TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は懐かしの「アルファミュージック」について。



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 音楽プロデューサーの松任谷正隆さんと田町で待ち合わせた。番組の取材で。かつてアルファレコードがあったあたり。

「この玄関のところで八千草薫さんがドラマの撮影をしていた。懐かしいな。収録の合間には裏手の運河を眺めたり」

 正隆さんは細野晴臣、林立夫、鈴木茂(キャラメル・ママ!)とユーミンの『ひこうき雲』のレコーディングに参加した。

 慶應の学生だった彼はつきあい始めたユーミンと田町駅反対側の三田キャンパスに自分が卒業できているかを見に行った。

「つきあったといっても、スタジオが終わって青山のユアーズでハンバーガーを頬張って、そのあと由実さんを京王線の明大前まで送ったり、それくらい(笑)。社長の村井(邦彦)さんがベンツで乗りつけると、いつかはあんなクルマに乗りたいなと思ったり。アルファって慶應閥で、(大学ジャズの)ライト(ミュージックソサイェティ)出身がたくさんいてね」

 アルファの連中は良家の子女の集まりで、ラジオ局にアウディで来たり、本好きでお洒落な若者たちが多かった。局に入ったばかりの僕もよく仲間に入れて貰った。

 そんな会社の社長だった村井さんの古稀を祝い、正隆さんが演出したのが『ALFA MUSIC LIVE』(2015年9月27、28日 Bunkamuraオーチャードホール)。荒井由実の名でユーミンが『中央フリーウェイ』を歌い、吉田美奈子『夢で逢えたら』、加橋かつみ『愛は突然に』、GAROの大野真澄『学生街の喫茶店』、赤い鳥『竹田の子守唄』を味わい、ブレッド&バター『あの頃のまま』から大団円のYMOに至るまで、安保闘争、ベトナム反戦など激動の69年に創設したアルファミュージックの歴史を音楽と当事者の語りでひもとく壮大な音絵巻だった。

 先日発売となったライブのBlu−rayを観て、「とんでもなく画期的で新しく、革命的な存在だった」とかつて秋元康さんが絶賛していたのを思い出した。

 決して見ることはできないだろうと思っていた生身のメロディと歓声。

「文化の継承っていうのかな、過去を繋いで次のものを作っていく。その連続性に自分はいるんです」と村井さんが語り、ライブ終盤でユーミンは客席にこう話しかけた。

「スタジオの待合室から見た景色。川が流れていてその上をモノレールが通って。海に近いのでその海の生ぬるいような、ちょっと淀んだ風が今もここに漂っているような気がします。自分のレコーディングが終わると次のアーティストたちの談笑とギターのチューニング音が混ざって聴こえて、それがこういう曲たちになったんだなって。(アルファのアーティストは)全員に共通するカラーがある。どこか街の明かりが見えるような、埃が舞っているのが見えるような。それがアルファだったのかもしれないし、あの時代だったのかもしれません」

 当時を振り返るユーミンのスピーチに続き、村井さんがYMOの細野さん、高橋幸宏さんが待つステージに登場、自身でラテン・ビートとジャズコードでアレンジした新しい『ライディーン』を演奏し、僕はどこまでも心地よく身を揺らした。

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞

※週刊朝日  2021年6月25日号