オーディオメーカーのSonosから、初のヘッドフォンが発表された。Sonosは、海外で非常に普及しているスマートスピーカー。家中のスピーカーを連携させて、パソコンやスマホから鳴らしたり、テレビのサウンドバーとして活用できたりする。そのSonosが新たに発表したヘッドフォン『Sonos Ace』を、筆者が「絶対に欲しい!」という理由とは? Sonos Aceはブラックとソフトホワイトの2色展開。2024年6月5日から全世界で販売。日本では、ヨドバシカメラ、ビックカメラの実店舗とオンライン店舗、Amazon.com、楽天市場にて6月7日から順次先行予約の受付を開始、2024年6月末より全国販売を開始するという。価格は7万4800円。

Sonos Ace
https://www.sonos.com/ja-jp/shop/sonos-ace

テレビに繋いだSonosのサウンドバーの音を、ヘッドフォンで

本製品の細かいスペックの話は後回しにして、筆者がこの製品を欲しいと思う理由をご説明しよう。

筆者は、自宅のテレビの音を大きい音で聞きたいと思うことが時折ある。筆者が好きなF1や、MotoGP、海外ラグビーなどの中継は深夜に行われることが多い。

しかし、筆者の自宅は集合住宅なので、隣近所への遠慮もあって、小さな音で聞くことしかできない。

思えば、映画や音楽の音もずいぶん遠慮して聞いている。

実は、もともとあまりテレビは見ない方だったのだが、最近、オンラインのコンテンツを視聴できるようになって、筆者のようなマイナーな趣味(モータースポーツや、ラグビーなど)が好きな人間も、テレビを(地上波は依然あまり見ないが)見られるようになった。

これまでは、いい音はオーディオに必要だったが、近年急にテレビにいい音が必要になっているのだ。

Sonos Aceがあれば、テレビの音を、良い音で、しかも、自分だけ聞ける。

もっと、簡単にテレビの音をヘッドフォンで楽しめるようになっていいと思う

実は、テレビの音をヘッドフォンで聞きたいというニーズは大きいと思っている。

お年寄りが耳が遠くなってテレビのボリュームを大音量にしているのはよくある話だし、若者が自分の見たい番組を大きな音で聞いて「近所迷惑です!」と親に怒られるのもよくある話だ。

最近は、Bluetoothに対応したテレビも増えているし、トランスミッターを使う手もあるとは思うのだが、インターフェイスとしてあまり便利に使えるようになっていないように思う。家庭のテレビを便利にヘッドフォンで楽しんでいる……という人はどれぐらいいるのだろうか?

実際、家庭のもめ事で、他の家族の「テレビの音がうるさい、邪魔」というのは、かなり大きな割合を占めるのではないだろうか? 少なくとも筆者の経験上は、わりと大きな割合を占めているように思う。

もちろん、そのもめ事を解消するのに、7万4800円のヘッドフォンを購入するというのも少し違う気もするが、このヘッドフォンをすることで、家族に迷惑をかけずに、高音質で大きな音で映画や音楽、レースなどを楽しめるようになるというのは、非常に意義が大きいように思う。

Sonosのサウンドバーユーザーなら必携なのだが

とはいえ、この記事のタイトルに「筆者が」と書いたのは、このヘッドフォンをテレビと連携させて使うためには、Sonosのサウンドシステムが家庭に導入されている、少なくともサウンドバーがテレビに組み合わせられている必要がある。欧米と違って、そんなご家庭は、日本ではまだまだ多くはないだろう。

筆者は、テレビに初期型のBeamを付けSubと組み合わせ、書斎にはOneをステレオペアで使っている。

書斎で聞いていた曲の続きをリビングで聞いたりできるし、テレビの音響もBeamとSubなので良好だ。それを、家族やご近所に迷惑をかけたくない時に、瞬時にヘッドフォンで聞くようにできるというのはこの上なく便利なシステムだと思うのだ。

ただ、これをSonosのサウンドバーを使っていない人に勧めるのはちょっと難しいかなとも思う。音質が良いのは確かだが、これはやはりSonosのサウンドバーと一緒に使ってこそ価値がある。強いて言えば、「Sonosのサウンドバーも一緒に買うべき!」という勧め方はあるかもしれないが、お値段としてはかなり大きな金額になる。

都内某所の個人宅で発表前の体験会

自分が気になった利用シーンの話を延々としてしまったが、このSonos Aceという商品の話をしておこう。

今回、筆者は、製品発表前に開催された、都内某所の個人宅での体験会にお招きいただいた。

都内とは思えない巨大な立派なお宅だったが、オーディオ機器は、イベント会場やオフィスの会議室で聞くと、全然違うように聞こえるものなので、この発表会のセッティングはありがたい(とはいえ、筆者の安普請な狭小住宅とは音の響きはだいぶ違いそうだが)。

会場にはSonos本社からプロダクト・マーケティング・マネージャーのDane Estes氏、シニア・インダストリアル・デザイナーのSam Prentice氏、特任プロダクト・マネージャーのScott Fink氏が来日、詳細を解説してくれた。

ボタンひとつでSonosサウンドをヘッドフォンに

体験としては実にSonosらしい音質。Era 300や、同社のサウンドバーから聞く音と似た、低音から高音までバランスの取れた音を実現している。実際に体験会の会場では、Sonos Arc(サウンドバー)と、Sub、Era 300を組み合わせた音響空間だったが、スイッチひとつでそれをヘッドフォンの中に取り込めるような感覚が得られた。

特に、Sonosのオーディオで特徴的な、歌い手の息遣いまで聞こえる感覚、歯擦音や、息を吸い込む音をハッキリと再現する能力は、目をつぶるとボーカルが目の前にいるように感じさせてくれる。

もちろん、φ40mmもあるドライバーなので、重低音の迫力も充分。

空間オーディオ、ノイズキャンセリング対応

ヘッドトラッキング可能で、Dolby Atmosの空間オーディオに対応しているので、前後左右から音が聞こえてくる感覚を味わえるし、頭を動かしても音は定位したままだ。Sonosのサウンドバーと連携させると、そのスピーカーを正面として音が聞えるので、テレビで映像コンテンツを再生すると、ちゃんとテレビの方向を正面としたサウンドが聞こえてくる。

7.1.4chに対応しているので、上下方向の広がりもある包み込むようなオーディオ環境を実現してくれる。

ノイズキャンセリングもかなり強力に思えた。が、試用した空間は、そもそも静かだったので、街中や、電車の中などで、どのぐらいの効果があるのは実際に使ってみないとわからない感じ。

ロスレスオーディオにも対応しており、Qualcomm Snapdragon Sound AptX LosslessとApple Lossless Audio Codecに対応しているとのこと。

驚くほどの使いやすさと快適性

正直なところをいえば、高級ヘッドフォンの経験が多くないので、会場で流れた曲を聴いただけで音質をとやかく言えるワケではない。こちらは後日お借りできた時に、もうちょっと説明できたらと思う。

しかし、日常的に家で使ってる、Sonosのサウンドを、ボタンひとつでヘッドフォンに閉じこめられるというのは素晴らしく便利に思える。考えてみれば、普段音楽をスピーカーから流す時もとても遠慮したボリュームで聞いているし、テレビのボリュームもしかり。

会話の音量が小さくて、爆発音などの効果音が大きい傾向のある映画などでは、自宅のテレビで見る時は、非常に気を遣って、アクションシーンはボリュームを下げて、会話シーンでは上げたりしている。このSonos Aceがあれば、そういう映画も、自宅で爆音で聞けることになる。これはとても欲しい。

妻が料理をしていたり、掃除をしていたりする時に、テレビで会話のシーンがあると、これもボリュームを大きく上げなければならなかったのだが、こういったシーンでもSonos Aceを装着するだけでいい。

これは、私の日常においては、非常に魅力的なヘッドセットだ。

サウンドバーを持ってない人には、サウンドバーごとお勧め!?

ただ、Sonosのサウンドバーを持っていない人への勧め方は難しい。高音質なヘッドセットというだけでは、他にもライバルがあるし、7万4800円という値段のハードルを越えるのは難しいだろう。

USの価格は449ドル、欧州でも499ユーロということなので、ここでも円安の影響は大きいということは確か。

ただ、従来のSonosのオーディオは、集合住宅が多く、家の密度が高い日本家屋には向いていないが、この製品は日本にこそ向いていると思う。

いっそのこと、Sonos Ray(一番小さなサウンドバーで、現在の価格は3万9800円)と一緒に買うというのもありかもしれない。小さいボリュームで流す時にはRayを使って、大音響で聞きたい時はAceを使う。これなら、一人暮らしの超狭い部屋で、隣の部屋との壁が薄くてもゴージャスな音響を楽しめる。一般のご家庭だとRayではちょっと小さいので、Sonos Beam(Gen 2)(6万4800円)と組み合わせればいい。

合計金額はちょっと大きくなるが、やはりSonos Aceはサウンドバーと組み合わせてこそ価値があるから、単体で使うよりはセットで購入する方をお勧めしたい。

プレゼンテーションにおいても、屋外で移動しながらというシーンはあまり登場しなかった。日本のユーザーは満員電車の中で音楽を聞いたり……というシーンが多いと思うのだが、Sonos提供の画像には、鉄道に乗ってるシーンはないし、街角のシーンも少ない。とりあえずは、近日中に試用機をお借りできるようなので、そのあたりは試用機で試してみたい。

※サウンドバーは発売当初はArcのみの対応。他の機種は順次とのこと。筆者の古い初期型Beamにも対応するかどうか、聞いてみたのだが「おそらく近い将来に対応する」とのこと。

(村上タクタ)

 

 

著者:村上タクタ