漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「大豆田とわ子と三人の元夫」(フジテレビ系 火曜21:00〜)をウォッチした。



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 バツ3で子持ち(最初の夫の子)、住宅建設会社の社長・大豆田(おおまめだ)とわ子(松たか子)。別れた3人の夫たちは、それぞれ違う角度でめんどくさい。

 最初の夫・田中八作(松田龍平)はレストランのオーナーで、様子のいい男。しかしつかみどころがなく無駄にモテる。

 2番目の夫・佐藤鹿太郎(かたろう=角田晃広)はファッションカメラマンで人のいい男。だが器が小さい「ミスター小皿」。サービスで出されたオリーブだって、1個多く食べたねとチェックしている。

 3番目の夫・中村慎森(しんしん=岡田将生)は弁護士で顔のいい男。ただし「お土産っているかな?」「スポーツっている?」などと、隙あらばへ理屈を繰り出してくる。いかに顔がいいからって勘弁な。

 そんな面倒な男たちと、ちゃんと結婚したとわ子の律義さ、懐の深さ(ミズ深皿?)に脱帽。

 脚本の坂元裕二はこの「めんどくささ」を言語化する達人だ。例えば「このラーメンうまいね」ですむところを、ラーメンマニアは出汁(だし)の素材、スープの温度、麺や具材のたたずまいまで語り尽くす。

 坂元が描く登場人物も「この人めんどくさいね」では終わらない。なぜどこがめんどくさいのか、果たしてめんどくささとは何なのか。それはもうラーメン愛ならぬ「めんどくさい人間」愛。

 それが炸裂(さくれつ)するのは、たいてい食事会の場だ。「全員集合地獄の餃子パーティー」と銘打たれた第6話。同じく坂元脚本「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」でも、思い出したら泣きたくなるような地獄の芋煮会があった。

 若者たちがドロドロの本音を爆発させた芋煮会に比べ、元夫3人と彼らをめぐる女たちの餃子パーティーは、肝心のとわ子が不在。男たちの駄目なところが断罪されるもののわりと穏便に終わる。

 これですっかり油断した。爆弾はその後に仕掛けられていた。ドラマ終了間近にやっととわ子が登場。そこは病院。ふいに明かされるとわ子の大切な親友・かごめ(市川実日子)の死。けっこうなキーパーソンですよ。最初の夫・八作が密かにずっと思いを寄せていたかごめ。その突然の死。

 恐るべし、坂元裕二。平穏な日常に常に不穏を仕掛ける男。人生はめんどくさくて面白く、あれよあれよとあっけない。いつか地獄の餃子会を思い出してきっと泣く。

カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など

※週刊朝日  2021年6月4日号