皆さんは「愛の血液助け合い運動」月間というものを聞いたことがありますか?
厚生労働省では、都道府県、日本赤十字社と協力して、日本の血液事業を安定的・継続的に維持し、血液製剤の国内自給を確保するため、毎年7月に「愛の血液助け合い運動」月間を実施しています。
献血経験がなくて怖いと感じている方、自分には全く関係ないと思っている方にも、ぜひお読みいただければと思います。

献血が必要なわけ

献血によって提供された血液は、病気の治療や手術などで輸血や血漿分画製剤を必要としている患者さんのために使用されます。
「輸血」というのは、赤血球、血小板などの機能が低下したり、量が減少したりしたときに補充する治療法のことで、「血漿分画製剤」は、血漿(血液に含まれる、赤血球などの血球成分を除いた成分)中に含まれる血液凝固因子、免疫グロブリン、アルブミンなどのたんぱく質を抽出・精製したものです。

成人の血液量は、体重の約8%であり、体重60㎏の人であれば約4.6㎏(約4,800ml)です。
外傷などにより出血がある場合、血液の20〜25%程度である約1ℓを失うと、生命に危険が及びます。
また、白血病や再生不良性貧血などの血液疾患やがんなどにより、体内で赤血球や血小板を作れなくなるなどの状態も、生命に影響を及ぼします。
これらの治療には輸血が重要であり、そのためにも献血が必要です。
さらに、献血で得た血液製剤はその種類ごとに有効期限があり、短いものだと採血後4日で使用できなくなります。つまり、常に献血による血液の提供が求められるということです。

献血の現状

日々求められる献血ですが、献血者の現状を見ると、大きな課題があります。
グラフによると、献血者数は、令和1年度から令和5年度の間に目立った変化はなく、安定しているように見えます。
しかし、献血者の年齢を見ると、50〜59歳や60〜69歳の献血者数は増加傾向にあるのに対し、16〜49歳は減少傾向にあります。

日本は高齢化が進んでおり、2023年の高齢者人口の割合は、29.1%と過去最高でした。
献血ができるのは、69歳までであり、現在多くの献血者のいる年代が献血対象外になっていくため、日本の献血者数は今後減少していくことが予想されます。
これからは、49歳以下の年代の方による献血協力がさらに求められます。

献血にチャレンジしてみる

実際に献血がどのように進められるのか、体験したことのない方にとっては少し不安に思うこともあるかもしれません。
まず、献血には以下の4つの種類があります。
●全血採血:血液のすべての成分を採血
・400ml全血献血
・200ml全血献血
●成分採血:血液中の血小板や血漿だけを採血
・血小板成分献血
・血漿成分献血
さらに、それぞれ献血の基準が設けられており、年齢や体重、性別や貧血などの身体状態によって献血可否が決まります。
献血の種類によってかかる時間も異なり、全血献血で10〜15分、成分献血はその量に応じて40〜90分程度時間がかかります。


実際の献血の流れは以下の通りです。
① 受付
初めての方は、同意書などに記載する必要があります。
② 体重測定、質問への回答
適切な献血量の判断のための体重測定や、献血者の健康状態に関する質問に回答をします。
③ 問診、血圧・脈拍測定、体温測定
②で回答した内容をもとに医師による問診や、血圧等の測定をします。
④ ヘモグロビン濃度測定、血液型事前検査
献血をする前に事前採血にて感染症や貧血の検査を実施します。上記基準にならい、「血色素量」で貧血が見られないことは、献血者自身を守るために必要なので、場合によっては事前採血のみで献血を遠慮するよう伝えられることもあります。
⑤ 採血(献血)
ベッドなどに横になり、採血を開始します。献血用の針は通常の採血より太く、人によっては強い痛みを感じることがありますが、通常は時間とともに軽減します。
⑥ 休憩後、帰宅
献血が終了し、しっかりと水分補給をしたうえで一定時間体調を見ます。特に問題がなければそのまま帰宅可能です。
献血は、人の命をつなぐとても重要なものです。
街中で献血ルームを見つけて、自身の体調がよい際には、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
参考
総務省報道資料「統計トピックス No.138 統計からみた我が国の高齢者 −「敬老の日」にちなんで−」