元朝日新聞記者でアフロヘア−がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 パソコン不調という大ピンチを「買い替え」という何の知恵も工夫もない方法で解決(=敗北)したことを書いたが、案の定というべきか、一件落着と思いきやそうは問屋が卸さないのであった。

 新品へのデータ移行は自力で完遂したものの、旧品をリサイクルすべくデータ消去に取り組んだら「実行すると○○になりますが○○してもいいですか?」的な終わりなき質問の嵐に襲われ、○○の意味も全体としての日本語の意味も全くわからず、実行したらどんなひどいことになるかと怯え、いちいち立ち止まっているうちにログインできなくなるという謎の事態に。

 するとそこへ、アップル様から「あなたの学びたいことが何であってもサポートします」という有難いメールが! 藁にもすがる思いで困っている旨を送ったら即電話があり、さすが大企業と思ったら電話口の爽やかな男性がおっしゃるにはですね、要するにこのサポートとは「顧客様がビジネスを効率的に進めるため追加商品を買う相談を受けるもの」だと……ま、フリー7年ともなればそこそこ痛い目にあっているのでそんなことじゃないかとは思っていたんだよ。で、やはりそういうことだったわけです。

 で、そうこうするうちなぜか新品にもログインできなくなるという新たな非常事態が発生し、超苦闘の末どうにか解決したものの、お次は予定表が携帯とパソコンで同期されないというこれまたヤバイ事態に。ってことでずーっと振り回され続け、これってどこが効率的なのか、生産性が上がっている気は1ミリもしねえと毒づく私はセーフティネットなき弱肉強食デジタル社会の間違いなく「肉」。肉にはやはり身を守るリアルな味方が必須と痛感し、カフェで仲良くなった若い男子に連絡してお茶とビールをご馳走し問題を全て解決して頂くという、得意の「昭和な方法」で一件落着となり心からホッとする。ってことで、とりあえずは日頃から徳を積むことでこのおっそろしい現代に対抗するしかないと決意を新たにしたのでありました。

◎稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

※AERA 2022年11月28日号