コロナ禍で実施された、今年の中学入試。いわゆる「御三家」と呼ばれる学校など、例年安定して志願者を集める難関校の多くで、今年は志願者が減少しました。その背景には、やはりコロナの影響があるようです。



*  *  *
■東京の男子御三家すべてで減少

 今年は首都圏全体で、多くの難関校の志願者が減少した。コロナ感染のリスクをできる限り避けようと併願校を絞り込んだ結果、合格の可能性が低いチャレンジ校への出願を取りやめた受験生が多かったもようだ。

 東京の最難関、男子御三家の志願者はいずれも昨年と比較して減少した。開成(荒川区)は1266人から1243人、武蔵(練馬区)は601人から584人と微減だが、麻布(港区)は1016人から881人と10%以上落ちこんだ。その理由をSAPIX教育情報センター本部長の広野雅明さんは次のように話す。

「多くの学校がオンラインでリアルタイムの学校説明会を開いたり、対面の説明会を行うなか、麻布はやりませんでした。「麻布学園Web説明会」として、受験生に向けて麻布らしい動画を流したのですが、学校の情報が伝わりにくかった」

 武蔵が微減にとどまったのは「オンラインをはじめ、各種の説明会を積極的に行ったことが奏功した」と、広野さんはみる。

一方、開成では、多くの志願者が試験を欠席するという例年にはない「珍現象」が起きた。願書は出しても実際には受験しないというのは、中学入試では珍しいことではない。ただ、最難関校である開成では、例年欠席者は100人にも満たない。それが今年は200人近くが欠席したという。

「開成には毎年、関西や九州など、地元の受験を終えた生徒が腕試しに試験を受けにやってくるのですが、今年はさすがにコロナの影響で取りやめた受験生が多かったようです。新型コロナの罹患者や濃厚接触者を対象に追試を設定した数少ない学校なので、とりあえず出願だけしたという受験生もいるようです」(広野さん)

 開成は現在、新校舎の工事が進んでおり、今年の9月からは新築のA棟で授業を行う予定。人気は上がりそうだ。

 女子の御三家は桜蔭(文京区)の志願者が昨年の555人から581人に増加。同校は難関化から敬遠されていたが、ここ数年はその反動で増加に転じている。女子学院(千代田区)は798人から723人に、雙葉(千代田区)は419人から385人に減少した。
 
■神奈川、千葉、埼玉でも難関校は志願者減

 神奈川では2大難関校の栄光学園(鎌倉市)が827人から811人に微減、聖光学院(横浜市)は1649人から1390人と、大幅に減少した。

「多くの学校は、9月以降、予約制で数組限定の学校説明会などを行ったのですが、聖光学院は在校生と教職員の安全を考え、文化祭、体育祭で外部の受験生を受け入れず、説明会も開きませんでした。受験生はやはり学校を訪れて、肌で校風を感じ、その学校のファンになります。学校を訪れたかどうかという差は、大きいと思います」(首都圏模試センター取締役教育研究所長・北一成さん)

 一方で女子の難関校フェリス女学院(横浜市)は405人から435人と増やしたものの、洗足学園(川崎市)は倍率が高くなったことから敬遠され、1935人から1726人と減らした。

 千葉御三家と言われる市川(市川市)、渋谷教育学園幕張(千葉市)、東邦大学付属東邦(習志野市)も志願者が減少した。特に最難関の渋谷教育学園幕張は、2888人から2380人と20%近く減らした。

「渋谷教育学園幕張は、首都圏における共学校の最難関校です。実力がついたかどうかを測る分水嶺になっており、例年遠方からも受験生が来ていました。今年はコロナ禍で遠方からの受験生たちはいなくなりましたが、地元の受験生は減っていません。見た目の志願者数が減っているだけで、難度が下がったわけではないといえるでしょう」(広野さん)

 埼玉のトップ校の栄東(さいたま市)は1万487人から1万240人に減少したものの、志願者は例年通りの1万人超え。浦和明の星女子(さいたま市)は2511人から2323人に減少。めきめきと実力を伸ばしてきた開智(さいたま市)と大宮開成(さいたま市)も、わずかながら減少した。

 安田教育研究所代表の安田理さんは、難関校の志願者減少について、次のように話している。

「中学入試に限らず、大学、高校入試でも同じような現象が起こっています。受験が全体的に安全志向になっており、日本の若者にチャレンジ精神がなくなっているようで、ちょっと心配です。今年はもちろんコロナの影響が大きいですが、“失敗を怖がる”心理が強くなっているので、来年も安全志向は続きそうです」

(文/柿崎明子)