ドラマでも恋人同士だった星野源さんと新垣結衣さんの「逃げ恥婚」は、久々の明るい話題だった。何かと行動が制限されるご時世、愛を育むハードルは高くなっているようだが、希望はある。コロナ禍で出会い、ゴールにたどりついたカップルたちの軌跡から、成就の秘訣を探った。

*  *  *
「5月の連休明けに出会って、2カ月足らずで結婚することに。一番驚いているのは私たち自身です」。こう話すのは都内在住の会社員・朝子さん(仮名・30代前半)だ。6月上旬、結婚相談所を通じて知り合った健吾さん(同・30代後半)にプロポーズされ、実質「交際0日」で結婚を決めた。

 元々、一人が好きだった朝子さん。今年3月ごろ、急に一人の時間がものさびしくなり、大手結婚相談所「ツヴァイ」への入会を決意する。一方の健吾さんは昨年初め、転勤で都内へ。職場以外に知り合いが少ない中、コロナの感染拡大で自宅にこもる生活が続いたことに不安を感じ、今年1月にツヴァイに入った。

 ツヴァイでは、一人の入会者に「マリッジコンサルタント(MC)」「アドバイザー」と呼ばれるスタッフがつき、2人1組で婚活を助ける。年収や学歴などの希望条件をもとに毎月紹介書が送られてきたり、写真とプロフィルをもとにネット上でお見合いを申し込んだり、といった出会い方がある。2人は、担当のMCが同じ女性だった縁で知り合った。

 5月の連休明けに新宿店で初対面し、互いに好印象を持ち、その後は週一度のペースで食事をした。健吾さんを「申し分のない存在」と感じていた朝子さんだが、他に男性2人と連絡を取っていたことから、次第に迷いが生じた。

 MCは、朝子さんからの報告をもとに「選択肢が増えて混乱しているが、気持ちは健吾さんに向かっているのでは」と助言。朝子さんはその夜、「あなたに決めた」と健吾さんにLINEを送る。「思い立ったが吉日」タイプという健吾さんは、次に会ったとき、朝子さんに交際を申し込むと同時にプロポーズ。朝子さんの誕生日である七夕に無事、婚姻届を提出した。

 2人とも初めから「活動期間」を意識していたという。結婚願望が強かった朝子さんは、入会時に「2〜3カ月で卒業したい」とMCに伝えていた。「時間をかけすぎると、自分の気持ちがわからなくなりかねない。入会当初の志を持ち続けることが大切」と語る。

 厚生労働省の人口動態統計によれば、昨年の婚姻件数は52万5490組。一昨年から約7万3500組減った。一方、結婚を意識して行動する男女は増える傾向にある。国内約2800の相談所が入る日本結婚相談所連盟のデータでは、コロナ前(2019年11月〜20年1月)に月平均で約3万5千件だったお見合いの成立件数は、最初の緊急事態宣言が出た後の昨年4月は約2万1千件台まで落ち込んだ。

 しかしその後は徐々に回復。今年5月には過去最多の4万6414件にのぼった。オンラインでのお見合いも当たり前になった。同連盟を運営する婚活サービス大手のIBJが、婚活する男女約1300人にしたアンケートでは、回答者の約半数がオンラインお見合いの経験が「ある」と答えている。

 ツヴァイでも、朝子さんと健吾さんのように、コロナ禍以降に出会ってゴールする「コロナ婚」が増えている。広報の寺門里紗さんは「リーマン・ショックや東日本大震災同様、社会不安が起きるとパートナー探しの需要も高まる傾向がある」と指摘する。

 結婚相談所「IBJメンバーズ」(本部・東京)では昨年以降、20代の入会者が目立つという。広報の椎名麻里さんは「飲み会や合コンの機会が減り、出会いの場を相談所に求めるケースが増えている」と話す。

 東京と関西に拠点がある「結婚物語。」は、成婚者が自らの活動歴を詳細に綴ったブログが人気だ。昨年は、入会者数が前年比で1割増。代表の苅谷昌浩さんは「男性の場合、収入や精神状態が不安定だと婚活を始めにくい。コロナ禍で収入の不安を抱える男性の入会者は減ったが、代わりに経済面も精神面も安定している層の入会が増えた印象だ」と話す。

 同相談所では、他の相談所の会員も含むプロフィル検索のほか、仲人が会合で会員同士を紹介する「手組(てぐみ)」と呼ばれる方式が中心。対面後、相手を気に入ると「仮交際」へ。この段階は同時並行で他の会員と会ってもいい。デートを重ね気持ちを定めたら1人に絞り「真剣交際」。順調にいけばプロポーズ、そして結婚となる。

 都内の出版社で働く絢子さん(仮名・36歳)も「結婚物語。」を通じ、コロナ禍で結婚を決めた。昨夏に入会し、今年1月、別の相談所に登録していたSEの隼人さん(仮名・43歳)にネット経由で見合いを申し込んだ。当時、仮交際中の相手が3人いた隼人さん。交際人数を増やすことに迷いはあったが、2月上旬、ホテルのラウンジで絢子さんと会った。

「少し前に着くと、絢子さんがちょうどお手洗いから出てきたところで目が合ったんです。彼女のほうからニコッと笑いかけてくれて好印象でした」(隼人さん)

 アニメやマンガの話で盛り上がり、3月上旬に交際を開始。4月下旬には東京タワー近くのチャペル付きレストランで隼人さんがバラの花束を絢子さんに渡し、プロポーズした。隼人さんは車の運転が趣味で、デートも「海ほたるPA」(千葉県木更津市)など関東近郊へのドライブが中心。密を避けられ、2人の距離も縮まったという。

 絢子さんは「真剣交際の前から互いの結婚観について話せた。2カ月という交際期間も短く感じませんでした」。

 IBJメンバーズのカウンセラー、山内節子さんはコロナ禍の婚活では「コロナに対する価値観」が成否を分けやすいと言う。「会う場所や誘い方にその方の人となりが表れる」からだ。4人の共通点はコロナを過度に恐れなかったこと。朝子さんと健吾さんはプロポーズまでの間、自宅デートを含め週に一度は会った。「制限があるならあるなりに、その中でうまくやりくりしようと思っていました」(朝子さん)

 絢子さんと隼人さんも、初対面からプロポーズまで土日のどちらかを必ずデートにあてた。

「仮交際をしていた方に、コロナをとても気にされている方がいました。レストランで食事するだけの状態が約2カ月続き、どこにも出かけられなかった。コロナを気にすることも大切ですが、そこにばかり目が向いていると交際には進みにくいと感じました」(隼人さん)

 コロナは婚活のスタイルをも変えつつある。「制約がある中でいかに動くか」という発想の転換が大切と言えそうだ。(本誌・松岡瑛理)

※週刊朝日  2021年7月30日号