残暑から一転して気温が下がり、先週あたりから一気に秋が深まってきた感じですね。

 秋が深まってくるといろんな魚に脂が乗って美味しくなってきます。

 サンマやアジ、タチウオ、カツオ(戻りガツオ)等、数えあげればきりがありませんが、筆者が特に楽しみな魚にカワハギがあります。

 カワハギは、フグ目カワハギ属に分類されるフグの仲間ですが、基本的には毒はなく、その身は透明感のあるきれいな白身で、フグと同じくコリコリ、シコシコとした触感がとてもおいしい魚です。

 一般的には、産卵前の春から夏が旬と言われていますが、実は秋から冬にかけても、もう一つの旬があります。

 秋から冬にかけてのカワハギは、肝がパンパンにふくらんでくるんです。

 一般的に、タイやマグロなどの肝の重さは、体重比で1〜3%程度なのに対して、秋から冬のカワハギの肝は、15%〜20%程度にまで大きくなると言われています。

 カワハギの肝がここまで大きくなる理由は、自分のテリトリー内で餌を食べているので、他の魚のように、長距離を移動したり速く泳ぐ必要がなく、食べた栄養を筋肉ではなく肝臓に脂肪として蓄えるためのようです。

 そして秋から冬にかけて、春の産卵に備えて、しっかりとエサを食べて肝に栄養(脂肪)をたっぷりと蓄えた状態、つまり、我々人間でいうところの、脂肪肝の状態になってくるということなんです。

 ガチョウにどんどんエサを食べさせて生産するフォアグラと同じで、この肝を使って、カワハギのお刺身をグレードアップさせることができるんです。

 筆者は基本的に、釣ってきた魚は自分でさばいて、家族にふるまっています。

 これまでで最も家族に好評だった魚のひとつが、カワハギでした。グレ(メジナ)やチヌ(クロダイ)の外道で釣れた、お腹がパンパンのカワハギの身を、肝をといたしょうゆで食べたのが、珍しさもあったのか「何これ!むっちゃおいしい」と大好評でした。

 その後しばらくは、釣行から帰るたびに、「今日はカワハギは釣れた?」と聞かれて困っていました。ご存じの方も多いとは思いますが、カワハギは、水中を自由に上下できるので、エサ取り名人と呼ばれていて、狙って釣るのはとても難しい魚なんです。

 ちなみに、カワハギは値段も意外と高く、卸値で1キロ当たり3千円から5千円ほどもするようです。

 他に肝を食べる魚としては、あん肝で有名なアンコウがあります。

 深海にじっとして餌をとるアンコウの肝はカワハギよりも大きく、体重の40%程度にもなると言われています。本家のフォアグラと同じく、茹でてあん肝として食べることが多いですが、青森県などには、カワハギと同じく、肝と身を和えた「友和え」という調理法もあるとのことです。以前このコラムでも書きましたが、アカエイの肝も、うまく調理するととても美味しいとのことです。

 ちなみに、カワハギという名前は、「皮を簡単にはがすことができる」というところから来ています。

 筆者は、魚をさばくときに最も苦手なのが、皮をひく(はぐ)工程ですが、カワハギの皮は非常に硬いので、簡単に手で引きはがすことができます。

 個人的には、皮をはいだカワハギの見た目は、「進撃の巨人」の一巻の表紙の巨人に似ていると思うんですが、皆さんはそう思いませんか?

 カワハギの皮の表面はザラザラしており、乾燥させると、サメの皮のようにワサビをおろすことができるとも言われています。

 カワハギの仲間に、ウマヅラハギやウスバハギがいます。どちらも日本近海にも多く生息しています。ウマヅラハギは、その名の通り、馬のように長い顔をしていて、ウスバハギは、広葉樹の葉っぱのように平べったい形をしているので、「薄葉」ハギと名付けられたとのことです。どちらもカワハギですので、身も肝もカワハギと同様、美味しい魚です。

 くら寿司でも、時期によって、カワハギの仲間のウスバハギのお寿司を販売しています。結構レアなネタになりますので、もし見つけたらぜひチャレンジしてみてください。

○岡本浩之
おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

※AERAオンライン限定記事