花粉の飛散量の多い今シーズン。「過去10年で最多」との指摘もあり、花粉症デビューしたという人も少なくないだろう。花粉症治療には、花粉成分を少しずつ体に入れて慣らしていくアレルゲン免疫療法、鼻粘膜の表面をレーザー照射するレーザー治療などがあるが、その一つ「薬物療法」では「くしゃみや鼻水がひどい」「鼻づまりがひどい」といった症状に応じた薬を選ぶことが重要だ。有効な対策について、専門家に聞いた。AERA 2023年3月27日号の記事を紹介する。

*  *  *

 近年、注目を集めている新しい薬もある。

 ひとつは、世界で初めての貼るタイプの第2世代抗ヒスタミン薬で、商品名は「アレサガテープ」。1日1回貼れば24時間効果が持続し、いつ貼ってもOKなのが利点だ。

 もうひとつは従来薬が効かない重症患者への抗IgE抗体薬「ゾレア」。2〜4週間に1回皮下注射する。規定の条件を満たした場合、特定の医療機関・医師のもとで受けられる。

 花粉症の発症年齢は低年齢化している。スギ花粉では5〜9歳で30.1%、10〜19歳で49.5%というデータもある。特に年齢が低いほど、親が症状を見極め、適切な治療につなげなくてはならない。

日本医科大学耳鼻咽喉科学の大久保公裕教授は「花粉症の自然治癒はごくまれ。年齢を重ねて次第に軽くなったとしても、大半は生涯続きます。今年お子さんが発症したとしたら、今後ずっとシーズン時につらい思いをすることになる。ただ、スギ花粉症は根治が期待できる唯一の治療法、舌下免疫療法がある。この先を見据え、検討するのも手です」と話す。

 舌下免疫療法は、アレルゲン免疫療法の一種。スギ花粉を原料としたエキスを少量から服用し、スギ花粉によるアレルギー症状を出にくくする。

 花粉症のアレルゲン免疫療法には注射で行う皮下免疫療法もあるが、「皮下」が医療機関で医師のもとで実施しなければならないのに対し、「舌下」は自宅で服用できる。注射ではないので、痛みもない。

 舌下免疫療法は、2014年に日本で初めて承認されたが、その時の治療用エキスは12歳以上が適応だった。その後、17年に錠剤が承認され、こちらは5歳以上。舌の下に錠剤を置き、1分間保持し、飲み込む。効果がすぐに表れるわけではなく、毎日、3〜5年間継続する。少なくとも1カ月に1回は通院する。

■治療して勉強に集中

 薬による症状抑制は10%程度であるのに対し、舌下免疫療法は30〜40%と高い。

「ただ、舌下免疫療法は全員には効きません。改善するのは80%くらいの人で、自分がどうかはやってみないとわからない。しかし花粉症になってからの年数が短いほどよく効くので、子どもは大人より効き目が高いと考えています。薬の使い方を理解できるようであれば、5歳以上が適応となっている通り、その年齢から始めて問題ありません」(大久保教授)

 2年前、子どもが中学1年生で舌下免疫療法を開始した西日本在住の女性は、主治医の説明を聞き、親子ともに十分に納得して開始。花粉のシーズンは鼻が詰まって夜熟睡できず、授業中も居眠りし、ボーッとしていた子どもが、開始して次のシーズンには集中して勉強できるようになったのが嬉しいと話す。

 舌下免疫療法は適応年齢以上であれば、健康保険で受けられる。花粉の飛散が落ち着いてからのスタートとなる。(ライター・羽根田真智)

※AERA 2023年3月27日号より抜粋