若い頃はあんなにフサフサしていたのに、いまは鏡を見るのもイヤ・・・。そんな悩みにもだえる男性は少なくない。だけど薄毛でも目立たない人や、むしろかっこいい人だっている。その差は一体、何なのだろう。実は、髪形やファッションをほんの少し見直すだけで、印象はガラリと変わるんです。この夏、勇気を出して新たな世界へ飛び出してみませんか?

「薄毛に悩む男性の為に」をコンセプトにした美容院がある。東京・渋谷に本店があるヘアサロン「INTI(インティ)」。その福岡店(福岡市)に勤め、毛髪診断士の資格も持つ美容師の堀本俊治さんは、遠くは広島や鹿児島からもやってくる男性たちの薄毛の悩みに向き合ってきた。

「一般の美容院で納得のいく髪形にならなかった人もいれば、そもそも恥ずかしさのせいで美容院に行けなかった人もいます。自分で髪を切ったものの、見えるところしか切れておらず、『どうしてこうなった?』という状態に陥っているケースもままあります」

 初回のカウンセリングでは、「どんな髪型にすればいいかわからない」「なんとかして下さい」とゼロからのアドバイスを求められることがほとんど。スマホの画面になりたい髪形のイメージを出してくれるお客もいるが、「できないと思うんですけど・・・」という枕詞は鉄板だ。なかには緊張と不安のあまり、スマホを持つ手が震える人もいるという。

 だが、どんなタイプの薄毛でも、あるルールを守ればかっこよくなれる。堀本さんが言う。

「薄毛の人の髪形を考えるうえでの大原則は、髪の量を均一にすることです。髪が多い部位と少ない部位があると違和感が生まれ、少ない部位がより目立ってしまいます」

 髪が残っている部分を守りたい気持ちは分かるが、状況を見ながら思い切ってハサミを入れるのが肝心だとか。それでは、薄毛の定番である(1)M字タイプ(2)O字タイプ(3)U字タイプについて、それぞれカバー方法の例を見てみよう。

(1)M字タイプは額の左右の生え際が後退していく。前髪を伸ばしてまっすぐ下ろすと、真ん中だけ髪が多く、左右はスカスカになってしまう。そこで、あえて短く切って厚みを出しつつ、毛を横に流す=写真1。前髪は、毛が落ちている位置に視線を集める特性がある。顔の外に向かって毛流れを作ることで、視線をおでこから外す効果がある。

(2)O字タイプは頭頂部が薄くなる。髪が薄いところにつむじがある場合、ヘアセットで髪が残っているエリアに移すのが有効だ。濡れた髪をドライヤーで乾かしながらつむじの位置を調整し、薄毛をカバーするようにつむじを中心とした渦巻き状の毛流れを作る。プロの技だが、慣れれば自分でもできる。

(3)U字タイプはM字とO字がくっつき、薄毛の範囲が広い。側頭部と後頭部から髪を持ってきて被せ、髪が浮かないようスプレーを使って念入りにセットする。

 U字が進行してカバーが難しくなった人や、薄毛は隠さなくていいから自然に見せたい人は、短く刈り込むのがおすすめだ。

 残った毛が伸びたままだと疲れて見え、清潔感も失われてしまう。髪全体の密度が均一になるように刈り込み、美しいシルエットを作れば、“きちんと整えています”感が生まれる。

 反対に、薄毛の人におすすめできないアレンジが、ジェルを使ったウェットなスタイルだ。

 濡れた質感の髪は、分け目ができやすく、頭皮も透けて見えやすい。また、アイドルのような毛束感のある仕上がりにすると、髪自体が目を引き、カバーできていない薄毛があると目立つリスクがある。キメキメよりも、ナチュラルかっこいいを目指すのが正攻法だ。

 思い切ってパーマやカラーを入れるのもアリ。「『髪は傷むと抜けるのでは?』と勘違いしている方も多いですが、関連性はないのでご心配なく」と、堀本さん。むしろパーマで癖毛にすると髪が強く見え、薄毛部分を隠すために別の場所から髪をぐいっと持ってきてもなじみやすいという。また、タレントの所ジョージさんや小堺一機さんのように明るい髪色に染めたり、白髪にしたりすると、頭皮の青白い色味と同化して、薄さが目立ちにくくなるそうだ。髪を茶色に染めたうえで日焼けサロンで頭皮を焼き、さらになじませる人もいるというから、驚きだ。

 カットや仕上げはプロにお任せするとして、日頃の手入れも大切。

 短く刈り込んだ髪形を除き、たいていはドライヤーやワックスを使ったセットが欠かせない。ただし、トリートメントには要注意。髪が柔らかくなるとボリュームが失われてぺったんこになってしまう。多少髪がごわつくような、石けん成分が主体のシャンプーで洗髪したほうが、ヘアスタイルがきまりやすくなるという。

 堀本さんは「ヘアスタイルを変えるだけで、人生は変わる」と言い切る。「あるお客さんは薄毛を隠すため、ヘルメットや帽子をかぶる工場作業員として働いていましたが、今は夢だったバーテンダーをしていますよ」

 服飾ジャーナリストの山本晃弘さんは、「髪は薄くなったらカリっと短く」が持論。30代前半から30年近く、坊主スタイルを貫いている。こだわりはサイドを短くしてトップを少し残すこと。ベストな状態を保つため、月3〜4回は散髪に行く。

「人は”差”に目が行くものです。髪が薄くなったところを残し、ある程度生えているところを削ると、うまくいきます。そもそも細い毛をふにゃりと伸ばして様になる人は、ほんの一握り。リリー・フランキーさんのようなキャラクターが立ったおしゃれ上級者でない限り、基本的にだらしなく見えます。でもきれいに刈ってしまえば、誰でも清潔感が出せる。自分や周囲の受け止め方も、『はげてしまった』ではなく『意図的に坊主にしている』というポジティブなものに変わります」

 髪のボリュームが少ないぶん、ひげを生やしたり、眼鏡や帽子などの小物を活用したりして、顔まわりにアクセントをつけるとぐっとバランスがよくなる。

 山本さんも「ひげはほおや首まで生やすと山賊みたいになるから、口まわりを中心に残す」「メタルフレームの眼鏡は主張が弱い。顔の印象を変えるならセルフレーム(プラスチック素材)」というように、自分なりのルールを確立してきた。

 薄毛は工夫次第で目立たなくなり、個性としても生かせる。一人で解決できなければ、プロに相談を。なじみの床屋さんでも、通りがかりの眼鏡屋さんでも、快く相談に乗ってくれるはずだ。

 それにしても、世間ではなぜ「薄毛=恥ずかしい」とみなされるのだろう。山本さんに疑問をぶつけると、こんな答えが返ってきた。

「ハゲがダメというのは、社会の問題です。若さは素晴らしい、現役でバリバリ働く人はえらいとされる世の中では、老化の象徴である薄毛やシワは恐怖の対象となる。日本ではいまだに、リタイア後も人生をエンジョイする男性像が浸透していません。でも、仕事がなくなっても髪が減っても人生は続くし、あなたはあなた。いつまでも自分らしくハッピーに過ごすために、おしゃれは大きな力になります。『この年になって誰に見せるの?』じゃない。きちんと磨かれて輝く自分の姿は、自分自身を励ますんです」

(本誌・大谷百合絵)

※週刊朝日オリジナル記事