あなたの周りにムダにやる気を下げてくる人物はいないだろうか? 経営・組織戦略コンサルタントの西野一輝氏は、こうしたやる気を下げてくる人物への対策を『モチベーション下げマンとの戦い方』(朝日新聞出版)として上梓した。今回のテーマは「悪質なカスタマーハラスメント」について。


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 カスタマーハラスメント(カスハラ)は以前から社会問題になっていましたが、コロナ禍以降、増加傾向にあるようです。

 取材したスーパー勤務のDさん。会計時に客から「購入した商品をすべて小分けで包装してくれ」と要求された経験があるといいます。さすがに断ったところ、その客は「店長を出せ」と怒りだす始末。

 別室に案内して説明をしたのですが「無理なはずはない」「姿勢がなっていない」と説教や文句を繰り返したといいます。

 ここまでならよくあるクレームとして慣れた出来事でしたが、

「ろくでもない親に違いない」
「ろくでもない会社」
「土下座しろ」

 と誹謗中傷を繰り返し、閉店時間になっても居座り続けたそうです。

 Dさんは、「メンタルが危うく壊れかけた。こうした場面の遭遇することがコロナ以降は増えている」と話してくれました。

 カスタマーハラスメント実態調査(株式会社エス・ピー・ネットワーク、2021年)によると、コロナ禍の影響でカスハラ被害が増えたという実感を持っている人は約2割。特にサービス業で働く人はここ2年間で8割増加していると感じているそうです(平均値)。

 在宅時間が長くなり活用機会が増えたネット注文の場面で大幅に増えているようで、注文プロセスで不満を抱いたときに値引きや無償化を理不尽に請求。それに応じないと、仕返し(ネットでの噂話、悪評の拡散)される。

 対面の接客でも「レジ袋やスプーンをおつけしますか」と聞いたところ「間抜け、当たり前だろ」と怒鳴り、カゴを投げつける……と一線を越えた悪質なクレームが増えているようです。

 私の知人も「コロナ禍になって精神的に追い詰められている人が増えているのか、理不尽なクレームが増えた」と嘆いていました。

 近年さらに増えているとすれば、自分もカスハラの被害に遭う可能性は高まっていると言えます。もし、被害に遭ってもダメージは最小にとどめたいもの。だとすれば、どのような対策を講じればいいのでしょうか?

 そもそもクレームは、双方の関係を盤石にするいい機会と言われてきました。ゆえにカスハラに遭っても何とか対応していい関係を構築すべきと考えがちです。

 ただ、一線を越えたクレームは、前向きに対応しても心を痛めるだけの可能性があります。誹謗中傷や嫌がらせを受けたら、作戦を変更し、一人で対応せずに上司や同僚とチームで対応する体制にするべきでしょう。

 相手も複数で対応されると怯み、勢いが削がれる可能性が高くなります。加えて、理不尽な攻撃に対しても、こちらの説明力が強化されて優位になります。

 何を要求されても「ご意見として承りました」にとどめ、要求は受けない。ただし、誠意ある姿勢を示し、相手の話を遮らないなどケアは重要。

 我慢比べかもしれません。

 こうしてカスハラを乗り越えたあと、対応した側も痛んだ心のケアが必要になります。自分一人でため込むことなく、周囲に共有して「大変だったね」とか「自分も同じようなカスハラに遭遇した」と話をすることでガス抜きになるはすです。

 そもそもカスハラが起こらないように会社が守ってくれる環境の整備が求められるべきなので、会社としての対策を考えてもらうように上司や経営陣に提言することも必要かもしれません。

 そんな職場を変えようとしない会社は生き残ることができないでしょう。

■西野一輝(にしの・かずき)/経営・組織戦略コンサルタント。大学卒業後、大手出版社に入社。ビジネス関連の編集・企画に関わる。現在は独立して事務所を設立。経営者、専門家など2000名以上に取材を行ってきた経験を生かして、人材育成や組織開発の支援を行っている