コロナ禍で実施された、今年の中学入試。最難関校の志願者数が伸び悩む一方で、前年よりも志願者が増加したのが、上位校や中堅校です。開発が目覚ましい湾岸エリアの学校や、偏差値では測れない個性的な教育を行っている学校も注目されました。



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■湾岸エリアが伸長

 今、中学受験で最も勢いのあるエリアが、東京都の湾岸地区だ。江東区、中央区、品川区、墨田区にある学校が全般にわたって志願者数を伸ばしている。安田教育研究所の安田理さんは言う。

「臨海部は開発が進み、人口の流入により小学生が増えています。タワーマンションなどに住んでいる比較的裕福な家庭が多く、子どもの教育にも熱心です」

 注目は芝浦工業大学附属(江東区)だ。2017年に板橋区から現在の江東区豊洲に移転。元は男子校だったが、高校が先行して共学化し、今年4月から中学も共学になる。志願者は昨年の1420人から2038人と、約1.5倍に増加している。

「同校は数年前から入試を4教科から国算理の3教科に改革。さらに今年からは国・算に聴解(ヒアリング)問題を入れたり、「言語技術」を選択科目に入れたりと、意欲的な入試改革に踏み切っています。また共学化にあたって、世界に通用する女性研究者の育成をうたっています」(首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成さん)

 例年大勢の志願者を集めるかえつ有明(江東区)も2300人から2466人に伸長。安田学園(墨田区)、青稜(品川区)も増加した。2020年に小野学園から校名変更し共学化した品川翔英(品川区)は、立地の良さや、柴田哲彦校長の体制になってからの改革が広く認知されるようになり、今年540人の志願者を集めた。

 湾岸地区以外でも、共学化などの改革を行っている学校の志願者は多い傾向にある。

 村田女子高校から校名変更し、共学の中高一貫校になった広尾学園小石川(文京区)は初年度から志願者を3210人集めて関係者を驚かせた。

「同様に三田国際学園(世田谷区)、開智日本橋学園(中央区)など、共学化してグローバルやICTなど新しい教育を前面に打ち出した学校の人気が今年も続いています」(SAPIX教育情報センター本部長・広野雅明さん)

■自由な校風の学校が人気

 埼玉では、中堅校が伸びている。

「19年にさいたま市立大宮国際中等教育、今年は川口市立と、特徴のある公立中高一貫校が開校しています。それらの公立一貫校との併願先として選ばれることを狙って、適性検査型の入試を導入している西武学園文理(狭山市)、浦和実業学園(さいたま市)などが志願者を増やしています」(森上教育研究所代表の森上展安さん)

 安田教育研究所の調べによると、東京メトロ副都心線や有楽町線など、複数の路線が乗り入れている東武東上線上の城北埼玉(川越市)、大妻嵐山(嵐山町)、星野学園(川越市)、西武台新座(新座市)なども志願者を伸ばしている。

 ここ数年続いた男子校人気だが、世田谷学園(世田谷区)、巣鴨(豊島区)は難関化し敬遠された。一方、午後入試を新設した獨協(文京区)が注目され、963人から1858人と2倍近い志願者を集めた。午後入試だけで615人集めている。

「獨協は伝統のある学校で、教育内容もいい。アクセスがよく、医学部のある大学の系列校というメリットもあります。それほど偏差値は高くありませんが、午後入試が注目されたことで改めて同校の良さを認識した受験生や保護者も多かったようです」(広野さん)
                                                            
 今年は明星学園(三鷹市)が297人から375人、女子美術大学付属(杉並区)が796人から926人と、自由な校風の学校が志願者を増やした。

「両校は一定のファンがいて、受験率(出願者のうち実際に受験する人の割合)も手続き率(合格者のうち入学手続きする人の割合)も、極めて高い学校です。一方で『特進クラス』などのコース制のある学校が減らしています。偏差値や大学進学実績だけではなく、校風にも目を向けるなど、志望校の選択の幅が広がっているように感じます」(安田さん)

(文/柿崎明子)