中学受験シーズンが本格化しています。すでに試験を終えたご家庭もあれば、「超」直前期を迎えているご家庭もあるでしょう。これから試験を控えた今、親はわが子をどうサポートすればよいのでしょう? AERA with Kids編集部に寄せられた質問に、プロ家庭教師の安浪京子さんがズバリ答えてくれました。1月6日におこなわれたYouTubeライブを抜粋、編集してお届けします。※後編【「一睡もできずに受験して合格した子もいます」 中学入試当日の心得を安浪京子先生がアドバイス】に続く

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■教科・過去問対策

Q)もともと算数が苦手で、過去問でなかなか点数が取れません。残りの日々で何をするべきでしょう?

A)算数の苦手度合いや、過去問のどういうところで点を取れないのかによるので、この時期のアドバイスは個別対応になります。 

 今のこの時期、プロが付きっきりで集中してやるなら点を上げることができるかもしれませんが、現実的ではありませんよね。だったら「計算は絶対落とさずにいこうね」と声をかけるとか、「なぜ点が取れないのか」という分析は必要です。問題をちゃんと読んでいないのか、いつも計算ミスで落としているのか。塾の先生に過去問を持って行ってアドバイスをもらい、何をすべきかを聞くとよいでしょう。でも、今から大幅に算数の点数が上がることはないので、それより他科目で補ったほうがいいと思います。 

 とはいえ算数は絶対に出題されますから、やらなくていいということではなく、それをやりつつ他科目の点数をさらに上げていくのが現実的です。あとは、受験する学校の入試での頻出分野もポイント。頻出単元まで絞り込めたら、今から対策しても点が取れますよ。 

Q)国語はもう伸びないですか?記述が苦手なままです。

A)記述は今からだと正直厳しいです。ただ、部分点は狙っていきましょう。記述が苦手な人は、「記述を完成させなきゃ!」と思っていることが多いですが、部分点を狙うのがポイントです。そのためには、過去問の解説を読むことが重要。この言葉が入っていたら部分点がもらえる、というものがありますから。 

 理科・社会で記述問題がある学校もありますよね。「うちの子、記述が苦手です。SDGsと言われても引出しがなくて書けない……」という声も聞きます。でも、その配点を見るとたった3点ということも。たとえば「邪馬台国」の4文字を書かせる問題で2点、文章の記述で3点だったら、たった1点しか違いません。だったら記述を捨てましょう。これからは、いかに効率よく点数を取っていくかが肝心です。でもこれは、6年生以外は真似してはダメですよ。

Q)過去問を解いても全然点数が取れず、自信がなくなっている場合には、親としてどう接したらよいですか?

A)数字で自信を持たせていくしかないですね。「大丈夫よ、これだけやってきたんだから。あなたはパパとママの誇りよ」と言っても子どもには全然響かず、やっぱり具体的に〇がつく、点が取れる、ということでないと、この時期は厳しいと思います。

 受験生が自信をもつためには、やはり過去問を利用するのが一番です。たとえば、一回目に時間を計って全体を解きます。その後見直すと、できなかった問題でも、じっくり考えたら解ける問題もある。通しで考えるのではなく、問題をばらばらにして時間をかけて解かせることがポイントです。

 過去問は算数50分、国語50分と時間が決まっているので、焦って「これで点を取らないと!」と必ず気負って解きます。だから、たとえば算数だったら大問1の計算3問を、いつもは6分で解くべきところを「10分かけてやってみようか」と声をかけてみる。そうすると×だったところも、〇が1個増えたりするわけです。 

 まず、【自分には解く力がある】ということを認識させる。その後、それだけ時間をかけると本番で時間がなくなってしまうから、問題の見極め、つまり、解かずに捨てる問題もあるとことを再認識させることですね。自信がない子は全部が難しくみえて、「あれも解けない、これも解けない」とすべてに目を通しがち。最初から、【全部で20問あるけど解かなくていい問題が5問ある。残り15問をじっくり時間をかけて取り組む】というように、取り組み方を変えること。それで〇が1個でも2個でも増えたら、「ほら、ちゃんと解けるから」と自信を持たせていくことができます。

■親にできること 

Q)親が不安定になって、「こんなんじゃダメだと」子どもを強く叱ってしまったり、子どもを追い込んでしまったり。親はこの時期、何をしたらよいですか?

A)まず、今まで勉強に関わってこなかった親御さんは最後まで勉強に関わるな、と言いたいです。でも、試験会場への送迎、夕飯を作るなど、中学受験の過程にかかわるためにできることはたくさんありますし、勉強以外のことでいくらでもフォローできます。

 もし、今になって「どうやって関わったらいいんだろう」と悩んでいるかたがいらしたら、これまでイニシアチブを取っていたママ、もしくはパパに、「何をしたらいいと思う?」と聞くことですね。

 先日、Voicyのリスナーさんが投稿してくださったコメントでいいなと思ったことがあります。そこのご家庭はお母さまがずっとイニシアチブを取っていました。お嬢さんの受験が近くなり、お母さま自身がピリピリしてくる。自分を犠牲にして、「とにかくこの子に」となっているので、お母さま自身が精神的に耐えられなくなってしまっていました。

 するとお父さまが、「今まで二人とも本当によくがんばってきたと思う」と。そしてお母さまに「本当によく頑張ってきたから、ちょっと休んで。子どもを連れて外に行くから自分の時間を持ったら」と言ってくれた。それが何よりうれしい言葉だった、とおっしゃっていました。

 我が子のために自分をとことん犠牲にして、自分にきることはないかと必死になる気持ちはとてもわかります。でも、親の視界が狭くなればなるほど、子どもも追い詰められてしまうんですよね。親御さんが自分のための時間をあえて作ることをおすすめしたいですね。

※後編【「一睡もできずに受験して合格した子もいます」 中学入試当日の心得を安浪京子先生がアドバイス】に続く

○安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。