「コンビニ百里の道をゆく」は、52歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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「(社長が)現場を回っていると聞いてはいたけど、本当だったのですね!」

 リモートワークが定着してきたコロナ禍。私はというと、緊急事態宣言下では都内、明けたらそれ以外のエリアのお店に、と店舗に足を運ぶ機会が増えました。加盟店のみなさんが、私を見て驚かれることもたびたびです。感染拡大が落ち着いたら、もっと精力的にお店に行きたいです。

 この1年半、最も大きな不安を抱えていたのは「現場」の人たちです。コンビニエンスストアはリモートワークができる仕事ではありません。お店を開け、お客様をお迎えし、その生活を支えていく。であるならば、本社にいながら現場の状況を「わかってますよ」というほど、空虚な言葉はありません。私は以前から「現場がすべてだ」と言い続けてきました。「現場、現実、現物」がいちばん大事なんです。

 コロナ禍は100年に1度の危機。その危機に直面しているのは店舗です。そこで何が起きているか。お客様の生活様式や価値観が大きく変われば、何が求められるか。最大のパートナーであり、仲間である加盟店、クルー(店員)のみなさんがどういう思いで仕事をしているか。そこを知り、共有し、最前線である「現場を前に」話をしないことには、何も変えられません。

 だから私も、お店に行く。まずは「この売り場はこういう意図で工夫しているんだろうな」といった、「チャレンジしているところ」を探します。そこを通じて「こういう状況でもお店やお客様の生活を守ってくださってありがとう」と気持ちを伝えていく。そうすると、加盟店のみなさんも「本当に足を運んでくれて、理解しようと考えているんだな」と「腹落ち」し、お互いに意識が変わり、実際に現場も本部も変わっていく。

「現場こそ大事」。コロナ禍でいまいちど痛感し、再認識しています。

竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

※AERA 2021年9月27日号