日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム。今回は「コロナワクチン4回目追加接種のタイミングと再感染のリスク」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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 11月に入り、どうやら今年の冬のコロナの流行が始まったようです。高熱や喉の痛み、倦怠感や息苦しさなどを訴えて受診される方にコロナの抗原検査を実施すると、陽性を認めるケースが増えきています。

 私事ですが、10月の下旬にコロナに罹患しました。最近の感染者数の経過や、外来現場でのコロナ疑いの患者さんの数が増えているのを目の当たりにし、ちょうど自分自身がコロナ罹患したのは、今年の冬の流行がちょうど始まった頃だったのだなあと今になって感じています。

 コロナのパンデミック以降、発熱外来を含む内科の外来診療に携わり続け、コロナの検査をしない診療日はないほど多くのコロナ検査をしてきたにも関わらず、幸い体調を崩すことなく診療やワクチン接種に携わることができていました。オミクロン変異株で発熱外来がパンクした今年の夏は、「もうコロナになってもおかしくない……」と覚悟したほどの流行だったにも関わらず、コロナに罹患せずに乗り切ることができていました。10月末に抗原検査でコロナ陽性の判定が出た時は、「えっ今更!?」と驚いてしまいました。

 ワクチンの有効性は、免疫原性(抗原などの異物が、ヒトや他の動物の体内で免疫応答を引き起こす能力)の時間依存性と懸念される変異株の免疫逃避能力の両方により低下することが指摘されています。

 例えば、米国のCenters for Disease Control and Prevention COVID−19 Response TeamのJill氏らは、ワクチンの追加接種による有効性について2022年10月3日にThe BMJに報告しています。

 それによると、2021年1月17日から2022年7月12日の期間に、コロナの検査を受け、コロナ様の症状を認め、261の米国の病院または272の救急部、119の緊急医療センターのいずれかに入院した18歳上の成人89万3,461人を対象とし、オミクロン株とデルタ株流行下おけるBNT162b2(Pfizer−BioNTech製)またはmRNA−1273(モデルナ製)ワクチンによるワクチン効果の衰えを分析したところ、オミクロン期間において、入院を必要とするコロナ感染症に対するワクチン効果は、3回目の接種後2カ月以内には89%であったが、4〜5カ月までには66%にまで衰えていたことがわかったといいます。

 私の場合、今年の2月に3回目の追加接種を済ませていました。そのため、コロナワクチンの有効性は、すでに低下している状況にあったと考えられます。「4回目の追加接種は、変異株対応のワクチンで、冬の流行の前に11月末にしよう」と思っている矢先に冬のコロナの流行が自身の予想より早くやってきてしまったことが、コロナに罹患した要因だと、自分なりに分析しています。

 発熱外来では、「まだコロナになっていない」ないしは「これまでに1度はコロナに感染したことがある」とおっしゃる患者さんが多いですが、稀に「すでに2回もコロナに感染しました」とおっしゃる方もおられます。コロナの流行が始まってからおよそ3年が経過しようとしている今、二度、三度とコロナに感染する方がいる中で、コロナの再感染が初感染時のリスクに加えて、再感染時のリスクが加わるかどうかは明らかではありません。

 そんな中で、アメリカの退役軍人省セントルイス・ヘルス・ケア・システム(Veteran Affairs Saint Louis Health Care System)のBenjamin氏ら が、コロナに再感染することによるリスクを分析した結果が、Nature Medicineに11月10日に公開されましたので、ご紹介します。

 その調査によると、米国退役軍人省の全国医療データベースを用いてコロナ感染経験がない533万4,729人、コロナ感染が1回の44万3,588人、コロナ感染が2回以上の4万947人を比較・解析した結果、繰り返しコロナに感染した人は感染経験がない人に比べて約2倍多く死んでおり、約3倍多く入院していたことがわかりました。

 また、コロナに再感染した人は感染が1回である人に比べて肺、心臓、脳(神経)の不調をそれぞれ3.5倍、3倍、1.6倍生じやすいという結果も得られました。筆者らは、コロナ感染を繰り返すにつれて健康不調の危険性は累積して上昇するようであり、すでにコロナに2回や3回とコロナに感染している人は、再感染予防のための戦略が必要であることを指摘しています。

 イスラエルのPaul氏らは、コロナに感染した951人を対象としコロナ感染後の長期症状を調査し、最も一般的な症状は、疲労(22%)、頭痛(20%)、手足の衰弱(13%)、持続的な筋肉痛(10%)であり、年齢や発症から回答までの期間、もとの症状を考慮した後に解析した結果、ワクチン2回接種済みの人のそれらの症状の発現率は、非接種の人よりもそれぞれ62%、50%、62%、66%低かったことを報告しています。

 私の場合、3週間ほどですっかり改善し、幸いにもコロナ感染後の長期症状は認めていません。4回目の追加接種を終えていたとしても、同時期にコロナに感染していた可能性は十分に考えられます。とはいえ、冬の流行が始まる前にもう少し早く追加接種を終えていれば、結果は変わっていたかもしれないと、ちょっとばかり後悔している今日この頃です。


山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)