樹木希林さんは一律3千円と決めていた そもそもお香典って何?

樹木希林さんは一律3千円と決めていた そもそもお香典って何?

 年金暮らしになると、交際費は重くのしかかってくる。親戚づきあい、友だちづきあいなど、人間関係が広い人ほど、その負担は増え、悩ましい問題だ。

 女優の故・樹木希林さんは、相手が誰であっても、香典を一律3000円と決めていたという。大人の振る舞いについての指南書で定評がある作家の菅原圭さんが、自著『ほどよい“居場所”のつくりかた――60歳からの人づきあいの知恵』でも紹介した、樹木さんの姿勢に学ぶ、無理のない冠婚葬祭の付き合い方を紹介する。

*  *  *
 定年退職し、年金暮らしになったのだから、生活をスリムダウンしなくては。そう努めているつもりなのだが、なかなか減らせないのが交際費だ。この年代になると、身辺で亡くなる方が多くなり、その都度、少なからぬお金を包まなければならない。

 亡くなった方との関係性にもよるが、親戚筋だったら3万円ぐらい。友人関係でも1、2万円は包むのが普通だと、私は思い込んでいた。

 ちなみに、以前はこういう場合に包む金額は偶数は避けるという考え方があった。だが、最近はあまりこだわらなくなってきているそうで、1万円では少しさびしい、でも3万円ははずみすぎ、と思うなら、2万円もあり、となってきているようだ。
 
2、3年前など、1年に8回も葬儀に参列しなければならなかったこともあり、しょっちゅうお金を引き出しにATMに走っていた。そのうえ黒のスーツも新調した。これは当方の体形変化のため。自己管理を怠ると高くつく、という教訓を得たしだい。

 香典など、冠婚葬祭のつきあいはシニアになっても欠かせない。それに相応のお金がかかるのは、やむを得ないと諦めているのは私だけではないだろう。

 昨年、亡くなった樹木希林さんは「誰であっても香典は3000円」と決めていたと知って、目からウロコだった。もちろん、樹木さんはケチだったわけでも、貧乏だったわけでもない。

 樹木さんは不動産が好きで、若い頃から“物件を見るのが“趣味”だったそうだ。芸能界の仕事は浮き沈みが激しく、安定性を欠く。だから少しでも余裕ができたら“物件”を買い、賃貸収入を得、安定した生活基盤を築いておく、という考えもあったらしい。実際は、不安定どころか年齢を重ねるにつれ、樹木さんならではの味が出てきて、折り紙付きの演技力と相まって、売れっ子中の売れっ子。CM出演も多く、芸能界でも指折りの豊かさだったと聞く。

 だから「香典は誰でも3000円」は出費を抑えるためでは毛頭なく、世間体を気にして、また、相手によって、金額の多寡に頭を悩ませることなんかバカバカしいと考えたからだったそうだ。

 香典は、本来は香奠と書く。「奠」とは、霊前にお香を手向けるかわりに金品をお供えするという意味で、大切なのは、あくまでも気持ち。金額の多寡は問わないとされている。また、葬式には多額のお金がかかる。そこで、かつては、まわりの者もお金を出して、喪家の負担を少しでも減らすことができれば、という意味合いもあった。したがって、無理して大枚を包む必要はなく、気持ちが込められていれば、それでいいと考えられていた。そんなルーツを思い出してみよう。

 長寿時代で、孫世代の結婚式に招かれることは珍しくない。その祝い金、ひ孫の誕生……と冠婚葬祭は老後も続く。その都度、「みなと同じ」にしようとすると、老後の薄くなった財布には厳しいと感じることも少なくないはずだ。「うちはうちなり」「私は私なり」のやり方があっていい。

 ある知り合いは、結婚祝いは若い頃の着物をほどいて小布にし、それらを新しく組み合わせてテーブルセンターなどにつくり直したものを贈ることに決めているという。昔から針仕事が大好きだった方で、85歳になった今も針目は驚くほどきれいに整っている。何よりも長い時間をかけてつくり上げた世界でただ一つのもの。込められた思いが違う。

 こうした例を参考に、まわりに振り回されず、自分なりのつきあいを続けていく方法を探ればいい。そうした姿勢は清々しく、周囲からもさわやかな共感を呼ぶはずだ。


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