圏を中心に、競合他社が出店する余地がないほどドミナント戦略を進めることで、さらなるシェア拡大を図る構えだ。
店舗の運営体制は、各店舗に店長が1人、1店当たりの在籍人数は5人前後で、常時3人ほどが勤務するようにシフトを組む。カットブースは各店3〜4席あるので、その数により従業員の人数が変動する。店長の上役として3〜4店を管理するエリアマネジャー、その上に30〜40店を統括するブロックマネジャーを配置している。
QB HOUSEだけでなく複数ブランドを開発
主力のQB HOUSEに加え、11年には主に女性をターゲットに据えたFaSSをスタートした。「ブランディング調査の際、10分1000円(当時のQB HOUSEの料金)では仕上がりへの不安を感じるという声があった。また外出時のスタイリングに対する要望も多く、20分2000円(現在は2600円)の女性向けヘアカット専門店というコンセプトが固まった」と広報担当者は話す。
現在は東京都内を中心に11店を展開し、駅ビルの「アトレ」や「マルイ」といった女性客が多い場所への出店が目立ち、男性と異なり女性のヘアカット・スタイリングには時間がかかるため、立地を見極めないと安定的な経営は難しく、これまでは慎重な店舗展開を進めてきた。
しかし、25年5月の「田無アスタ店」(東京都西東京市)を皮切りに、試験的な意味合いを兼ねてFaSSの郊外における大規模商業施設への出店も開始している。

”省時間”という価値は踏襲しながらも、簡単なヘアスタイリングの依頼やセルフスタイリングもできるのがQB PREMIUMだ。順番を知らせる待合システム、充電スポット、Wi-Fiなどを備えた待合スペースを完備している。料金は2000円で、20年に初出店以降、現在は7店を展開している。店内の自動受付機に加え、専用アプリからの予約も可能で、順番が近づくとメールで通知される。クレジットカードを事前に登録すれば、店舗での精算も不要だ。
QB PREMIUMは郊外出店を進めるFaSSとは対照的に、都心部を中心に出店を進める。25年6月末には「Echika fit銀座店」(東京都中央区)の出店を予定しており、「東京交通会館店」(東京都千代田区)、「大手町メトロピア店」(同)とあわせてドミナントを深耕する。将来的には、QB PREMIUM をQB HOUSEのスタンダードな形態にするとともに、まずは5年後に50店をめざす。

また、25年2月に発表した新設の株主優待制度では国内のQB HOUSEの無料ヘアカット券を進呈する。今後は長期保有者に対しての追加優待も検討している。サービス利用者を株主として取り込み、”QBファン”としての関係性を深めることをねらいとしており、これまでの機関投資家中心から、個人投資家にもアプローチを図る。
5年間で100億円増、海外出店も拡大
過去10年の業績を振り返ると、コロナ前は営業利益率が売上対比で8〜9%の水準を維持していたが、コロナ禍に業績が大きく落ち込んだ。コロナ明けの23年6月期には価格改定により、一時的に営業利益率が回復したものの、25年6月期はDXへの投資や国内出店の加速、海外拠点の設立による先行投資がかさみ、減益となる見通しだ。今後はDXによる効率化などを通じて、営業利益率を10%まで引き上げたい考えだ。
今期から5カ年の中期経営計画をスタートした。最終年度となる29年6月期には、連結で売上収益355億円、営業利益34億円に拡大する目標を掲げた。国内事業では国内の店舗体制を現状の約1.3倍の716店とする目標を掲げ、年間来店客数2000万人をめざす。海外事業も100億円規模の主幹事業に育てたい考えだ。
国内では現時点で首都圏(1都3県)に300店以上を展開している。すでに出店している都道府県においても、既存店に加えて800店以上の出店余地があるとみている。内訳は重要出店エリアである北海道(札幌)、東北(仙台)、関東(東京・神奈川・埼玉・千葉)、東海(愛知)、関西(大阪・兵庫・京都)、中四国(広島・岡山・香川)、九州(福岡)で500店、それ以外の出店エリアで300店としている。

国内事業では29年6月期に店舗売上高268億円の達成をめざす。並行して人材の採用、育成体制の強化にも注力する。コロナ禍では駅ナカ立地で打撃を受け、この3年間は店舗の統廃合を進めてきたが、今期からは新規出店を再開した。
DX戦略としては、待ち時間の短縮と接客の質向上を目的とした新たなモバイルアプリを現在開発中だ。前回来店時の履歴や施術内容の「見える化」により、よりパーソナライズされたサービスを実現する。来期から一部店舗で試験導入し、順次全国に広げていく計画だ。
海外事業は02年からスタート。05年に進出した香港では現在60店を展開しており、シンガポール、香港、台湾、米国、カナダ、ベトナム、マレーシアの7カ国・地域で計134店舗を展開している(25年5月末時点)。
24年8月にはカナダに進出し、25年7月上旬には2号店の出店を予定。中期経営計画でも「海外事業の強化」を掲げており、ベトナムでは25年1月にホーチミンのイオンモール・タンフーセラドンに1号店を出店。5月にはマレーシアのジョホールバルに1号店を開いた。台湾は来期から台南や高雄にも展開エリアを広げる。米国ではニューヨークに6店舗を構え、今後は同市内で多店化し、ドミナントを形成することで他都市への進出を図る。
同社は、事業の原資となるスタッフの採用・育成および社内の制度改革を強化することで離職率を下げ、国内では新規出店の加速と価格改定による安定成長を図り、海外では新規国への進出と既存国での事業拡大に取り組む。これらを両軸に、売上高の増加と利益の回復をめざす。
著者:ダイヤモンド・リテイルメディア











