ラジオDJとして25年、第一線で活躍し続ける秀島史香さんの新刊『なぜか聴きたくなる人の話し方』からの連載。今回は、“なりたい大人”の立ち振舞を身につけるためのちょっとしたコツをご紹介します。
* * *
■“大人”ならどうする?
2020年に行われたアメリカ大統領選挙で、新大統領となったジョー・バイデン氏、敗れたドナルド・トランプ元大統領以上に、私が注目したのは副大統領に就任したカマラ・ハリスさんでした。
初の女性副大統領というだけでなく、信念のこもった声と凜としたまなざし。ユーモアたっぷりのお茶目な話しぶり、きびきびと活動的な立ち居振る舞い、親しみあふれる、はじけるような笑顔、挑発に対しても軽やかにかわしたり、と七変化。
そして何より、「あなたはできる」と励まされるような、まっすぐであたたかい言葉選び。これぞ成熟した大人の姿だなと思います。
私自身はというと、嫌なことがあると自分の感情に振り回されてしまったり、「うまく対応できなかったな」「もっと他にやり方があったかもしれない」と悔やむこともしばしば。しなやかで強い憧れの“大人”への道のりは、まだまだ遠い……。
ただ、そんな私でも今日からできるのは、優雅でカッコいい大人の“フリ”をすることです。子どもの頃、誰もが経験のある「ごっこ遊び」のように、自分が思い描く「優雅な大人」のフリを10分でもしてみるのです。
例えば、誰かの言動にイライラするときや、次々とトラブルが起きて、八方塞がりに思えたとき。
「こんなとき、大人ならどうする?」
そう自分に問いかけてみます。
「まぁ、世の中いろんな人もいるよね」「そもそもご縁がなかったのね」と、さらりとスルーするのかな。「大人なら、これもひとつの人生体験」「なるようになる」と捉えて、落ち着いてひとつひとつ確実に解決していくのかな、などと想像してみます。
続けていくうちに、「いちいち慌ててもよくならないし」と精神的にタフになってきますし、人に対して「こうしてほしい」と自分勝手に抱いていた期待のハードルも下がってきます。
さらに、こうした「気持ち」の部分に、優雅に“見える”行動を少しずつ“上乗せ”していきます。例えば、大人なら誰かとドアで鉢合わせになったら、常に「お先にどうぞ」ができる。ご近所さんとバッタリ会ったらさわやかなあいさつができる。誰かが失礼な振る舞いをしようと、自分の機嫌は左右されない。
まずはあくまでも「フリでいいから」と自分に言い聞かせること。心の中で「けど、本心じゃないし!」と後ろめたく思っても、そこはあえて考えないようにします。人が目にして判断するのは、あくまでも私たちの実際の「行動」ですしね。
■「フリ」が「フリ」でなくなるとき
実際にやってみたものの、ふと冷静になると、結局“フリ”はフリでしかない、自分を偽っている気がする、恥ずかしくて無理……などと否定的な思いが頭をよぎるかもしれません。
ただ考えてみれば、私たちは、意識的、無意識的に、相手や状況によって、違う顔を持っています。職場、取引先、行きつけのお店、趣味のサークルでの自分、親友、ご近所さん、パートナー、子ども、親、上司、部下、同期の前での自分……。だったら、優雅な大人のフリであったとしても、それもそれで自分とする。そうすることで、自分自身もまわりの人も気持ちよく過ごせるなら、それだけでもやってみる価値は十二分にあります。
「自分を変えよう!」などと勢い込んだり、あれこれ考えすぎるとしんどくなります。真面目に考えすぎて「けど、本心じゃないし!」と自分の中で葛藤しても、ブレーキとアクセルを同時に踏むようなどこにもたどりつかない疲労感が残るだけ。
「フリ」と言わずに、ひとつの「型」を実践する、と呼び替えてもよいかもしれません。続けていれば、次第と習慣になって、「フリ」ではなくなってきます。
自分の性に合わないものは、「ここまでは無理、できなかった」と自然に淘汰されていくので大丈夫。自分に合うものだけが残り、次第に馴染んできます。
英語で大好きなフレーズのひとつに、“Fake it till you make it.”(うまくいくまで、うまくいっているフリをしよう)という言葉があります。
「価値あるアイディアを広める」を合言葉に、さまざまな立場の人がその人ならではの知見を広めるためにプレゼンテーションを行う「TED」のステージで、社会心理学者のエイミー・カディ氏がこの言葉を使っていました。
なんでも、私たちの姿勢や表情など、非言語の行いは、自分自身に対して大きな影響を与えているとか。「楽しくて笑う」のは当然ですが、「笑うと楽しくなってくる」と言いますよね。その原理で、「自信があると、自然と胸を張る」と「胸を張ると、自然と自信が湧いてくる」も同様なんだとか。
例えば仕事の面接前で緊張しているとき、両腕をバンザイするように広げる、体を大きく前に開くなどの「パワーポーズ」をとると、ホルモンの分泌も改善し、実際に自信を持って行動できるようになるのだそうです。つまり、同じ課題に取り組むにあたって、小さく縮こまってとりかかるよりも、堂々と胸を張り「よし、私にはできる!」というフリをすることで、力を発揮できる。自分自身に対しても「フリでいい」と! これは目からウロコでした。
「フリ」で小さく変身してみることも、立派な自己改善です。すぐ成長に結びつかなくても、焦ることはありません。そもそも私たちはきれいな比例直線を描いて変化していくわけでないですしね。「大丈夫、フリでもいいんだ」と自分に声をかけながら、手を変え品を変え、いろんなことを試していきませんか。
たとえうまくいかなかったとしても、「あ、これは違ったか。ひとつ勉強になったわ」と、元いた場所に戻ってくればいいだけ。同じ場所に留まり、まったく動かなかったときよりも、はるかに貴重な「経験」というお土産を持ち帰ることになります。
いつまでも進化をやめない先輩方を観察していると、常に自分の中で新しい挑戦を続けているようです。もしかすると「フリ」なのかもしれませんが、それもカッコいいじゃないですか。
さあ、あなたなら、まずはどんな「フリ」から始めてみますか?
【ここまで聴いてくれたあなたへ】
「フリ」をすれば、中身もついてくる。
(構成/小川由希子)
「フリでいい!」目からウロコのなりたい自分になる方法 ラジオDJ歴25年の秀島史香が気づいたコツ

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