「人生100年時代」の到来を目前に控えるいま、「老後2千万円問題」が注目され、老後破綻への不安が盛んに叫ばれている。こうした中、25年間、ひたすらほったらかしで月2万3千円を積み立てるだけで1500万円の資産がつくれる方法がある。その秘策とは?



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「老後のお金が気になるけれど、銀行に預けても増えないし、投資をするようなまとまったお金はないからどうしようもない、という声をよく耳にします。でも、皆さん、大きな勘違いをしています」

 こう話すのはファイナンシャルプランナーの山中伸枝さん。

 実際、銀行預金ではお金が増えないのは確か。しかし、手持ち資金がなくとも、始められる投資がある。それが投資信託(投信)による積み立て投資だ。

 月2万3千円を定期預金、投信のバランス型、積極型でそれぞれ25年積み立てた場合を想定しよう。

 金利0.02%の定期預金で積み立てた場合には、25年後の資産額は約690万円であるのに対して、投信で積み立てた場合は、バランス型(運用利回り3%)で約1026万円、積極型(同5%)になると約1370万円にまで資産額がアップする。この結果が示すとおり、将来の資産形成には、定期預金よりも投資信託のほうがはるかに有効だ。

 ただし、投資する際には、リスクへの注意が必要となる。ハイリスクの投資で大切な資産を減らしてしまっては元も子もないからだ。例えば、株式に一括投資すると、大きなリターンを期待できる一方で、損失を被って二度と復活できないこともある。

「その点、投資信託を月に1万円など、コツコツ積み立てていくのは、投資対象も時間も分散されます。いきなり2倍、3倍に増えることはありませんが、長い間に少しずつ増やしていくことが期待できます」(山中さん)

 さらに、投資信託で積み立て投資を行う場合には、まず「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を活用するのがオススメ。

 iDeCoは、自分年金をつくるために国が導入したお得な非課税制度。原則として20歳以上60歳未満の国民年金・厚生年金加入者ならば誰でも加入することができる。掛け金額は月々5千円から1千円単位で自由に設定することができる。ただし、原則60歳まで引き出しができないので、本当に老後資金以外には利用できない仕組みになっている。

 iDeCoの最大のメリットといえるのが、拠出・運用・受け取りの三つのタイミングで受けることのできる手厚い税制優遇だ。拠出時は、掛け金全額が所得控除の対象となり、その年の所得税の還付と翌年の住民税の負担軽減を受けることできる。

 所得と掛け金に応じた金額が還付され、会社員なら年末調整、自営業なら確定申告での手続きが必要となる。働き方や収入によって還付額は変わるが、年間数万円の節税になるなど、その効果は絶大だ。

 運用時は、運用益がすべて非課税となる。通常、投資信託などの金融商品で運用を行う際には、運用益に対して20.315%の税金が課されるが、iDeCoではいっさい税金がかからないため、運用益が出た場合、その分を元本に回せば、複利効果で資産を雪ダルマ式に増やしていくことも期待できる。

 受取時にも手厚い税制優遇が用意されている。iDeCoは、年金として分割で受け取る方法と、一時金として一括で受け取る方法、その両方を併用する方法の3パターンの方法を自由に選択することができる。年金で受け取る場合には公的年金等控除が、一括で受け取る場合には退職所得控除が、併用する場合はその両方が適用され、一定額まで非課税となる。特に退職所得控除の節税効果は大きく、iDeCoに30年間加入した場合、会社から受け取る退職金と合算して1500万円まで非課税となる。

先述のとおり、25年積み立てた際の資産額は、定期預金で約690万円、バランス型で約1026万円、積極型で約1370万円という結果だった。ここで、積み立て投資をiDeCoで行っていたとして、税金の還付分をプラスしてみよう。年収650万円の場合、月々2万3千円の積み立てで、年8万2800円の税金が還付される。25年分で207万円となる。これを25年後の運用額にそれぞれプラスすると、バランス型約1233万円、積極型約1577万円にまで達する。

 積極投資をすれば、25年で1500万円の資産形成も夢ではない。2千万円もあと少しで手が届くのだ。

 ちなみに、iDeCoの商品選びで間違えないでほしいポイントがある。投資信託は、投資対象によって、国内債券型、国内株式型、外国債券型、外国株式型、バランス型などに分類でき、それぞれリスク・リターンが異なる。

 特に投資ビギナーの場合、リスクを過度に怖がりすぎて、債券型を中心としたローリスク・ローリターンの組み合わせを選択するケースを見かける。しかし、iDeCoのような長期投資の場合、市場は上下動を繰り返しながらも右肩上がりに成長していくのがセオリー。そのため、株式型を中心とした組み合わせで、積極的にリターンを狙っていくのが正解。

 特に、運用期間を10年以上取ることのできる20〜40代は株式型100%の攻めの姿勢が望ましい。ただし、投資地域は分散させたほうが良い。先進国、新興国、国内と幅広い地域に分散投資することで、よりリスクを軽減させることができるのだ。これが積極型にあたる。

 一方で、50代以降は、これまで築いた老後資産を守っていくことも必要となる。そのため、株式型に債券型を織り交ぜたリスク軽減の運用がよいだろう。

 老後資金に不安を持つ人はいまからでも遅くはないので、一日でも早くiDeCoで投資信託の積み立て投資を始めるべきだ。制度改正によって、2022年5月からはiDeCoへの加入が65歳未満まで拡大される。年金の受給開始年齢にあたる65歳になるまで積み立てを続け、長い老後生活を安心して送れるだけの資産を自分の力で築き上げよう。(酒井富士子)

※週刊朝日  2021年3月12日号