甘いスイーツや菓子を思いっきり食べたいけど、砂糖が気がかり……。そんな人たちに朗報なのが「発酵あんこ」だ。砂糖を一切使わない食材で、血糖値を上げにくいスイーツになるという。鬱々とするコロナ禍で、少しでも甘く幸せな気分をかみしめたい。



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「体にいいことずくめ。健康食なので、ぜひ取り入れてほしい」

 発酵あんこ(発酵小豆)をこう絶賛し、“太鼓判”を押すのは、東京慈恵会医科大学付属病院栄養部の管理栄養士、赤石定典さんだ。

 小豆はもともと、体によいとされてきた食材。通常は、同じ量の砂糖と煮て「あんこ」となり、和菓子などに使われる。砂糖が多く入っていることから、食べるときに“罪悪感”がつきまとった。

 発酵あんこはその点、小豆に含まれるデンプンがこうじの酵素で変化して、自然な甘みを醸し出す。

「食物繊維が豊富で、血糖値の上昇を抑えてくれる。糖尿病の人も基本的に問題ありません」(赤石さん)というから、うれしい。砂糖をまったく使わない、まさに夢のスイーツなのだ。

 そんな発酵あんこに魅せられた一人、発酵生活研究家の栗生隆子さんに話を聞いた。

 栗生さんは、14歳のころから約20年間、原因不明の体調不良に苦しんだ。過敏性腸症候群のような感じで、頭痛や下痢、腹痛などをもよおし、下痢止めを飲むなどしていたという。「いくつも訪れた病院の検査では異常が出ず、路頭に迷っていました」

 ところが、小豆と玄米を炊いてつくる酵素玄米や、小豆とかぼちゃを煮た小豆かぼちゃなどを食べると体調が回復。「体から悪いものがすーっと流れ出た感覚」(栗生さん)をおぼえ、小豆の持つ“解毒作用”を実感したという。

 近年、食事で注目されるのが、食後の短時間に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」。動脈硬化や糖尿病、心筋梗塞や脳卒中、認知症につながりかねないからだ。

 炭水化物などが消化吸収されてブドウ糖となり、血液に入ったときの濃度が「血糖値」なのだが、「発酵あんこはつくるときに砂糖を使わないので、血糖値が上がりにくい」(赤石さん)。食後のデザートというよりも、前菜のようにして食べると効果的だという。

 小豆には、健康にいいとされるポリフェノールやたんぱく質、サポニン、イソフラボンなどが含まれている。

 たんぱく質の含有量では、小豆が100グラム当たり約20グラム。大豆の約33グラムに比べると少ないものの、「逆に、大豆よりも小豆はたくさん食べることができる」(同)点に注目したい。

 サポニンは、抗酸化作用があるとされ、悪玉コレステロールの蓄積を抑えたり、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞の予防につながる。豆類に多いイソフラボンはエストロゲン(女性ホルモン)と似た構造と働きがあり、閉経後の女性にとってエストロゲンの不足を補ってくれる。更年期障害や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を予防したり、肌の調子を整えたりするのを助けるという。

 そもそも、発酵あんこは発酵食品なので、腸内環境の改善にも一役買ってくれる。「腸内環境や血管、骨、フレイル(虚弱)の予防などにもいい」(同)となれば、まさに“最強”の健康食材だといえる。

 発酵あんこは、煮た小豆とこうじに水を加えて60度に保ち、8〜10時間くらい発酵させればできるそうだ。栗生さんに具体的な手順を教えてもらった。

 まずは、カップ1杯の小豆とその約5倍の水を鍋に入れ、5〜10分ほどゆでた後に10分ほど蒸らす。

 小豆の渋みを除くため最初だけ、ざるにあげてゆで汁を捨てる(ゆでこぼし)。小豆を再び、3カップの水で煮て、5〜10分したら1カップの冷水(びっくり水)を加える。これを2、3回繰り返す。吹きこぼれを抑え、水分を補うための作業だという。水分が少し残るように煮るのだが、「発酵にはやや軟らかめぐらいが向いています」と栗生さん。

■ゆでこぼし必須 水分が甘さ左右

 いよいよ発酵に移るが、使うのは電気炊飯器だ。こうじ菌は60度を超えると死滅するので、小豆は60度以下、できれば約40度まで冷ます。指で触って熱くない程度だ。

 こうじは生こうじでも、同量の水に浸した乾燥こうじでもいいそうだ。炊飯器にゆでた小豆とカップ1杯のこうじを入れ、その上に1センチくらいまで水を加える。

 炊飯器のふたは開けたままにして、「保温」のスイッチを入れる。ここでふたを閉めると、保温状態でも約70度まで上昇してしまうので注意したい。ほこりが入るのが気になる場合は、布巾などをかけておく。

 発酵に必要なのは8〜10時間ほど。最初は1時間おきに1度かき混ぜる作業を3回程度くり返す。混ざり合った小豆とこうじの水分量がとても重要で、仕上がりの甘さを左右する。「ひたひたよりちょっと多め」(栗生さん)になるように水を加えるのがコツだ。

 軟らかい小豆と、こうじの粒が混ざった感じになれば、ほぼ完了となる。このままでもいいが、栗生さんは「練るほうが好き」なので、ひと手間加えているという。

「そのうえで、プラスチックの食品保存容器などに移し、粗熱がとれたら冷蔵庫に保存します。数日で食べ切りますが、それ以上になる場合は冷凍庫に入れると1カ月程度、日持ちします」(同)

 もちろん最初から、上手に仕上がらないこともあるだろう。甘みが足りない場合は、発酵が不十分なので、「こうじを増やすといい」(同)そうだ。小豆をゆでる際、ゆでこぼしを忘れると、渋みが残ってしまうこともあるという。

 できあがった発酵あんこを使って“王道”のぜんざいにしたり、バターを添えた小倉トーストにしたり、丸めたあんこ玉にきな粉をかけて食べたりと楽しみ方はさまざまだ。ちなみに、栗生さんは「少しの塩だけで炊いたかぼちゃに発酵あんこを添え、一緒に食べるのもおすすめ」だそうだ。

 インターネットの通信販売サイトを見ると、手づくり用の材料を詰め合わせた発酵あんこセットや、瓶に詰めた発酵あんこなども販売されている。手軽に入手できるようになってきた。

 ちなみに、発酵あんこは病院食にこそぴったりな食材と言えそうだが、そう簡単ではないそうだ。衛生管理が絶対となる病院では、加熱した後に保温で65度にするため、こうじ菌が死滅してしまうのだという。

「砂糖の甘みに慣れている人に、発酵あんこの自然の甘みは物足りなく感じるかもしれません。けれども、自然の甘みに慣れてくると、体調を知るバロメーターになります」

 栗生さんは改めて強調する。

 甘くて健康にいいからといって、くれぐれも食べすぎにはご注意を。(本誌・浅井秀樹)

※週刊朝日  2021年5月21日号