新たな総理大臣の誕生に世界中の投資家が注目している。特に外国人投資家は河野太郎行革担当相に期待しているが、自民党総裁選で株価はどうなるのか。緊急座談会を実施した。参加してくれたのは、国内中堅証券会社で長年にわたって調査を担当するA氏、外資系証券会社で、海外機関投資家の注文をさばくセールストレーダー・B氏、国内証券会社で自社の資産を運用するディーラー・C氏、国内運用会社でアナリストとして活躍するD氏の4人。

【前編/河野太郎首相誕生で爆買い? 「投資家」が注目する総裁選】より続く

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──総裁選の結果次第で、日経平均はいくらに?

D:おそらく、誰が首相になっても当面、日経平均は上昇トレンドが続くでしょう。菅首相の退陣表明をきっかけに、自民党の支持率が急上昇していますからね。総選挙で与党が過半数を維持できる可能性が高まっているという点で、買い安心感が広がりやすい。

B:私は河野首相なら、3万4千円は超えてきてもおかしくないと見ています。今年2月の高値3万500円から8月の安値2万7千円の倍返しで。

C:大手証券会社からは年度内3万6千円予想のリポートも出てますね。

B:11月以降とされる行動制限の緩和次第では十分あり得ると思う。最近、外国人投資家には「11月以降の日本はどうなるんだ?」という質問ばかりされる。ワクチン接種率がアメリカを抜いたことから、行動制限を緩和したら日本は一気に経済が回復するんじゃないか?と期待している外国人が非常に多い。

C:この半年の調整期間中に国内上場企業は過去最高益を更新していますからね。日本株が出遅れていたことと、世界的な金融緩和が当面続くことを考えれば、私は5年で日経平均5万円もありえると見ています(笑)。

A:注目は総裁選投開票日の9月29日ですね。前日の28日が9月中間配当の権利付き最終日。通常、日経平均などの指数に連動するように運用するファンドは、配当を受け取ることを見越して権利付き最終日と前後して先物を買います。配当分を先に先物で買い付けることで、運用のロスを減らすんです。その買い付け規模は、日経平均先物で1300億円、TOPIX先物で6500億円程度。総裁選の結果が出るタイミングで先物主導の大幅上昇も期待できる。

──どんな銘柄が買われると予想する?

D:候補者全員が再生可能エネルギーを推進しているので、太陽光発電事業を展開するウエストホールディングス(HD)、再エネ発電所の設計・施工を行うテスHDやレノバなどはまだ上がりそう。

C:日本再生可能エネルギーインフラ投資法人などのインフラファンドは、かなり出遅れているから今後、本格的に物色されてもおかしくない。岸田文雄前政調会長か高市早苗前総務相が当選するようならば、脱原発期待で売られていた東京電力、関西電力などは買い戻されるでしょうね。

A:高市さんなら、気候変動や災害への対策投資が活発化するので、建設系銘柄やコマツなどの建機は買われるでしょう。ベビーシッターや家事支援サービスの税額控除に言及しているため、育児サービス最大手のJPHD、ベビーシッター派遣のポピンズHDなどもいい。女性活躍を強調している野田聖子幹事長代行の場合も、これらの銘柄は買われるでしょう。

携帯キャリアは“脱菅”で買い

B:人材系も強いでしょうね。岸田さんは高齢人材の活用に言及していて、河野さんは移民受け入れ派。外国人の活用などを考えるとパソナグループ、パーソルHD、IT人材に注力しているラクスなどはまだまだ上がるでしょう。あと、忘れてならないのはソフトバンクグループ。菅政権下での携帯料金引き下げが大手キャリアの収益力を低下させたので、“脱菅”でキャリアの買い戻しが進むと考えられます。なかでも、最も値動きが軽く、外国人投資家に人気なのが、ソフトバンクG。

A:あとは、リベンジ消費銘柄ですね。これは誰が首相になっても変わらないでしょうが、近畿日本ツーリスト(KNT−CTHD)、航空大手JALとANAHD、飲食チェーンなどは消費回復期待から一気に値を戻す可能性もある。野田首相なら大学卒業後に働いていた帝国ホテルに買いが入るかも(笑)。

──株高が続いて、証券会社も儲かる?

A:商いが急増しているので、当然、証券会社の手数料収入も急増しています。9月は冬のボーナスの査定時期なので、足元の相場好調を受けてボーナスは増えるでしょう。

C:来年4月の東証市場再編(1部・2部・マザーズ・ジャスダック市場をプライム・スタンダード・グロースの3市場に再編)を前に、頭を悩ませている上場経営者が多い点も証券会社にとっては追い風。経営者の持ち分が多すぎるなどの理由で、プライム市場に“残留”できない可能性のある1部上場企業が600社もあると言われているんです。そのため、市場外でオーナー社長の持ち分を売却するなどの資本政策が求められ、証券会社の仕事が増えている。その資本政策をきっかけにオーナー社長と直接的なつながりができて、節税対策商品などの売り上げも伸びているようです。

D:とりあえず、NY市場が好調なので、日本株が大崩れする心配がない、というのは好材料ですよね。私の親しい証券マンたちも、ナスレバ(米NASDAQ指数の2倍の値動きがある金融商品)を買ってかなりの利益をあげていますよ。

(ジャーナリスト・田茂井治)

※週刊朝日  2021年10月1日号より抜粋