新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中、意識しておきたいのが「巣ごもり」で失われた体力。特に関節とその周囲の筋肉の衰えは、動いたときに大きなけがの原因になってしまいます。この先に備えて「関トレ」で元気な関節と筋肉を取り戻しましょう。

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 新型コロナウイルスのワクチン接種が進みつつあります。特にシニアへの接種は優先されているので、読者の中でも2回目の接種が終わったという人もいるでしょう。この先、感染が抑えられ規制が緩和された場合、徐々に以前の生活に近づいていくはずです。これ自体は、もちろんうれしいことです。

 ただ、長い「巣ごもり」で筋力が落ちている可能性があります。自粛が解けたからといって、すぐに以前と同じように活動するのはちょっと考えもの。今まで大丈夫だった距離でも、足などの関節が痛くなったりと体に不調が出る危険性があります。無理をすると転倒するなどして、後々にも影響が残る大きなけがをするかもしれません。

■重要なのは関節を支える筋肉を鍛えること

 これまでの生活を取り戻す準備として、やっておきたいのが以前ハレやかでも紹介し、好評だった「関トレ」。これまでに整形外科で10代から90代まで、さまざまな症状を持つ人たちのリハビリを担当してきた理学療法士の笹川大瑛さんがすすめるトレーニング法です。これをコロナ禍の今、改めて説明します。笹川さんは「ひざが痛いなど慢性的な関節の痛みは、関節を守る筋力の低下が原因。だから筋力を取り戻せば痛みはなくなります」と話します。ここでは「ひざの痛み」を中心に「肩こり」についても効果的な関トレを紹介します。

 元気にコロナ後の生活を送れるよう、関節をお手入れしてください。

【「ひざの強化・痛み克服」に効果的なトレーニング】

 関節痛の中で特に多い変形性膝関節症。関節の軟骨が弾力を失ってすり減り、関節が変形する病気です。

 変形性膝関節症の症状で多いのは、歩き始めに痛む、階段を下りるときに軸足が痛む、立ち上がるときに痛むの3つ。

 ひざの痛みは軟骨がすり減ることで起こると思っている人もいると思いますが、それは違います。実は膝関節を安定させる筋力の低下が根本的な原因です。筋力が低下すると膝関節への負担や、筋肉がついている腱、靱帯へのストレスが増え、それが炎症を引き起こして痛みが発生します。

■2つの筋肉を鍛えひざを守る

 膝関節を守る筋肉は太ももの内側の筋肉である「内転筋(ないてんきん)」と、太ももの後ろ側にある「内側ハムストリングス」と呼ばれる筋肉です。この2つの筋肉がしっかり働いていれば、ひざに余計な負担がかからず膝関節は正しく動きます。変形性膝関節症の人は、ひざがピンと伸びずに曲がってしまったり、あるいは腰が曲がり、特徴的な歩き方をします。

 膝関節は太ももの骨とすねの骨、ひざのお皿でできています。大腿骨(だいたいこつ)とすねの骨は靱帯でしっかりつながっていて、その間には半月板という軟骨が入って、力を分散・吸収するクッションの役目を果たしています。

 この半月板や靱帯、筋肉の動きによって歩く、しゃがむ、正座をするといった動作がスムーズにできるのです。内側ハムストリングスは、太ももの裏側の筋肉の内側にあり、ひざを曲げたり股関節を伸ばしたりするときに使われます。

 内転筋は太ももの内側の筋肉で左右の重心移動に強く関係します。

 慢性的にひざが痛いなら、膝関節を守る力を高める関トレで筋力をつけることが重要です。

○ひざ:内側ハムストリングスの関トレ

1.両足を開いてイスに座り、右足首を内側に曲げる。

2.右足を内側に曲げ、右ひざが上がらないように、右のつま先だけを天井へ向かって力いっぱい持ち上げ、10秒間キープ。

3.これを3〜5セット繰り返す。反対側も同様におこなう。

<注意!>力いっぱい足首を持ち上げるのがポイント。足を内側に曲げたときにひざが上がらないように注意。

○ひざ:内転筋の関トレ

1.仰向けになり顔は天井に向け、右足のつま先を内側に、親指が床につくぐらい倒す。

2.右手は横に伸ばしてひじを床につけ、10秒間、右側のお尻を浮かし続ける。

3.これを3〜5セット繰り返す。反対側もおこなう。

<注意!>ひじを床にしっかりつけておこなうこと。胸が浮かないように注意。左右でやりにくさなどが違うときは、やりやすいほうから始める。

【「首・肩の強化、こり」に効果的なトレーニング】

 肩こりの原因については諸説ありますが、結論からいうと、肩こりも筋力の低下が原因です。マッサージをすれば血行がよくなり一時的に改善しますが、根本的な解決にはなりません。

 また、同じ姿勢を長時間とることが原因ともいわれますが、長時間同じ姿勢でいても肩がこらない人もいます。では、なぜ肩が硬くこってしまうのでしょう? これを考えてたどり着いた結論が、肩こりは肩甲骨(けんこうこつ)の関節を守る筋肉がうまく働かなくなることで起こるということでした。

 これらの筋肉が弱くなると、肩甲骨を背中の中心に寄せたり、上げたりする力が衰え、その代わりに肩の筋肉が多く使われ硬くなります。

■筋力の低下は多くの不調の原因に

 肩関節を守る力が低下すると、肩こりのほかに、高いところにあるものが取れない、手が後ろに回らないということにもなります。また、首を寝違えることが多くなったり、肩の痛みが出てきたりもします。特に肩が炎症を起こして痛くなり、寝付けなくなる人も多いのです。肩こりに悩む人は肩甲骨の関トレを習慣にしてください。

 鍛えるのは、肋骨(ろっこつ)と肩甲骨からなる関節です。この関節が安定しないと動きが悪くなり、肩こりなどの不調につながります。首の付け根から肩甲骨にかけて肩こりがある人は、肩甲骨をつり上げる筋肉が硬くなっています。この筋肉は肩甲骨の固定に強く影響するので、腕を最大限振り上げたときに痛い場合はこの筋肉が弱っていることがほとんどです。

 また肩甲骨を安定させる筋肉が弱くなると、肩から腕全体に力が入る感じがしなくなります。腕を振り下ろす際にも痛みを感じるようになります。これらも関節周囲の筋肉を鍛えることで改善されるのです。

 筋肉は運動で90歳からでもグングンついていきます。一日の初めに関トレをおこなって、快適な一日を過ごしてください。

○首・肩:肩関節の関トレ

1.体の左側を床につけて横向きに寝て、左腕に頭をのせる。右手を上に伸ばしながら手のひらを外回しで天井に向け、少し後方へ動かす。

2.右手を伸ばしたままひじを背中の中心へ下ろせるところまで下ろし、その状態で10秒間キープ。このとき右肩が前に出ないようにする。

3.これを3〜5セット繰り返す。反対側も同様におこなう。立っておこなってもよい。

<注意!>上側の手を回す際、「内回し」にならないように。イスや机につかまり立ちをしてやってもOKだが、その際は肩をしっかり動かし、体がねじれすぎないように注意を。

○首・肩:肩関節の関トレ

1.仰向けになり、両手を斜め上に伸ばし(わきの角度が45度くらい)、親指から内側に回して、右手の甲と左手の甲とを合わせる。

2.そのままの姿勢で、肩がすぼまないように、指、ひじ、腕を力いっぱい伸ばし10秒間キープ。このとき両わきのあたりに力が入る。

3.これを3〜5セット繰り返す。立っておこなってもよい。

<注意!>腕を上げたときのわきの角度は45度が望ましいが、肩が痛いときは、できるところまで上げるようにする。肩をすぼめないよう注意。

【関トレ実践のコツとポイント】

・痛む関節、つかれやすい部位の関トレをおこなう

・狙った筋肉を鍛えるため、正しいフォームでおこなう

・最大限のパワーでおこなう

・一日何回おこなってもよいが、朝おこなうと体がよく動く

・はれや急性の痛みがあるときは中止する

※トレーニング時に強い痛みがあったり、関節がうまく動かないなどの症状がある場合は、決して無理に曲げたりせずトレーニングを中断してください。

(「朝日脳活マガジン ハレやか」編集部)

※「朝日脳活マガジン ハレやか」(2021年 10月号)より抜粋

笹川大瑛(ささかわ・ひろひで)/理学療法士、日本大学人文科学研究所研究員、日本身体運動科学研究所所長。日本大学文理学部体育学科卒。臨床現場でリハビリ全般を経験する傍ら、運動理論の研究をおこなう。現在は、理学療法の技術や運動・トレーニング、姿勢改善などのセミナーを開催。全身の関節トレーニング法をわかりやすく解説した著書『関トレ 関節トレーニングで強い体を作る』(朝日新聞出版)を発売中。