コロナ禍の外出自粛もあって、家庭で冷凍食品の出番が増えている。手軽なうえ、有名店の料理にも劣らぬものも目立つようになった。それだけに、正しい保存や解凍の仕方でおいしく味わいたい。



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「バン!」

 冷凍庫から出して常温にしばらく置いた市販の「冷凍コロッケ」をパッケージから取り出し、いざ電子レンジで加熱したところ、衣が破れて“爆発”したことはないだろうか。電子レンジでなく、油で揚げていれば、もっと大変だ。

 加熱調理の前に、冷蔵庫や常温で自然解凍させておけば調理時間が短くなると考えていたら、危険かもしれない。

「冷凍コロッケなどはカチカチに冷凍したまま電子レンジで温めてください」

 こう説明するのは、日本冷凍食品協会の広報担当者だ。コロッケのように柔らかい食品になるほど、衣に穴が開きやすく、爆発しやすいという。

 加熱の原理を改めておさらいしておきたい。

 電子レンジは、食品に含まれる水分子をマイクロ波で振動させ、その摩擦熱を使っている。食品は必ず水分を含んでいるからだ。

 このため、自然解凍で表面だけが解けて内側がカチカチに凍ったまま加熱すると、解けたところは水分子が動きやすくなっている状態なので「その表面にマイクロ波がガンガン当たってものすごく温度が上がり、温度差が極端になる」。

 食品冷凍に詳しい鈴木徹・東京海洋大学特任教授は、こうしたマイクロ波の特性が、温度ムラを引き起こすと警告する。

 市販の冷凍食品はこのため、基本的に加熱直前まで冷凍庫に入れておく必要があるのだ。

 温度ムラといえば、冷凍グラタンなどが悩ましい。ホワイトソースの部分は温まっても、エビや野菜などの具材が冷たいまま、といった経験はないだろうか。

「常温から温めるのはワット数が高いほどいいが、冷凍ものは500ワットでじっくり温めたほうがいい。時間はかかっても、温度が均等に上がる」(鈴木さん)というので“急がば回れ”だ。

 電子レンジの加熱では、食品を置くポジションも実は大切だという。回転しないフラット式と、回りながら加熱するターンテーブル式がある。フラット式は中央部に置くと加熱効率がいい。回転式はターンテーブルの中心から遠い位置、つまり円の外側に置くのが効率的だ。レンジ内の壁から反射したマイクロ波も受けやすい。

 市販の冷凍食品の保存期間は1年くらいだが、一般的には2、3カ月程度が目安。あくまで「温度変化がない前提」(同)になっているためで、メーカーから出荷された後はその前提が崩れやすい。

 実際、店で買った冷凍食品を持ち帰る際も、保冷容器に入れて短時間で冷凍庫に収納しないと商品が劣化する。家庭の冷凍庫でも開閉で温度が上昇するため、長期保存する場合はポリ袋やアルミホイルなど何かに包んで冷凍庫に入れておいたほうがいいという。

 ところで、フライパンで炒めたり、煮物を鍋にかけたりする際に、冷凍の魚介類や肉、野菜の解凍はどうすればいいのか。

 電子レンジを使う際は必ず「半解凍」で止めた後、素早く調理するのがいい。例えば、こま切れの肉が凍結によって肉のかたまりになっている場合は、半解凍でそれぞれの肉がほぐれる程度まで解凍する。

 冷凍マグロなど冷凍魚介を解凍して刺し身にする場合は、密閉した袋に入った食材を氷水に約30分つけて解凍していく。大きな塊だと解凍に時間がかかるため、30分以内で解凍できるような大きさにしておくのがいい。生臭くなったり色が悪くなったりするのを防ぐポイントだ。

 肉や魚介類、野菜など生の食品には酵素が存在する。冷凍中の酵素は活動が抑制されているものの、常温で活発に働き、この生臭さや色の悪化を招く。また、肉でも魚介類でも、高い温度で解かすと「ドリップ」と呼ばれる汁が出てきて、おいしさや栄養も流れ出してしまうから注意が必要だ。

 買ってきた肉や魚、野菜、自分でつくったカレーなどの料理を冷凍保存する「ホームフリージング」にもコツがある。

「鮮度のいいものを冷凍すること。余ったものでは手遅れです。おいしさや栄養は時間とともにどんどん落ちていきます」

『おいしすぎる冷凍レシピ』(宝島社)などの著書がある冷凍生活アドバイザーの西川剛史さんは強調する。

 そのためにも、店から買って帰宅後、「食べるもの」と「冷凍保存するもの」に仕分けしていく。冷凍は空気を抜いてラップなどで包むが、「肉や魚は調味料やたれなどで下味をつけてコーティングするのもいい」(西川さん)。下味をつけることで、表面の乾燥を防ぐこともできるという。「魚は肉に比べて繊維がもろい分、ひと工夫が必要です」(同)。魚は扱いが難しいため、自分で冷凍するよりも冷凍された市販のものか、生なら食べる分だけを購入するのが賢明だ。

 肉などは、買ってきたトレーのまま冷凍するのは厳禁。空気が入っているためで、必ず食材だけを密閉して保存しよう。

 煮物やカレー、シチューなどを冷凍する際は、粗熱をとってから冷凍庫で保存する。このとき、底の深い鍋に入れたまま粗熱をとりがちだが、「フライパンなど平たいものに移してかきまぜると熱が抜けやすい」(同)。食べるときは、冷凍庫から取り出したらすぐに加熱調理したい。

 野菜類は生のまま冷凍するよりも、硬めにゆでるなど7〜8割程度の加熱調理後に冷凍すると長持ちする。もちろん、生のまま食べるトマトやキュウリは、そのまま冷凍すればいいが、解凍するとぐちゃぐちゃになりやすい。そこで、トマトなら凍ったままおろし器でシャーベットにしたり、ソースに使ったりする楽しみ方もおすすめだ。

「冷凍すると食感が悪くなりますが、変化を生かした調理法で食べてほしい」(同)

 冷凍食品だから味が落ちると決めつける前に、正しい解凍を知って、おいしくいただこう。(本誌・浅井秀樹)

※週刊朝日  2021年6月25日号