感染拡大のスピードが増している新型コロナウイルス。しかし、危険な“感染症”はコロナだけではない。

「とくにこれからの季節はノロに注意を」と呼びかけるのは、微生物による食中毒に詳しい東京顕微鏡院名誉所長の伊藤武氏だ。食中毒や感染症の件数は今年、手洗いといった新型コロナの予防が功を奏し、軒並み減っている。それでも、ノロウイルスに警戒が必要だというのだ。

「理由の一つは、ノロの感染経路は飛沫と接触のほか、食品を介して起こる食中毒もあるためです」(伊藤氏)

 ノロは感染性胃腸炎の原因となるウイルスで、例年11月頃から感染者が急増する。感染すると半日〜2日後に激しい腹痛や下痢、嘔吐(おうと)などに見舞われ、脱水からショック状態に陥ることもある。

 ノロに汚染されやすい食品には二枚貝などがあり、生ガキも危ない。コロナ禍で自宅で食事をする機会が増え、「たまにはリッチに」と生食用のカキを生で食べるケースは要注意。「実はそれが危険」(同)だという。

「『生食用』とは、ある一定の基準を満たした海域で採取されたものをいい、ウイルスの有無は調べられていません。また、ウイルスはカキの腸管にいるので鮮度のよい殻付きのカキだから安全ともいえないのです」

 冬はカキがウイルスを持ちやすいことがわかっている。生食用でも、できれば加熱してカキフライなどで味わったほうがいい。中までしっかり火を通すことが大切だ。

 かつてパンでノロによる胃腸炎が起きたように、ウイルスが付いた手を介して食品が感染原因になることもある。せっけんによる丁寧な手洗いは、調理や食事の前などでも励行したい。

 ノロだけでなく、麻疹(はしか)や鳥インフルエンザもあなどれない。

 2019年の死者数が世界で20万人を超えた麻疹。WHO(世界保健機関)はワクチン接種を呼びかけるが、コロナ禍で思うように進んでいない。

「日本も他人事ではない」と危惧するのは、感染症に詳しいナビタスクリニック理事長で医師の久住英二氏だ。麻疹には唯一、ワクチンが有効だが、接種しない人が増えれば日本でも流行する可能性はあるためだ。

 麻疹は麻疹ウイルスがもたらす感染症。感染経路は接触や飛沫、空気感染で、感染力は非常に強い。免疫を持っていない人がウイルスを取り込むとほぼ100%発症する。致死率は0.1%と決して高くないが、体力や免疫力が低下した人だと肺炎などを起こし、重症化することもある。

「まれに感染して10年ぐらいしてから『亜急性硬化性全脳炎』という病気を発症することがあります。ウイルスが脳を侵し、死に至らしめる怖い病です」(久住氏)

 今年11月、香川県で高病原性の鳥インフルエンザが発生した。実は世界中で同じような現象が起こっているという。

「香川の鳥インフルは、現段階ではトリからトリへの感染のようですが、これが変異を起こしてトリからヒトへの感染を起こすようになり、ヒトからヒトへの感染に広がれば、豚由来であったような09年の新型インフルエンザの再来です」(同)

 ただ、インフルならワクチンもあるし、抗インフルエンザ薬もあるから安心──ともいえない。

「変異によっては従来のワクチンや治療薬が効かない可能性も」(同)

 ウイルスはコロナだけではない。それを肝に銘じておくべきだろう。(本誌・山内リカ)

※週刊朝日  2020年12月4日号