東京都の小池百合子知事が、18歳までの子どもに対し月5000円を給付することを発表した。この政策にはどんな意義があるのか。AERA 2023年1月23日号の記事を紹介する。

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 1月4日、小池百合子都知事が少子化対策の一環として、子どもへの給付金を表明した。都内在住の0〜18歳の子ども1人あたりに、所得に限らず、月5千円程度を給付する内容だ。

「ありがたい」と話すのは、都内在住の会社員女性(29)。3歳と0歳の子どもがいるため、月1万円受け取れる見通しだ。給付金の用途は習い事か子どもの貯金用投資に回したいという。

 都内在住の会社員の女性(39)は、「所得制限がないのは賛成。所得で制限するのはいいかげんにしてほしい」と言う。

 0歳の子どもがいるが、児童手当は年収が上限限度額を超えるため打ち切られた。一方、現在申請中の保育園の保育料は毎月7万円を超す予定だ。

「決められた所得税を払っている身として不公平感がある。ただ、月5千円もらっても今の生活に大きな影響を与えてくれるかといえば、正直違うのも現実」

 一方、都内在住で24歳と18歳の子どもがいる50代の会社員男性は、世帯年収関係なしの給付に首をかしげる。

「率直に言えばありがたいが、ダブルインカムの我が家は支給していただく必要性を感じない」

 給付対象の保護者の間でも、世代や立場によって意見が異なるが、「もらえるのはありがたいが」とエクスキューズがつくのは共通している。その先に続くのは、病児保育制度の充実や、保育料の値下げ、給食費無料化、などの他の要望だ。

『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』の共著者で教育学者の末冨芳・日本大学教授(教育行政学)は「今回の政策は、『親の属性で差別せず、子ども自身を応援する政治姿勢』の象徴です」と評価する。

 これまで、子ども手当・児童手当や高校無償化などの子育て支援政策が打ち出されてきたが、子どもの年齢や世帯の所得によって制限が課せられてきた。さらに、その時のトップ次第で政策はコロコロと変わってきた。まさに“つぎはぎ的”な支援だ。

 例えば、児童手当の額は、世帯主の年収によって月額が定められていたが、22年秋には、年収1200万円以上の家庭は給付自体が打ち切られた。

 その状況下で東京都が率先して打ち出した「稼いでも安心して子育てができる」という強いメッセージ性は、政治姿勢としては大きな転換に値する。ただ、その意図はあまり国民に伝わっていないとも末冨教授は言う。

「自民党の子育て政策は芯がなく、子育て世代間の分断を生んできた。5千円給付という数値ばかりにとらわれるのではなく、子どもを社会全体で支えていくというメッセージを政治がどこまで出せるかが大事。意識が変わって制度が変わるのではなく、制度が変わることで、私たちの意識は変わっていくと思います」

 まずは、子ども自身を大切にすることをベースとし、その上に他の支援を上乗せしていく。今回の都の給付表明は、そのファーストステップになる。(フリーランス記者・小野ヒデコ)

※AERA 2023年1月23日号