身近な人の死は、いつかはみな経験する。亡くなった後の短い間にも、やるべきことは次々に押し寄せる。それはコロナ禍でも変わりない。感染のリスクを抑えながら、着実に手続きを進める必要がある。押さえるべきポイントを紹介しよう。

【前編/コロナで変わった「死後の手続き」 郵送OKでも対面が良いケースは?】より続く



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 死後の手続きには、死亡届や火葬許可申請書、年金受給権者死亡届などのほかにも期限が決まっているものがある。代表が、相続の手続きだ。

 相続人は、故人が残した資産のうち、借金が財産よりも多そうな場合は、相続に関するすべての権利や義務がなくなる「相続放棄」を選ぶことができる。

 相続放棄を選ぶ場合、亡くなってから3カ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要がある。プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ「限定承認」も、期限や申立先は同じだ。何もしないと、自動的に借金を含めた財産全部を引き継ぐ「単純承認」の扱いになる。

 ただし、この期限はコロナを理由に延長が認められている。

「延長したい場合は、家庭裁判所に申し立てをする必要があります。手続きは郵送でもOK。必要な書類や手続きの流れは最高裁のサイトで確認できます」(相続コーディネーターで相続支援事業「夢相続」の曽根恵子代表)

 故人が生前、事業を手がけていたり、給与のほかに20万円以上の雑所得があったりして確定申告していた場合は、死亡翌日から4カ月以内に税務署に「準確定申告」をする必要がある。これも延長が可能だ。

 死亡翌日から10カ月以内が期限の相続税の申告・納付も、同様に延長が認められる。

「必ずしも、コロナに感染したり、濃厚接触者として認定されたりしていなくても、体調不良や在宅勤務で外出を控えている、感染が怖いなど、コロナが理由であればよい。国税庁のサイトでダウンロードできる『災害による申告、納付等の期限延長申請書』を郵送や窓口で提出すればすみます」(同)

 とはいえ、遺産の分け方も相続税の額も、相続人同士の考えがまとまらないと決まらない。

「何より大事なのが、遺言書があるかどうか。故人が残した財産の目録や、問題のない分け方がきちんと示されていれば相続もスムーズに進みやすい。遺言書がなければ相続人同士の遺産分割協議が必要です」(同)

 注意したいのは、遺言書が見つかった場合にすぐに開封しないこと。たとえば本人が書いた「自筆証書遺言」の場合、そのまま家庭裁判所に持っていき確認してもらう「検認」の手続きが必要だ。相続に詳しい小堀球美子弁護士は言う。

「検認の手続きの際、申立人は遺言書を持って裁判所に行く必要があります。郵送は認められていません。ただし、相続人全員が行く必要はない」

 遺産分割協議も、「密」を避けたければ1カ所に集まらなくてもいいという。

「協議の結果をまとめた遺産分割協議書は、あらかじめ相談してつくったものを相続人の間で回覧し、それぞれが署名、押印したものでも問題ない。各自が署名、押印した協議書を持ち寄る形でも認められます。必ずしも、一枚にまとめなくてもいい」(小堀弁護士)

 とはいえ、離れたやり取りになるだけに、ほかの相続人の反応は見えにくいし、文書での受け答えが冷たい印象を与えることも。折に触れて、故人への思いやほかの相続人への気遣いを伝えるようにしたい。

 協議がどうしてもまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判に委ねられる。ここでも、コロナの対応は進んでいる。

「家庭裁判所の民事調停は対策のため電話会議が増えています。ただ家裁では、地方裁判所では認められているウェブ会議は使われていません」(同)

 財産を引き継いだら名義変更が必要だ。その手続きは意外と大きな負担だ。

 例えば、銀行の預金口座(遺言書がない場合)や不動産の手続きには、故人が生まれてから亡くなるまで一生分の戸籍謄本のほか、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書などたくさんの書類をそろえなければならない。結婚や転籍などで本籍地を移すケースは多く、一つの役所だけで集められるとは限らない。本籍地が何度も変わっていれば、過去の謄本をたどっていく作業も必要だ。

 しかし、すべての役所に足を運ぶ必要はない。戸籍謄本や住民票は、必要な書類を提出すれば郵送で送ってくれる。印鑑証明書は、マイナンバーカードを持っていればコンビニで発行できる。

 ファイナンシャルプランナー(FP)の長尾義弘さんは「手続きがたくさんある人は『法定相続情報一覧図』を使うとよい」とアドバイスする。

「法務局で一度つくってもらうと、何度でも写しを交付してもらえます。最初に、故人の一生分の戸籍謄本や相続人の戸籍謄本などを集めなければならない点は変わりありませんが、銀行や不動産といった手続きごとにたくさんの書類を集める必要がなくなる。相続税の申告や年金の手続きにも使えます」

 コロナへの対応は申請先によって分かれる。法務局の不動産の名義変更は郵送でもOKだが、運輸支局の自動車の手続きは窓口で行わなければならない。

 どちらも、手続きは慣れていないと複雑なので、不安なら司法書士や行政書士ら専門家に相談しよう。(本誌・池田正史)

※週刊朝日  2021年7月2日号より抜粋